福岡からアジアへ! 効果的な情報活用で事業拡大に挑むトライアルカンパニーITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)

» 2011年10月13日 08時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]
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企業規模が拡大する中でシステム刷新を決意

 実はトライアルカンパニーは給与計算業務や人事情報管理、キャッシュフロー分析レポート、経営分析レポートなどの多様なシステムの刷新プロジェクトに取り組んでいる最中だ。背景には企業規模の拡大が今後も続き、システムの負荷が高まると容易に推測される中で、(1)システム基盤の堅牢さ、(2)情報伝達のスピードと透明性、(3)情報へのアクセスに対する統制、(4)DWH(データウェアハウス)の処理能力の限界、の4つの面での不安があった。

「従来からのシステムは必要に応じて順次、機能を追加してきたことからシステム間で情報の整合性を保ちにくく、処理速度も低くなりがちだった。これらのことを考慮すると、今後の成長に向けたシステムの見直しはまさに必然であった」(西川氏)

 同社は当初、ERPパッケージによる刷新に着目。だが、いずれの製品も日本独自の商慣習に合致せず、計画は断念せざるを得なかった。その代替策としてたどり着いたプランが、「POSデータに代表されるビッグデータを念頭に置いた自前でのシステム刷新」である。

ELTツールで膨大なシステムデータを移行

 プロジェクトの具体的な進め方は、昨今の「IT活用や処理基盤の変化」と「現場の情報端末の変化」を踏まえて入念な検討がなされた。西川氏は「GoogleやAmazon.comといったスマートな企業はITベンダに依存することなく自身で効果的なIT基盤を整備している。そこで、検討の過程ではそれらの企業を見習おうとの基本方針が固められ、最終的に超並列コンピュータとスケールアウトで基盤を整備し、ユーザーが望むことをOSSで実現できる環境を整備するとの方針が固められた。また、スマートフォンが登場する中で、これを活用しない手はないとの考えに至った」と振り返る。

 一般にスマートではないコンピューティング環境では、スケールアップ型の弊害としてITコストがかさみやすく、処理能力の限界が顕在化しやすい。これを克服し、現場のニーズに容易に対応可能なシステムを実現しようというわけだ。

 このビジョンを具現化する同社のIT基盤が、「Scale-Out、Massively Parallel、Architecture of Re-invented Technologyを意味する、SMART Computing プラットフォーム」(西川氏)である。このプラットフォームで見逃せないのが、この構築を推進するにあたり、ETLツールを用いて各システムからDWHへのデータの移行作業を進めている点である。

「ビッグデータに活用に対する注目が急速に高まる中で、データの整合性を担保するためにもETLツールの活用はわれわれにとっても得策だった」(西川氏)

 その上で、構造化データのみならず、将来的には、画像や音声といった非構造化データと各種ログなどの半構造化データもDWHに取り込み、その活用を実現すべく、現在、ノウハウや知識を蓄積している最中だ。なお、会計システムのみはSAPで刷新したという。

現場の無駄やムラ、無理を排除する仕組み

 一方で、同社はかねてから現場の無駄やムラ、無理を排除するために、独自の現場用携帯端末(スマートフォン)を活用する、PACER(Plan-Action-Check-Education-Recovery)システムの社内展開を進めてきた。同システムを利用すれば、分かりやすく通達された計画を基に社員は行動を起こせ、計画が達成できたか否かも容易に突き止めることができる。分らないことは教わり、行動を修正することで効率改善も見込むことができる。

「ROIを向上できることが実証し、PACERを、流通小売企業の現場におけるデファクトと呼ぶべきシステムプラットフォームに育てていく目論見だ」(西川氏)

 PACERシステムは業務端末の代替として採用されたIPフォンによる音声通信とデータ通信が可能なスマートフォンにも採用されている。台湾のパートナー企業と共同開発した同社のスマートフォンは、Android上にPACERシステムをプラットフォームとして搭載。バーコードスキャナーモジュールを組み合わせるといった工夫により、情報端末と業務端末、音声通信端末という機能を併せ持つ。

 その結果、従来からのPDA端末や卓上電話、トランシーバ、PC、業務端末が不要となり、1台につき数十万円のコスト削減を実現しているという。将来的には「スマートフォンのビデオ機能を活用し、映像での各種報告や車両管理なども実現したい」(西川氏)考え。さらに、PACERで蓄積した知見を基に、流通業務処理サービスや業務改革改善コンテンツをクラウドで他社に提供することも視野に入れているという。

 これらのさまざまなITを武器に、今後、アジアへ展開することで現地の流通ビジネスの成長を側面から支援することを目指すトライアルカンパニー。同社はアジアで旋風を巻き起こすことができるか――。

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