3K、7K、24K「IT人材不評」の犯人はだれ?〜その2生き残れない経営(1/3 ページ)

ITに携わる人々は状況が刻々変化しているのに、相変わらず昔のあり方を引きずって、形に捉われている。これでは、IT人材を救えない。

» 2011年02月03日 08時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

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 ITについて、世の経営者の多くは投資の時だけ多額なので関心を持つが、後はIT運用が業績に直接関係ない(と思い込んでいる)ことや、ITが理解しにくいことから専門家任せ。一方、ITに携わる人々はITを取り巻く状況が刻々変化しているのに、相変わらず昔のあり方を引きずって、形に捉われ、特別意識を持ち、システム開発に固執し、結果ライン業務と意思疎通を欠き、業務知識に疎く、改革意識に不足する。これでは、IT人材を救えない。

 IT人材が、最近のアンケート調査結果に反して、最近では根拠の薄い3Kで根強く嫌われ、情報系大学卒業者の半数以上が情報系企業への就職を避けるのは、企業の姿勢や経営方針とIT人材本人自身に原因があることを、前回諸統計を根拠に検討した。

 今回は、不人気のIT人材を誰が、どう救えばいいのかを考える。 

 ITを取り巻く状況を分析し、その中で必要とされるIT技術、そして人材、さらに人材の確保や育成にいかに取り組むべきか、そういう検討の過程でIT人材の在り方を問う。

 IT人材に与える影響が大きく、特徴的な流れとして、3つある。(1)市場の先行き不透明感、(2) クラウドコンピューティング時代へ、(3)オフショア(アウトソーシング)の割合増大へ、だ。これらについて、IT技術の傾向・必要とされる人材などを考えよう。

(1)日本経済の閉塞感から市場の先行きに不透明感が強まる中、ユーザー企業では競争力強化にIT活用を重要視し、情報システムのコスト意識を高め、システムの新しく賢い使い方に腐心するようになる。そのため、ユーザー企業では高い技術力と業務プロセス改革が必要となり、テクニカルスペシャリストを求める。IT企業もこれに応えるため、高度な技術力を持ったITスペシャリスト、映像・RFIDなどの活用技術が求められる。

(2)クラウドコンピューティングの動向として、SaaS 利用企業は13%、小企業ほど利用している。PaaS、IaaS 利用は先進企業のみだが、30%の企業が今後利用したいとしている(情報処理推進機構「IT人材白書2010」、以下「人材白書」と省略)。

 今後は、サービスインまでの時間が短く、コストも大幅減なので、クラウドコンピューティングの利用は増大が見込まれる。しかし、従来型の独自開発システムも残り、企業内に色々な形態のシステムが混在し、多様化するので、それぞれのシステムの連携、全体形成が必要で、そしてそれぞれをサービスとして認識することが求められる。

 その中で、Webプロモーション、センシング技術の応用など新しいサービスが考えられ、ユーザーへの提供は開発から企画・運用へと移行する。そして、仮想化技術・SOA(Service-Oriented Architecture)など高度な専門性やアーキテクト技術が必要となる。

 ユーザー企業IT部門のミッションは、情報システムを作るものから使うものへ、システム構築から経営効率化・価値創造など業務改革という経営企画的業務へと変化する。

(3)オフショア開発取引額は、増えている。オフショアの取引総額は、2006年度715億円、2007年度968億円(前年34%増)、2008年度1,011億円(前年比6%増、市場全体に占める比率は5.6%)、国別の上位3位は、中国565億円(構成比56%)、インド208億円(構成比21%)、ベトナム39億円(構成比4%)である。オフショアの目的は、単にコスト削減や人材確保だけでなく、ビジネスグローバル化対応の要素も出てきた。

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