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» 2010年11月03日 08時04分 UPDATE

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:ランチェスター戦略と不測の脅威への対応 (1/2)

ランチェスター戦略は、需要が低迷し、多数の企業が顧客を奪い合うシェア競争を繰り広げるマーケットで、「劣勢にある商品や企業が、大勝を狙わず、小さな勝利を積み重ねて優勢に転じる弱者の戦略のフレームワークを提供する」競争戦略論です。

[福田秀人,ITmedia]

ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。


ランチェスター戦略とは

 ランチェスター戦略は、需要が低迷し、多数の企業が顧客を奪い合うシェア競争を繰り広げるマーケットで、「劣勢にある商品(サービスを含む)や企業が、大勝を狙わず、小さな勝利を積み重ねて優勢に転じる弱者の戦略のフレームワークを提供する」競争戦略論です。

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 戦場で、弱者が強者に勝つ条件と限界を導き出すランチェスター法則を使って開発され、1972年に、マーケティングコンサルタント田岡信夫氏により提唱された古い競争戦略論です。しかも、今日主流の、独創的な商品やビジネスモデルを開発し、競争を回避して大もうけを追求するイノベーション論と正反対のシェア競争を戦うための理論です。

 しかし、ドトールコーヒーの鳥羽博道氏、イー・モバイルの千本倖生氏、HISの澤田秀雄氏などが用いており、また、つい先日、『プレジデント』10月4日号で、ソフトバンクの孫正義氏が、ランチェスター戦略をグループ戦略の核に据えていることを明かしました。以下、それが前提とする状況と対策のさわりを簡単に紹介しましょう。

1. 絶対的に有利な立場にあるのは、シェア・トップの商品だけである。大きなマーケットは大競合地帯になっており、ここでトップになるのは容易ではない。マーケットでも、地域でも、製品でも、小さくてもよいから、強いナンバーワンをひとつでもつくっていく(=ニッチ戦略)

2.最初から、大量宣伝などを用いる強者の戦略をとって成功した例はほとんどない。弱者は訪問販売など弱者の戦略をとり、強者の戦略をとらない  

3.独創的な新商品の成功確率は数%。しかも、ヒットすれば、多数の企業による後発参入競争が生じ、それを振り切る戦略と力がなければ破滅する。イノベーションを前提とした開発努力も必要だが、短期的には、後発型でよいから、差別化戦略の内容とコンセプトをしっかりとたてて、勝てる見込みのある市場に参入する

4.シェア・トップでもシェアが26%を超さなければイニシャチブも発揮できない。40%を超せば独走態勢に入り、収益力も安定性も大きくなる(=競争優位の数値条件)

 下記の市場占拠率の目標数値モデルに従って自らの相対的な力を認識し、ステップ・バイ・ステップで、相対的に弱体な企業、商品の顧客を奪取して、シェア40%以上を追求する。

(1) 上限目標値 74%:絶対的な独走状態

(2)安定目標値 42%:安定的な強者の位置。独走態勢に入る(→概算40%)

(3)下限目標値 26%:弱者と強者の境目。トップになることもあるが不安定

(4)上位目標値 19%:弱者のなかの相対的強者。伸びるか、落ちるか不安定

(5)影響目標値 11%:存在がマーケット動向に影響を与え、注目される

(6)存在目標値 7%:存在が競合社として認められる

(7)拠点目標値 3%:存在自体が無視されるが、なんとか存在できる

 なお、ランチェスター戦略は、もともと、大企業や中堅企業のための競争戦略論として開発され、提唱当時、松下幸之助氏がいち早く導入し、多数の企業に普及したものです。そこでの弱者とは、シェア2位以下の事業や商品であり、大企業とて、数多くもっています。

 ところが、中小・零細企業が大企業に勝つための戦略論であるかのような誤解や歪曲が目立ち、また、近年、ランチェスター戦略が改めて注目され、東洋経済新報社よりその執筆提案をいただきました。そこで、『ランチェスター思考:競争戦略の基礎』2008年と『リーダーになる人の「ランチェスター戦略」入門』2009年を出版した次第です。雑誌では、『Think!2010年夏号』、『プレジデント2010年10月8日発行号』で要旨を論じました。

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