日本のブルーオーシャンはどこにある――早稲田大学、池上重輔准教授(2/2 ページ)

» 2011年04月05日 07時00分 公開
[大西高弘,ITmedia]
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10年以上優位性を保つために

 Wiiはすべて安価な技術で作られたものではない。利用する技術のメリハリがきいているのだと池上氏はいう。

 「Wiiのテニスやゴルフのゲームをするときに使うスティックに仕込まれている3軸加速度センサーなどは、開発当時まだ完成された技術ではなかった。そうした技術にはコストを掛けるかわりに削れるものを徹底的に削って製品開発を行ったのです」

 Wiiの楽しいところは、自分が動かした腕や手の感触を非常にリアルに画面上で動きとして捉えることができるところだ。このバリューは買い手にとって驚きであり、感動を呼ぶものであり、ゲームというものの概念を変えてしまうものだった。

 家庭用ゲーム機はゲームセンターに据え置かれて使われていたいわゆるアーケードゲーム機に近づくという方向性で進化を遂げてきた。家庭のゲーム機で実際の映像と間違えるほど精細なカーレースを楽しめるというのは、その進化の道筋を踏襲するものだ。しかしそのためにゲーム機の価格は高騰してしまった。まさに従来型の高付加価値戦略である。それにひきかえ、Wiiの戦略は市場の現実、買い手の本音を上手にすくい上げたものだ。任天堂はWiiによって新しい市場を創造したのだといえるだろう。

 では、任天堂と同じようなことが他の企業でできるだろうか。

 「日本にもブルーオーシャン戦略で成功した企業はほかにもたくさんあります。優れたブルーオーシャン戦略は安易な模倣者の追随を許しません。10年以上優位性を保つことができるのです。企業はレッドオーシャンで激しい競争の中に身を置いていても、一方でブルーオーシャンの創造に力を注ぐ努力が必要です」

 確かにWiiの模倣者は今のところ出てきていない。今後はゲーム機市場の様相は変化していくだろうが、任天堂がWiiで築いた優位性はそう簡単には崩れないだろう。ブルーオーシャン戦略は製造業だけでなく、サービス業にも応用できると池上氏は話す。市場戦略の転換期を迎えている日本の企業にとって大きな力となるに違いない。

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