「クラウドでもモデルと価値は変わらない」とRed HatのホワイトハーストCEOオープンソース第2章(2/2 ページ)

» 2011年06月21日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 Linuxの場合、特に力のあるハードウェアベンダーがミッションクリティカルな用途に耐え得るよう改良を続けたり、Oracleがデータベースを使う上で必要な機能を追加するなど、ハードウェア/ソフトウェアを問わず、多くのベンダーが貢献し合うことで成長を遂げてきた。

 「オープンソースという開発モデルは、日本が得意とする製造業のカイゼン運動と共通性がある」とホワイトハースト氏。世界中の開発者が参加して、機能強化が図られ、バグも素早く修正される。

 しかし、こうしたオープンソースを企業が本番稼働のシステムに実装しようとすると難しさを伴う。改良が速すぎるからだ。オープンソースはバージョンアップでバグを修正する傾向があるが、これでは企業はなかなか使えない。バージョンアップではなく、古いカーネルでも既存のアプリケーションを長期間使い続けられるサポートが必要なのだ。

 「商用LinuxであるRed Hat Enterprise Linuxの本質的な役割は、Linuxの技術革新を安定化させることだ」とホワイトハースト氏は話す。オープンソースのLinuxを2、3年ごとにいったんフリーズさせ、それぞれ10年間はパッチを提供するなどしてサポートを継続する。新しいハードウェアに買い替えてもアプリケーションを書き換える必要はない。そもそもOSとはそういう役割を担っているはずだ。

 しかも、オープンソースのパワーを活用しているため、「サーバOSに占めるRed Hatのシェアは20%に達しているが、売り上げは3%に過ぎない」(ホワイトハースト氏)。このことは同社が顧客に提供している価値を如実に証明している。

VMwareとも上手く戦いたい

 オープンソースの強みは、次世代アーキテクチャーであるクラウドでも発揮されるはずだ。

 ホワイトハースト氏は、「クラウドは初めてユーザーが主導したコンピューティング技術だ。GoogleやAmazonが自らの課題を解決するために開発してきたもので、それもオープンソースのパワーがあったからこそだ」と話す。

 Red Hatでは数えきれないほどのオープンソースプロジェクトに関与している。ユーザーのニーズをつかみ、具体的な課題を解決したい企業が主導する技術革新を商用製品やサービスとして提供するためだ。5月初めに発表されたIaaSを構築するためのソフトウェア製品「CloudForms」や開発者向けのPaaS「OpenShift」もそうした成果として生まれた。

 「われわれのビジネスモデル、そして顧客に提供する価値は、クラウドでも変わらない。サーバ、ストレージ、ネットワークというインフラを抽象化し、柔軟な移行を可能とし、既存のアプリケーションを長期にわたって使い続けられるようにすることだ」とホワイトハースト氏は話す。

 「Red HatはSolarisに勝つことができた。クラウドではVMwareと競合しているが、オープンソースのパワーを生かして上手く戦いたい」(ホワイトハースト氏)

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