混乱の予測が難しい理由の1つは通常混乱は小さな、一見重要でない出来事の連鎖によって生まれるからです。最初、問題は検知されない場合が多いのです。
例えば、1984年12月2日の夜、インドのボパールにあるユニオン・カーバイド社の工場で、500リットルの水が610番タンクに漏れ出てしまうアクシデントがありました。そのタンクには殺虫剤を作る為に使用していたイソシアン酸メチルが入っていました。ちょうどこの時、同社は次のような問題を抱えていました。
これらの不備の1つ1つは致命的なものではありませんが、ここに水漏れという問題が加わったことで化学反応が起こり、40トンものイソシアン酸メチルが街中に流出し、死者4,000人、負傷者50万人という大惨事が引き起こされました。このような一見重大ではない不備が、史上最悪の産業事故に繋がるとは誰も予想していませんでした。
まさか? と思うことが本当に最悪の結果をもたらすこともあるわけです。ここの事例はそれをまさに物語っていると言えるでしょう。
そうは言っても、迫りくる災難の警告サインは大抵の場合発せられています。しかし、そのサインに気が付く人がいなければ意味がありません。災難は次の8つの予測可能な段階を踏みながら進んでいきます。それを理解することで自社の脆弱性を現実的に測定することができます。
災難を生むステップ〜8つの警告サイン〜
【Step1 : 準備段階】災難が来ると知り、その準備をする
【Step2 : 破壊的な出来事】ハリケーン上陸、飛行機事故、爆弾の爆発などが起きる
【Step3 : 最初の対応】会社の安全部隊と責任者が最も急を要する問題に協力して対処する
【Step4 : 遅れて現れる影響】最初の破壊的出来事は多くの場合、ただの始まりでしかない。第2の影響が現れる
【Step5 : 最大の影響】最悪の事態。業績が悪化し、在庫が底をつき、顧客の機嫌を損ね、災難の影響が痛々しい程明らかになる
【Step6 : 回復の準備】新しい状況に対応する策を練る
【Step7 : 回復】回復を実施する。障害を乗り越え通常の操業状態に復旧させるには多大な労力が必要なため、これには膨大な時間がかかる
【Step8 : 長期的影響】顧客との関係を修復し、市場シェアを取り戻しブランドイメージを回復する
困難な出来事は問題と同時にチャンスも与えてくれます。企業を改革し、再活性化する中、新しいベンダーやサプライヤー、新しい製造手法やマーケティング・テクニック、さらには新しいテクノロジーを発見することができます。
災害の初動から事態の収束、そして復活までのステップを細かく記載しています。何か起こるとパニックになり、なし崩し的に収束し最悪企業そのものが消え行くこともあります。そうした事態を防ぐためにもここに書かれている8つのステップはしっかりと心得ておくべきことなのではないでしょうか?
著者紹介
ヨシ・シェフィは、マサチューセッツ工科大学のエンジニアリング・システム教授および、交通物流研究センターの主任を務めています。国際的知名度のあるサプライチェーン管理の専門家として、世界中のトップ企業と仕事をしてきました。
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授