今、その成功から何を学ぶかグローバルへの道 SONY成長の軌跡(1/2 ページ)

1946年に資本金19万円、従業員約20人でスタートしたソニーは、今や資本金約6309億円、従業員数約16万8千人そして、世界中でビジネスを展開している。敗戦でほとんど全てを失ったが、残った頭脳と技術で人がやらないことをやり、日本復興のためにと進むべき道を決めた。

» 2011年11月22日 08時00分 公開
[郡山史郎(CEAFOM),ITmedia]

 「過去は何の価値もない。将来のみが価値がある。現在は将来のために使う。」これは、ソニーの共同創業者、盛田昭夫氏の言葉です。スティーブ・ジョブズ氏は「Stay hungry, Stay foolish.」と言っています。自分を飢餓状態に追い込んで、ばかげたことでも思い切ってやる。この2人の思想には、深い共通点があります。その目標は輝かしい未来なのです。

 ある日、ソニーの盛田会長から、電話が掛かってきました。「ジョブズ氏が来ているんだが、ソニーの工場を見たいというので君の厚木工場を案内してくれないか」。ソニー最大の技術集団を擁する厚木工場は、わたしの担当する情報機器事業本部の生産基地です。当時まだ20代だった米AppleのCEOは、すでにわれわれの間では神様的存在でした。

 ジョブズ氏はTシャツ、ジーンズにスニーカーという格好で現れました。2時間余り工場を熱心に見て周り、社員に愛想を振りまき技術者たちと喜んで握手をしました。「日本人が物を作る場所を見たかった。確かにきれいだ。ユニフォームがいい。皆楽しそうに働いている」。この工場見学はジョブズ氏の持っていた、米国人特有の生産工場の観念を一変しました。

 ウオークマン、自由闊達な生産工場、何でも小型に使いやすく作ってしまうこの会社との出会いは、大げさに言うとジョブズ氏のグローバリゼーションの始まりです。彼の製品にはソニーの持っていたマンマシーンインタフェースの新しいアイデアの伝統があふれています。また彼の工場、その後カリフォルニアにできた電子製品の工場は、ほとんどすべてといっていいほど、日本流のきれいさ、明るさ、楽しさに満ちています。

 盛田氏はジョブズ氏がソニーのお家芸をさらってしまうのを見届けることはできませんでした。今頃2人は天国で、次の新商品の相談をしているかもしれません。では、ジョブズ氏をグローバル化した盛田氏自身のグローバリゼーションはどのようにして始まったのでしょうか。それがこのシリーズの第1章です。

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