やるべきことを100分の1にする――「イシューからはじめよ」経営のヒントになる1冊

あなたが問題だと思っている多くの事柄は、果たして本当に解くべき“真の問題”といえるのだろうか。

» 2011年02月11日 09時00分 公開
[ITmedia]

 著者の安宅和人氏は脳神経科学者、マッキンゼーの戦略コンサルタント、そして現在ではヤフー株式会社のCOO(最高執行責任者)室室長という、複合的キャリアの持ち主。研究畑とビジネス畑を行き来しながら、「本当に価値のある仕事をするためには何が必要か」というテーマについて長年考えていた。氏が行き着いた結論は、「本当に解くべき問題を見極め、それに注力する」というもの。この「今、本当に解くべき問題」がすなわち「イシュー」であり、本書ではこの見極め方がじっくりと解説される。

『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』 著者:安宅和人、定価:1890円(税込)、体裁:248ページ、発行:2010年11月、英治出版 『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』 著者:安宅和人、定価:1890円(税込)、体裁:248ページ、発行:2010年11月、英治出版

 「ちまたに『問題解決』や『思考法』をテーマとした本は溢れている。しかし、多くがツールやテクニックの紹介で、本当に価値あるアウトプットを生み出すという視点で書かれたものは少ないように感じる。意味のあるアウトプットを一定期間内に生み出す必要のある人にとって、本当に考えなければならないことは何か。この本はそのことに絞って紹介したい」(本文より)

 与えられた問題をいくら効率的にこなしていても、それが「本当に取り組むべき問題」でない限り、真の変化にはつながらない。仕事においては「とにかく量をこなして成長しろ」というアプローチがとられがちだが、著者はこれを「疲弊」や「燃え尽き」につながる「犬の道」として戒めている。「成長のために努力は必要だが、それが正しい努力なのかを見極めようとする姿勢を持つことが重要だ」というわけだ。

 著者が定義する優れたイシューとは、「本質的な選択肢」「深い仮説がある」「答えを出せる」という3つの条件を満たすもの。自分が取り組まなければと思っている問題を100とすれば、この3つの条件を満たす課題はそのうち1つ程度しかないと説く。この背景には、働く時間の長さがそのまま仕事の成果に結びついていた時代は終わり、最初に取り組む問題を精査してそれに注力するための時間を確保しなければ、個人も会社も生き残れない時代になっているという認識がある。

 本書は、肝となる「イシューの見極め」からはじまり、「仮説の立案→実際の分析→実際の論文やプレゼン資料の作成」という実務の流れに沿って、思考法と手順が詳細に説明される。「問題解決」「思考法」の本と言うと難解なイメージもあるが、平易で歯切れよい文章はこうした本を読み慣れていない読者でも入りやすそうだ。

 研究者や論文執筆を控える学生、経営・企画、リサーチ、コンサルティングといった調査と発表を必要とする方々にそのまま役立つ内容であり、それ以外の方も自分の仕事のやり方を見直すきっかけとなりそうな1冊だ。


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