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» 2011年03月22日 07時00分 UPDATE

生き残れない経営:投稿カンニングやメールなどに関する皮相的な識者意見に絶望する (1/2)

多くの識者やジャーナリズムは「不正再発防止」、あるいは「情報教育の問題」として捉えている。果たしてそんな皮相的な捉え方で、問題は解決するのだろうか。

[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 朝日新聞の1月23日付け記事「仕事メールで好印象」には、考えさせられることがある。確かにこの記事の目的は、仕事メールの実務的な問題やポイントを取り上げているのだろうが、それにしても今や頻繁に使われるメールをテーマに議論をするせっかくの機会なのだから、メールの根本的問題に一言でも二言でも触れて読者が考えるきっかけを与えて欲しいものだ。内容のほとんどが、あまりにも皮相的すぎる。

 それはITというテーマから、おりしも「ヤフー知恵袋」に入試問題を投稿してカンニングした問題について、多くの識者の意見が、問題の根源に迫るものがなく皮相的であることにも似る。まず、この問題から取り上げてみよう。

 本事件を、多くの識者やジャーナリズムは「不正再発防止」、あるいは「情報教育の問題」として捉えている。果たしてそんな皮相的な捉え方で、問題は解決するのだろうか。

 「投稿カンニング」事件について、3月4日付け読売新聞社説は、「大事なのは、今回の事件を教訓にして、実効性のある再発防止策を講じていくことだ。」として、試験中にケイタイを預かったり、電源を切ったケイタイを机上に置かせたり、妨害電波を奨励したりすべきと、ただ再発防止策を主張しているにとどまっている。さらに、同日付け毎日新聞社説は、「学校教育の中で子供たちに電子機器やネットの不正利用、情報の悪用などを強く退ける心をはぐくむことが肝要」と。あるいは、原清治仏教大教授は「学校教育の中で、これまでより一歩踏み込んだネットのモラル教育が必要だ。」(日本経済新聞2011.3.4.)と、ジャーナリズム・識者こぞって情報機器の使い方の教育に焦点を絞った主張をしている。

 一方、「社会全体で責めるほどの罪ではない。しっかり反省させ、情状酌量すべきだろう」(井上敏明六甲カウンセリング研究所長、朝日新聞2011.3.4.)と、当事者の処罰だけに矮小化した議論もある。また世論の反応の1つの現れとして、3月4日までに京大に寄せられた200件近い電話のうち約90%が、「監視が甘かった」「逮捕はやりすぎ」「予備校生がかわいそう」という感情的な感想だという(毎日新聞2011.3.4.)。現象だけを捉えたコメントや感情論が大勢を占める。

 中にごく少数だが、「入試は、“公平で客観的”だと思われている点数だけを基準にして、人を見ない。」「日本の受験文化が行き詰まっている。子供がどんどん減っている時代に、点数で線を引く入学試験を続けなきゃならないのか。考え直す時期じゃないか。」(養老孟司東大名誉教授、朝日新聞2011.3.4.)という、大局を見た議論があるのは救われる気がする。

 「投稿カンニング」事件は、皮相的見方ではなく、根源的な捉え方をしないと問題は解決しない。まず1つには、モラルの欠如に対する教育の問題である。不正や人に迷惑を掛ける考え方や行為は、どんな場合でも絶対に認められないのだという考え方が、幼少の頃から親や家庭や地域社会から陰に陽に教育され、刷り込まれていて、あらゆる場面で反射神経として現れるものになっていなければならない。それが今の社会で欠けていることを認識し、そこから親・家庭・地域・学校の教育が構築され直されなければならない。

 2つ目には、従来から長い間行われて来て、いまだに改善の兆しさえ見えない、旧態依然とした暗記能力中心のペーパーテストによる入学試験選別方法の矛盾である。もうそろそろ、論文形式・ディベイティング形式などのような方法に重点を置いて、人間の総合力や可能性を見出そうとするテストに変えていくべきだ。

 今回の事件は、以上2つの問題の解決に取り掛かるきっかけにすべき絶好の機会なのだ。誠に残念ながら、世の大勢としてそれをみすみす見逃して、小手先の議論に終始している。

 3つ目に、一般に取り沙汰されている情報教育の問題がやっと出てくると考えるべきだ。

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