世界4000人のCIO顧問として――ガートナージャパン 日高社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(1/2 ページ)

CIOの経営に果たす役割が次第に重要になってきている。企業がさらに成長するためにITはどのように寄与できるのか。

» 2011年04月21日 07時00分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

 東日本大震災の被災者の方々とそのご家族には、心からお見舞いを申し上げます。頑張ってくださいという言葉も、頑張りましょうという言葉も、失礼にあたるような気がして使えません。わたしたちにできることを精一杯そして継続して行っていきます。復元でもなく復興でもなく、まったく新しい基盤と成長を創造するための一助になりたいと思います。


 CIO(最高情報責任者)の果たすべき役割に早くから注目し、IT業界のシンクタンクとして持続的な成長を果たしたガートナー。CIOという言葉の普及に尽力した企業ともいえます。1979年設立当時の顧客は、ほとんどがベンダー企業でしたが、ITとそれを率いるCIOが企業に増え、今では、顧客の7割がユーザー企業です。

 アメリカに遅れて10年といわれる日本でも、CIOのポジションは定着しつつあります。また、CIOがCEO(最高経営責任者)のポジションへのキャリアパスになることもしばしばです。日本でも東京海上日動、損保ジャパン、三菱商事、日興証券、ニチレイ、味の素など、各界を代表する会社で元CIOがCEOになっています。

 今回は、世界で、1万8000社の顧客を持ち、世界中で大企業におけるCIOの顧問的役割を果たしている、ガートナー ジャパン 代表の日高信彦さんに、日本の成長のためにITがどのように寄与できるのかをうかがいました。

ガートナージャパンの日高社長

CIOの役目とガートナーの役割

 日高さんは、CIOの役目を、テクノロジーを取り入れるのはもちろんだが、プロセス改革のリーダー、そしてインテリジェンスのオーナーであるといいます。つまり、会社全体のプロセス改革は、テクノロジーという道具の活用が必須だが、その実行者として、道具しか知らない人には務まらない。プロセス改革の担い手として、唯一、横串しをさせる人がCIOであること。そして、情報というインテリジェンスは、最適化されていないプロセス上では陳腐化してしまう。また情報を分析して経営に生かすためには、テクノロジーが欠かせない。これらをトータルでコントロールできるのはCIOで、その役割は次第に重要になってきているということです。

 ガートナーの実態とは何でしょう? ガートナーは、この業務改革とインテリジェンスのオーナーであるCIOのために、情報を集め、分析し、「Gartner EXP(エグゼクティブプログラム)」を提供し世界で3800名のCIOへ日々アドバイスを提供しています。また、ITプロフェッショナル向けの情報収集にあたるのは、約750人のアナリスト。半導体からアウトソーシングそしてクラウドまで幅広い分野で、顧客企業ともインタラクティブに会話をし、ベンダーだけでなくユーザー企業のベンチマークを収集し提供しています。

 さらにカスタマイズが必要な企業にはコンサルティングを提供していきます。これを行うのは約450人のコンサルタントです。彼らは、顧客のシステムの改善提案や、ベンダー評価やベンダーの提案書のレビューをします。こうして集まった情報を年間を通して、多くの人に伝えるためにいくつかのテーマを設けイベントを開催しています。これは世界中のCIOを始め多くのITとビジネスにかかわる人が集まるイベントになっています。

 日高さんに会うまでは、インターネットという巨大な情報メディアは、ガートナーの役割を減退させているのではと、勝手な想像をしていたのですが、事実はまったくその反対でした。あふれんばかりの情報のせいで、本筋を見分けるのが困難になっています。中立な立場で評価するガートナーのサービスへの需要は以前にもまして高まっています。また、グローバル化を迫られている日本企業に対して、世界85カ国に拠点を持つガートナーのアドバイスを求められることも増えています。

日本が苦手なITの最新トレンド

 グローバル化は、IT業界にも大きな波となって押し寄せ、日本のITの潮流も、いや応なしに世界の潮流に左右されるようになってきています。ガートナーでは、毎年、お客様を中心にCIOを対象としたサーベイを行っており、そのトレンドを探っていますが、その関心の移り変わりのスピードは毎年早くなっています。今年は、CIOにとってのテクノロジーの優先課題は、昨年10位だったクラウドが突然1位になりました。

 ビジネスに対する優先課題は、相変わらず、業務改善が多く、昨年は、コラボレーションやSNSへの関心が高まりました。また、日本とグローバルで活用度合いに差があるのが、BIツールです。これを活用できていないことが、生産性が低くなっている原因のひとつと指摘しています。これは、会社全体でどうやって利用していくかという戦略を持っていないと使いこなせません。日本の経営者には、合理性よりも、責任感を尊ぶ人が多く、そのような文化を持つ日本企業では広がりにくいツールとも言えます。

 しかし、グローバル化の中で、BIツールなしでは、共通化や標準化の検証が進まず、活用できない会社がマーケットから撤退している欧米と、相変わらず、責任感中心の日本では、生産性に差が出ているのが現状です。そんな日本企業に、日高さんは、仮説をたててやってみることを進めています。BIは仮説検証と分析を行うことに他ならないので、大上段にかまえず、まずは試してみることを勧めています。

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