小6女児自殺事件に見る“顧客が求める満足感”でなく“わが社にできること”生き残れない経営(3/3 ページ)

» 2010年12月14日 09時39分 公開
[増岡直二朗,ITmedia]
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 知人には、軽い後遺症が残っている。SN病院でのこの種の例は、いくつも経験している。病院の体質なのだろう。

 次は、好例である。現在通院しているKセンターK病院は、医師のインフォームドコンセントが素晴らしく、看護師や事務員の対応も良い。筆者の病状の関係で他の診療科に廻されることがあるが、どの医師も優れている。タクシーの運転手も、「あの病院は、先生が親切で評判がいいですよ」と言う。センター長や医事長に尋ねてみたが、特別の教育などしていないと言う。長年の間に各人の努力が積み重なり、病院の体質として定着したのだろう。たまたま先日は、患者対象の「よりよい病院づくり」のアンケート調査をしていた。

 公的サービス機関は、「貢献と成果のためではなく、そこにいる者のためにサービスしているとの不満がある。マネジメントの間違いの最たるものというべきである。」(P.F.ドラッカー 上掲書)。公的サービス機関が目の前の取り繕いに執心することに対する忠告である。

 食事処の例だ。ごく最近連れと2人で御茶ノ水へ行ったが昼食時になり、しかし用件が迫っていて時間がないので、駅近くの早くできそうな食事処T店に入った。一番早くできる昼食を注文すると、「マグロ丼」が出た。ところが、すべてのマグロ全体にものすごい固い筋があって食べられない。筋が歯に強烈に食い込み、中々取り除けない。2、3口丸呑みしたが、食べることを諦めた。

 連れは、マグロをしごいて食べていたが、これも早々に諦めた。580円と安いので仕方がないと思ったが、こんな安かろう悪かろうは初めてだ。チェーン店のようだが、もう2度と入る気はしない。後日、試しにT店に近接するS店に入った。S店は小奇麗な大型のT店に比べ、狭く古い店だ。「お任せ海鮮丼」\500を注文してみた。数種類の刺身が入った丼で、美味だ。店長と話ができた。店長曰く「ウチは、お客様に満足頂けることを常に考えています。安かろう悪かろうは、間違ってもやりません」。S店店長の言葉には重みがあり、「顧客創造」の強い信念が覗える。T店は「我々は何を売りたいか」を考え、S店は「顧客は何を買いたいか」(P.F.ドラッカー 上掲書)を考えている。

「顧客こそが企業の基盤である。顧客こそが企業を存続させる。顧客こそが雇用を生み出す。その顧客の欲求とニーズに応えさせるために、社会は富を生み出す資源を企業に負託する。」(P.F.ドラッカー 上掲書)それは、公的サービス機関についても同じである。

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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