円高でも負けない企業に伴大作「フクロウの眼差し」(2/3 ページ)

» 2010年11月16日 17時58分 公開
[伴大作,ITmedia]

次を読む

 米国が金融帝国として、生き残っているのは疑いない事実だ。しかし、それは世界中の金持ちや金融機関が自らの資金の運用の場として米国を選んでいるからだ。米国のファンドに資金を委託していて損害が続くようなら、彼らは容赦なく資金を引き上げるだろう。そうなれば、ドルは一挙に暴落する。今回の円高はこの構図と考えるのが自然だ。

 しかし、日本円は当面の逃避先でしかなく、やがて、彼らは高い利回りを目指し、乗り換える。それが資源であり、食料だ。既に、鉱物、食料資源は高騰を始めている。この先、さらに上昇するかもしれない。

 資金の逃避先から投資先への動きを考えると、世界経済の構造変化を考慮する必要がある。世界経済の中心が欧米だったのは20世紀以前の話だ。人口12億を擁する「中国」、それに追いつこうとしている「インド」、急速に地域としての纏まりを見せつつある東南アジア諸国、ブラジル、ロシアなどのBRICs諸国の経済発展は目覚しい。

 彼らに共通している特徴は人口の多さとそれに伴う国内市場の大きさだ。確かに経済基盤は欧米先進国と比べると脆弱ではあるが、今後の成長の余地は先進国と比較にならない程大きい。先進国と開発途上国とを乗せた天秤は次第に先進国の方に傾いている。

勝ち抜けていく企業

 伝統的な産業ではすべてといっていいほど、M&Aが世界的に進行している。鉄鉱石やボーキサイト、石炭などの鉱業から、製鉄、薬品、飛行機や自動車等輸送用機械、通信、インフラ、薬品や製薬、果ては金融まで、すべての産業に及んでいると言える。

 日本の企業はこの世界的な流れに明らかに取り残されている。その結果、国内市場にばかり過度に頼るようになっている。この状態は「鎖国」あるいは「ガラパゴス」状態といえる。

 もちろん、世界の潮流に取り残されないように海外の企業を積極的に買収している企業がないわけではない。世界中に知られるブランド、ToyotaやHonda、Sonyに対し、Westinghouseを買収した東芝は原子力開発で世界のイニシアティブを確保した。ただし、東芝は数少ない例外にすぎない。決して主流ではない。

 なぜ日本の企業は海外の大手企業のように買収により規模の利益を追求しようとしないのだろう。それには、日本企業独特の理屈が背景にある。自社開発を重視するとか、伝統的な企業風土、文化を守りたいとがおおかたの理由だ。つまり、「持ちつ持たれつ」の馴れ合い経済から脱却する気がないのだ。そのような企業が、厳しい世界的な構造変化を乗り切れるのだろうか。生き残りの鍵は前記した開発途上国での存在感が重要なのは誰でも理解できる話のはずなのだが。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆