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ビジネスプロセスの標準化でグローバル競争を勝ち抜く基盤を

絶えず事業変革に取り組み、市場環境の変化に対応してきたIBMは、現在、その集大成とも言えるシステムのグローバル統合プロジェクトに取り組んでいる最中だ。その狙いは、ビジネスプロセスとそれを支えるITの標準化による情報の可視化を通じ、予測型経営をはじめとする市場変化に機敏に対応可能な仕組みの実現にある。そのために、同社ではさまざまなワークショップを開催することで社員に意識改革を促し、あらゆるビジネス部門を巻き込んで理想とすべきビジネスプロセスの見極めに力を入れてきた。その成果が、いよいよ現実のものになりつつある。



グローバル競争を勝ち抜くことができる企業の「条件」

 日本企業がさらなる成長を遂げる上で、グローバルでの事業展開はもはや欠くことができない。国内市場の成熟により、高度経済成長時代のようなかつての成長が見込めないことからも、そのことは明らかだ。

 だが、グローバル展開を推し進めるにあたっては課題も多い。ITの飛躍的な発展により、いわゆる「フラット化」が着実に進んでいることもその1つ。これはすなわち、グローバル展開に乗り出しやすくなる一方で、グローバルでの競争がより激化しつつあることを意味する。一方で、競争に勝ち抜くために、各国ごとに日々、変化を続ける市場ニーズへの迅速な対応も不可欠となっている。

 こうした中、IBMは世界に展開する拠点も全体で単一の会社と見なし、その経営資源を統合・最適化することで迅速な意思決定を可能にした企業を「Globally Integrated Enterprise(GIE)」と定義。自身も真のGIEを目指し、グローバル統合プロジェクトを進めている最中だ。IBMで同プロジェクトの旗振り役を務めるレオン・ボーデン氏は、その狙いを「真のグローバル統合企業に自己変革を遂げるため」と打ち明ける。

 では、果たしてIBMはどのようにGIEへと進化を遂げようというのか。その手法を端的に説明すれば、情報システムの標準化と統合を介して、国ごとに異なっていたビジネスプロセスを一本化するとともに、社員の意識改革を促すことで業務の標準化に対する重要性を認識させるというものだ。

ITの進化によりビジネスプロセスの標準化が可能に

 過去、企業は各国に現地法人を設立し、国内と同様の手法でビジネスを展開することでグローバル化を推し進めてきた。その後、現地の顧客との密な関係を築き、パートナーとの協業を円滑に行うべく、国や部門ごとに業務プロセスは現地化されてきた。その結果、情報システムにも手が加えられ、今では同じ企業でありながら国や地域ごとに異なる情報システムを稼働させているのが実情だ。IBMでも同様に、かつては国や事業部ごとにIT予算があり、世界170カ国に展開する個々の拠点に最適化されたシステムをいくつも抱えていた。

 だが、その弊害として各部門のビジネスルールが異なり、そのことに起因する問い合わせが顧客から寄せられるようになったのだとボーデン氏。

レオン・ボーデン氏 レオン・ボーデン氏

 「われわれが扱う商品はソフトウェアからハードウェア、サービスまで多岐にわたる。ただし、従来は製品/事業部(ブランド)、地域ごとに異なるルールに則り活動を展開しており、請求書や契約形態の違いに戸惑う顧客も少なくなかった。そこで、われわれのビジネスルールを抜本的に見直し、統一することが、顧客との良好な関係を維持するために不可欠だと判断した」(ボーデン氏)

 もっとも、情報システムの標準化と統合は決して目新しいものではない。複雑化したシステムを統一すれば、運用コストが削減され、各国の情報を容易に入手することが可能となる。その結果、さまざまな情報が可視化され、迅速な意思決定や事業展開も実現できる。そのメリットを享受するため、先進的な企業を中心に、これまでもITの標準化と統合が進められてきた。ただし、その実現にあたってはテクノロジー上の制約という高い「壁」も存在した。事実、IBMが世界20カ国以上にデータセンターを分散配置してきたのも、ネットワークの帯域やサーバの処理速度などの制約があったからだ。

 しかし、技術革新の結果、もはやその壁も崩れつつある。

 「ITの飛躍的な発展により、国や事業部門を横断する形で企業全体をサポートする単一の仕組みを実現することが、もはや可能な段階になっているのだ」(ボーデン氏)

 IBMは絶えず事業変革に取り組んできた。ボーデン氏が取り組むシステムのグローバル統合プロジェクトはその集大成に位置づけられる。2011年1月には中国でパイロット版をリリース。現在、次なるリリース国を含め、グローバル展開に向けた準備を着々と進めている最中だ。

意識改革を通じてプロセス一本化の妥協点を探る

 IBMはビジネスプロセスを統一するにあたって、SAP社の製品を中核に据える手法を採用した。具体的には、「営業機会の発生から発注まで」「発注から入金まで」「財務会計・管理会計」という3つの領域で、IBMのビジネスルールをSAP製品にテンプレート化して実装し、グローバルでの利用環境を整えるというもの。また、SOA(Service Oriented Architecture)のアプローチで、既存システムとSAP製品との統合にも取り組んでいる。

 ただし、その道のりは決して平坦なものではなかったという。既存の業務フローは長年にわたって各地域や各部門で磨き上げられてきたことから完成度が非常に高く、新たなビジネスルールをいわば押し付けた場合には、社員から理解を得ることが難しかったからだ。

 この課題を克服すべく、IBMではさまざまなワークショップを世界各国で開催し、あらゆるビジネスユニットのリーダーやエグゼクティブに対して意識変革を促すとともに、ビジネスプロセスの差異について妥協点を探った。

 「全体最適の観点からシステムを1つに纏め上げる過程では、国や部門で真っ向から意見が衝突することも少なからずあった。そうした社内の溝をいかに埋めるのか。これが統合作業を遂行するうえでの最大の難関であった」(ボーデン氏)

 もちろん、各国において状況は異なるために譲れない一線もあり、複数のプロセスを並行して検討するケースもあったという。だが、できる限り例外を排するために、IBMはプロジェクトの推進体制にも工夫を凝らした。各国に配置したプロジェクト・マネジメント・オフィスに加え、ビジネスプロセスごとに定められた責任者(プロセスオーナー)、さらにボーデン氏が率いるチェンジ・コントロール・ボードの承認を得なければ、一切の例外を認めない方針を掲げたのもその1つだ。

 「チェンジ・コントロール・ボードではグローバル・ビジネス・サービス事業のコンサルティング部門のリーダーを交え、プロセス変更の妥当性を検証している。このような厳格な承認プロセスを採用することで、ビジネスプロセスの95%はグローバル標準化された。認められた例外は、各国の法令に準拠するためなど、極めて限定されたものに限られる」(ボーデン氏)

 上級役員が指命されるプロセスオーナーにより、国境の垣根を越え、横串を通すかたちでシステムを管理する体制を敷いたのは、製品ブランド、地域ごとにシステムが個別最適化されてきたかつての状況を繰り返さないためだ。今ではグローバルでの有効性をプロセスオーナーが認めなければIT予算が承認されない仕組みになっており、IT予算における運用コストの比率を下げ、グローバル統合などへ積極的に投資することで事業変革を加速させている。また、グローバルで標準化されたシステム以外は既存システムであっても予算が付かず、結果として独自システムは急速に統廃合されつつあるのだという。

「2+2」でシステムリスクを極限まで低減

 システムを1つに統合すると、そこに障害が発生した場合のビジネス上の影響も飛躍的に大きくならざるを得ない。この点を踏まえ、IBMはシステムの可用性を高めるための仕組みも整備してきた。具体的には、本番サイトと同様のバックアップサイトを用意することでシステムを二重化し、さらに遠隔地のサイトにそれらと同じシステム環境を準備しておくというものだ。「2+2」と呼ばれるこの方法によって、万一、システム障害が発生した場合でもバックアップサイトで、バックアップサイトが利用不能なほど大規模な災害や事故に見舞われた場合でも遠隔地のサイトで、システムは稼働を続けることができる。これほど入念なバックアップ体制が敷かれているのも、IBMの財務部門がシステムダウンの影響を分析した結果、その必要性が認識されているからこそである。

 「通常はシステムが復旧すると、バックアップサイトから本番サイトにシステムを切り替えるが、われわれの2+2では単なるバックアップとは異なる考えに基づいており、次に障害が発生するまでシステムの切り替えを行わない。こうした冗長性は、システムのアップグレード時にも円滑に作業が進められ、有効だ」(ボーデン氏)

自らの経験を業務変革支援サービスに

 グローバル統合の重要性が高まっている理由として、ボーデン氏は企業活動のグローバル化に加え、活発化する企業間のM&Aを挙げる。その対応にあたり注意すべきポイントは、「プロセスの標準化だ。加えて、買収した企業の状況を把握し、先ず財務報告などの情報を、できる限り早期に自社のレポートに落とし込む作業も不可欠だ」と説明する。

 こうした取り組みを通じて得られた知見を生かし、GIEの実現を目指す企業を支援するサービスが「IBM Global One−A Unified Global Instance of SAP」だ。同サービスはグローバル展開を目指す企業の戦略策定のためのコンサルティングからシステム構築、運用までを一貫して提供するものである。

 とはいえ、GIEの実現は、既に述べたように企業文化の変革も求められ、一筋縄ではいかない。そこで同社は、現状分析からビジネスケース策定、実装、運用までの一連のプロセスをサポートする「チェンジ・マネジメント・プログラム」を用意。同プログラムはIBMの過去の経験やノウハウの集積であり、その実践を通じて、「人」「プロセス」「テクノロジー」を1つのルールで標準化し、統合することが短期間で可能になるわけだ。

 「IBMは標準化のための投資を何度も行い、失敗の経験も積み重ねてきた。IBM Global OneはIBM自身を実験台とすることで生み出されたサービスと言える。ビジネスプロセスの標準化に対する日本企業の関心は高く、既に何件もの問い合わせが寄せられているほどだ」(ボーデン氏)

 ビジネス変革を遂行するには強力なリーダーシップを欠くことができない。そのため、トップダウンで意思決定を下す欧米などの企業に比べ、日本企業はその遂行は難しいと考えられがちだ。だが、IBM Global Oneは、事業や地域を横断して社員の声を拾い上げ、最適なビジネスプロセスを作り上げるなど、日本型の意思決定に類似する点も少なくない。日本発のグローバル統合企業の登場も、そう遠い話ではあるまい。


提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2011年5月31日

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