ピンチに強くなる海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(4/4 ページ)

» 2011年10月12日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
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今に意識を集中させる

 ピンチの時に活躍するには、常に「準備が整っている状態」でいなければなりません。つまり、状況が欲する時は(まるで戦争に参加しているように)他の全てを排除して現在に集中しなければなりません。俳優は、今に集中する必要性をよく知っています。彼らは役の感情を一瞬で捉え、演技の中でその感情を表現しなければなりません。もし俳優がこの感覚を一日中持ち続けようとすれば、必要な時にその感覚を呼び覚ますことができなくなってしまうでしょう。

 また、もし現在以外のこと(観客のこと、失敗した時に仕事を失うことや感じる屈辱など)を考えていれば、行き詰まってしまいます。俳優、兵隊、トレーダーそしてアスリートはみんな、仕事をする時はその一瞬一瞬を生きているのです。そうするためには、彼らは集中し、自分を律し、適応しなければならないのです。

 今何をするべきか、今行うことに対して意識を集中し判断をしていく能力を磨かねばならないということです。それを鈍らせる原因の3つが下記に示されています。

 人は、次のような3つの基本的な理由からピンチの時に行き詰まります。

ピンチの時に行き詰まる3つの理由

 1、責任を逃れようとする

 もし自分の行動に責任が持てないのであれば、行き詰まります。起こるかもしれない失敗を認めることを怖がっていると、集中することも、自分を律することも、適応することも、現在に意識を集中させることもできなくなります。ピンチに強い人は自分で下す全ての決断とその結果に対し責任を持ち続けます。

 ほとんどの人が責任をなかなか取れない理由の1つに、耐えることに対する報いは、物事が済んだ後にしか得られないことが挙げられます。肝心な時に称賛してくれる人は誰もいません。しかし、ここでは行動を説明することが責任なのではありません。自分の行動に責任を持たなければならないのです。避けられない現実を受け入れる準備が整えられれば、ピンチの時でもより強く、よりリラックスし、より成功できるようになるのです。

 2、考え過ぎる

 2人の野球選手を比べることで、準備、明せきさそして目的がどのようにして成功と失敗の違いを生み出すのかが分かります。タンパベイ・レイズ(米メジャーリーグのプロ野球チーム)に所属するデイヴィッド・プライス投手は、練習でしてきた事をシンプルに実践しています。それは、野球のボールを投げることです。

 彼は公式戦で好成績を出し、プレーオフのピンチの時にも活躍しています。なぜでしょう? それは、自分のやることや心構えを一度も変えていないからです。ゲームの重要性が増しても、賞金のことは考えません。緊張してアドレナリンで体内を満たすことも、不安で体を固くしたり、動きを抑制したりすることもありません。プライスは学生時代、試合と同じスピードとペースで厳しい練習を課すことで有名なコーチの元で練習していました。そのコーチは教え子に実践で必要とされるやり方で練習させたため、教え子はプレッシャーの下でプレイすることに慣れて行きました。そうして自分のテクニックを信じることを学んだのです。

 その一方、A-Rod(エイ・ロッド)という愛称で知られたアレックス・ロドリゲスは、高校生の頃から野球のスーパースターでした。彼の素晴らしい成績と公式戦での活躍は語り草になっており、ベストプレイヤーとして広く評価されています。しかし、プレーオフになると毎年ロドリゲスは行き詰まってしまう時期がありました。ヒットの数は落ち込み、プレイは精彩を欠き、三振してしまうのです。プレイが悪ければ悪いだけ彼は考え込み、考えれば考えるだけ、プレイスタイルやバットの構え、食事などあらゆるものを良い結果を出すために変えようとしました。彼は、自分の生涯に渡るトレーニングやテクニックに反することで自分自身を徐々に弱らせていたのです。

 しかし、野球人生で最悪な時、ロドリゲスはリラックスし、どのようなものであれ自分の行動の結果を受け止めることがスポーツにとって重要なことであることを思い出しました。不安な気持ちを解き放つことができると同時にロドリゲスは考え過ぎることを止め、それによって成績も良くなって行きました。

 3、過信する

 過信は、考え過ぎのより大きくより破壊的な親戚のようなものです。自分の判断や手法を信じ過ぎてしまうと、ピンチの時にそのどちらかあるいは両方に不備があると分かった時、頭はマヒして動かなくなってしまうでしょう。

 過信とは、自分のやり方が最善だと確信しているため、状況に適応することすら考慮しないことを指します。戦略や問題解決への自分の取り組みを定期的に疑問視することで、ピンチの時に備えることが重要です。信頼できる外部の人にわざと反対してもらい、自分の手法に穴がないか確かめて下さい。間違っている可能性を認めることと、自信を持たないことは同じではありません。現実的でありながらも自信を持つことはできるのです。もし、自分の計画を厳しく分析しなければ、永遠に「戦いを戦う」ことができません。過去の出来事によって計画がどのように評価されたかに関係なく、ずっとその計画と戦うことになります。

 「責任逃れ」「考えすぎ」そして「過信」この3つが自分の判断を鈍らせる大敵として言及されています。どれもが自分の感情のなせる技であり、それを打ち消すことが必要であるということなのでしょう。

著者紹介

ポール・サリバンは、ニューヨーク・タイムズ誌の「Wealth Matters」というコラムの執筆者です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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