手間を省くな、コストを省け海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/4 ページ)

» 2011年05月18日 07時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー

コスト削減──グーグルはどうしたのか?

 2009年、他のテクノロジー企業が財政的に苦しんでいる中、グーグルは収益を19%上昇させました。この急上昇の原因は何だったのでしょう? 売上収益の増加率が3%の中、グーグルは厳しいコスト削減策を講じることで収益19%増を達成したのです。

 例えば、グーグルは社員食堂の営業時間を短縮し、社員が社内で無料提供された食事を自宅へテイクアウトするのを禁止しました。また、ペットボトルの水やお茶の無料提供など、さまざまな社員特典も廃止しました。その結果、グーグルは資本的支出を80%削減することに成功しました。これにより、グーグルはコスト削減にまつわる次の2つの神話が誤りであることを効果的に証明したことになります。

2つの神話コスト削減の誤り

(1)コスト削減は経営危機に陥った時のみ行う

 これは間違いです。コスト削減は「永久に続く経営プロセス」です。多くの場合、危機的状況が過ぎ去ると、企業は「使い放題の道」へ戻ってしまいます。例えば、企業は概して、高騰市場での買収に多額のお金を支払い過ぎてしまいます。

 歴史上最大で明らかに最悪の銀行買収は、2007年7月に王立スコットランド銀行(RBS)がオランダのABNアムロ銀行に対して行った買収です。RBSは、競合相手であるバークレイ銀行2が見積もった額より90億ユーロ(124億ドル)も高い700億ユーロ(970億ドル)でABNアムロ銀行を買収したのです。賢い企業は、景気後退時期が来るまで買収は行いません。

(2)コスト削減は人員削減と同じである

 人員を減らすことは、コスト削減を行う最も効果的な方法とは言えません。人員削減による目に見えない損害には、従業員の離職の増加、士気の低下、努力の減退などが挙げられます。よって、人員削減は逆効果だと言えます。

 わずか10年という短いスパンの間に世界1のIT企業とも言えるグーグルのコスト削減の事実で注目すべきことは、コスト削減が結果的に利益を大幅にアップさせているところにあります。

 その大きな施策の2つについて書かれていますが、注目するべきところは、絶対に「人件費」の削減はしていないというところです。「雇用」を直接的に減らすのでなく、それにかかわる福利厚生という付加を減らす事で危機を乗り越えたことが分かります。

コストを削減する

 競争力を維持するためには、常にコストを削ぎ落す必要があります。企業のコスト、売上高、販売価格、収益は結び付いているため、損益計算書やバランスシートによく注意を払って下さい。そして、価格区分を明確にして下さい。 まず、固定費を考えましょう。固定費には、工場、設備、コンピュータ、デスク、電話の費用だけでなく、賃借料や保険料も含まれます。労働力は短期固定費として考えて下さい(長期として見る必要はありません)。固定費が少なければ少ないだけ、利益を上げるために売る製品の数も少なくなります。

 生産高によって変わる費用は変動費。電話代や電気代などは準変動費です。次に、損益分岐点(BEP)を考えましょう。BEPとは、利益を出すために売らなければならない製品の数です。BEPは、固定費を「売上単価−変動費単価」で割った数値です。変動費単価を低く抑えることが出来れば、BEPにすぐ到達することが可能になり、より早く利益を上げることが出来るようになります。

 投資収益率(ROI)は、企業のパフォーマンスとコスト削減努力の効率性を評価する最適な指標です。収益、費用、利益、損益を分析することで様々な比率を割り出し、異なる時期のコスト・パフォーマンスを比較することができます。また、予算に対するパフォーマンスを比較することもできます。コスト削減の効果的な方法には次のものが挙げられます。

コスト削減の効果的な方法

 ・作業能率を上げる──低コストでビジネスを維持する方法を探す

 ・製品の再設計──コストのより掛からない形で製品を開発する

 ・製品の標準化──製品の幅が広いと、それだけコストが掛かるので、幅を減らす

 ・規模の経済性の適用──原価基準を広げる。例えば、倉庫業は、取引する小売店の数が1000件より3000件の方がより安く運営することが出来る

 コストを下げる具体的な内容についてここでは記載していますが、業務の効率化を上げる事がそのままコスト削減につながる事のように思えます。つまり、企業運営をする上では、景気の変動や会社の業績の状態にかかわらず、利益を確保するひとつの方法としてコスト削減を意識することが大切なのでしょう。

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