「節電でワーキングスタイルは変わる、この際新しい企業経営の構築を」その1生き残れない経営(2/2 ページ)

» 2011年07月25日 07時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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ワーキングスタイル変革の肝

 ところで、マルチワーキングスタイルを考える時に注意を要する点がいくつかある。

 (1)日本的経営の特徴といわれる、集団責任に意識が行って個人責任が不明確、あうんの呼吸で事が運び指揮命令系統が曖昧、一方で根回しがまかり通り、出る杭は打たれる……ということが温存されていては、マルチワーキングスタイルを妨害する。節電も省エネルギーも、ましてや新しい企業経営の構築もかなわない。

 部署ごと・個人ごとの業務分担・責任の明確化、ローカルな個人的つながりより組織優先、情報の共有化、曖昧模糊としたナアナア主義の排除など旧弊からの脱却は、企業がまさに存亡を賭けて、自己責任で個々に取組んで行くしかない。それは、経営者の責任そのものだ。

 (2)しかし一方で、日本的経営の優れた点、即ち上下横の心の通い合いを促進するコミュニケーション、相手の心の痛みを理解する、互いに困っていることに手を差し伸べる、などがなければ、テレワークなどのマルチワーキングスタイルは当事者の疎外感や孤立感、あるいは業務の流れの断絶などいろいろな影響を受けて崩壊する。

 日本的経営の優れた点を維持するのは経営者の責任だが、コンピュータ上の接触だけに頼らず、上下横と直接話し合う定期的機会を作ったり、食事会や飲み会を設けたり、その費用はある程度経費として認めるなど、具体的手を打たなければならない。それらは些事でバカバカしいことに聞こえるかもしれないが、従来の定型的ワーキングスタイルと違って、マルチワーキングスタイルを定着させるには絶対に欠かせない。

 (3)人事勤務評価について、従来の定型的なワーキングスタイルでは定性評価や勤務時間に基づいた評価で大きな問題はなかった。しかし、ワーキングスタイルが多岐にわたるとアウトプットを評価したり、定量評価を導入したりしないと公正を欠くし、従業員のモラールにも影響するし、そもそも評価する側も難儀するはずだ。

 (4)ITセキュリティは極めて重要になる。そのための社内教育や体制整備が必須だが、セキュリティ投資を決して惜しんではならない。

 以上のテーマについて、労働に関わる日本の積年の問題を解決するという視点からアプローチすると、また別のアイディアが出てくる。次回検討する。 

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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