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» 2011年06月08日 08時00分 UPDATE

テレワークは日本企業を強くする!:「節電目的でテレワークのシステムだけを導入してもBCPの効果は薄い」――田澤由利氏 (1/2)

新特集「テレワークは日本企業を強くする!」では、在宅勤務のあり方について企業や有識者の意見を伝えていく。第1回は、日本におけるテレワークの第一人者で、国のテレワーク施策にも提言している田澤由利氏だ。

[五味明子,ITmedia]

特集開始にあたって ― 3.11で加速したテレワークへの注目度

 1000年に1度の災害とも言われる3月11日の大震災は日本という国のかたちやあり方を大きく変えた。その余波は今もなお社会にさまざまな変化を与えている。

 日本経済を支える企業もまた、否応なしにこの変化の渦に巻き込まれている。どの企業も、これまでどこか遠くの世界の出来事だった「災害対策」の当事者となり、必然的に事業計画や人員配置、IT運用の大幅な変更や見直しに追われている。特に首都圏に拠点を置く企業は、震度7クラスの直下型地震がいつ起こってもおかしくないという想定の下、これまでにない真剣さでBCP(事業継続計画)に取り組んでいる。

 そうした中、リスク分散の延長線上から急速に注目され始めた勤務形態が「テレワーク(telework)」だ。単なる在宅勤務と異なり、従業員が自宅で仕事を行う際、VPN(Virtual Private Network)やクラウド環境を利用してオフィスとリアルタイムに接続し、オフィスとほぼ同じIT環境の下で業務を行う。仮にオフィスが被災し、従業員が出社できない状況になったとしても、ネットワーク回線が生きていれば日常業務をかなりの範囲でバックアップすることが可能だ。

 元々はワークライフバランスなどに象徴されるダイバーシティ(diversity:多様な働き方を支援する考え方)を実現するためにここ数年クローズアップされることが多かったのだが、震災後はBCPの一環として多くの企業が導入の検討を開始している。

 一方で、従業員の労務管理が難しいという理由でテレワークの導入に足踏みをする企業も多い。「勤怠は出社がベース」という考え方が一般的である以上、企業側にとまどいが生じるのも当然のことだろう。また、一部の社員を対象にテレワークを実施してみたが、上記のような理由もあって、利用するのは育児、介護のために在宅での仕事を希望する女性社員ばかりというケースも少なくない。

 本特集では、震災後、テレワークへの関心が強まっている現状を受け、このシステムをどう活用すれば日本企業が強い企業へと生まれ変われるのかを、さまざまな立場の方に話を伺いながら、テレワーク導入にあたってやるべきこと、やってはいけないことなどを検証していく。

 第1回は、国内におけるテレワーク推進の第一人者であるワイズスタッフテレワークマネジメントの田澤由利社長に話を伺った。

テレワークの先駆者として20年

 田澤氏は80年代からテレワークで仕事をしてきた“ベテランテレワーカー”である。1988年、夫の赴任先である北海道北見市に移住したことをきっかけに、“ネットオフィス”を実践するためワイズスタッフを設立した。業務はWebページの制作やメールマガジンの編集。2004年には奈良に2つ目のオフィスを開設し、現在は株式会社として100人を超すテレワークスタッフを抱えている。スタッフは全国各地に散らばっており、海外在住者も存在する。

テレワーク推進の第一人者として幅広い活動に携わる田澤由利氏 テレワーク推進の第一人者として幅広い活動に携わる田澤由利氏

 2009年にはもうひとつの株式会社であるテレワークマネジメントを設立、テレワーク導入のためのコンサルティングサービスを提供しながら、テレワークの推進に努めている。正真正銘の“テレワークエバンジェリスト”だ。

 何らかの事情を抱えているため、外に出て働きたくてもそれを諦めざるを得ない人は多い。決して専業主婦ばかりではなく、高齢者、障害者といった人々から、地方在住のため自分のスキルにあった仕事を探しにくいプロフェッショナルまで、その層はさまざまだ。そういった人々の力を活用した力強い社会、誰もが働ける社会を実現することをライフワークに、田澤氏はこれまで活動してきた。少子高齢化や人口減少が進む日本において、またリーマンショック以降、TCO削減に苦しむ企業が後を絶たない現状において、「テレワークは日本が生き残るための重要な施策」という信念を今も昔も変わらず持ち続けている。

 その田澤氏が心底驚くほど、昨今のテレワークへの関心は高い。「テレワークを始めてから20年が経ちますが、企業からの問い合わせやセミナーに参加される方の数などが激増しています。これまでとはまったく違う反響を感じています」と、テレワークがブレークポイントを迎えている感触を得ているという。

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