中間管理職の真実海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

» 2011年11月30日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー

変わりやすい地位をしっかり守る

 20世紀、手頃な価格で質の良い製品の前例のない大規模な大量生産を足場に、巨大企業が生み出されました。この大量生産を成し遂げる方法を体系化することは、企業独自の技術になりました。企業それぞれが自分達の必要性に合わせて、それぞれ異なる手法を取り入れたのです。しかし、その中でも1つだけ共通点がありました。それは、従業員が適切かつ時間通りに業務を行っているか監視する監督者を含めた中間管理職層がいたという点です。

 1920年代、ゼネラル・エレクトリック社は非常に多くの管理者と一緒に先頭に立ちました。また、シアーズ・ローバック社は1万人の若手管理者に適性検査を受けさせ、トップの成績を出した管理者をより高い地位に繋がる出世コースに乗せました。さらに、AT&T社やその他の歴史の深い企業は評価プログラムを実施し、より高いレベルの仕事に向いている管理者を特定し、彼らのために昇進の道を作りました。それと同時に、残りの管理職者の多くを、キャリアを通してずっとその時の地位から抜け出せなくしました。しかし、トップ管理者は、効率的に業務を行い、正しい判断を下す彼らのような中間管理者および下位中間管理者がいなければ、成功することはできません。

 1980年代から90年代に押し寄せたグローバリゼーションと企業再編の世界的津波の前に、昔からの大手企業は規模を小さくし、長い歴史のある階級制度は崩壊しました。終身雇用という考えは至る所で消滅し、それと同時に、企業と従業員の間で見られた当たり前の忠誠心も消えてしまいました。今、CEOの在職期間は10年単位ではなく年単位で計られるようになっています。

 そして、中間管理者は頻繁に企業内を動き回り、興味深いプロジェクトに取り組んだり、新しいスキルを身に付けたりしています。

 中間管理職にしばらくの間就いていたことがある人達は、会社組織の変革と、他の管理者の下に付く管理職層を犠牲にすることで効率性を上げようという試みから生き残った人達です。この変革がもたらした影響の1つとして、現代企業は今、多くの監督者に二重の役割を果たすよう要求しています。監督者は割り当てられた部署の仕事をこなしながら、他人の業務を監督、管理しなければなりません。また、企業再編の範囲は、管理職の削減だけに留まりません。かつては出世街道の入り口だった銀行の窓口係などの仕事は、今や非常勤で高いスキルを必要としない仕事になり、その業務の多くは管理者に移され、管理者は現場で働くことが求められています。

 在職期間の短縮もまた、企業世界に起こった変化がもたらした興味深い結果の1つです。この数十年間で、管理者が企業に残る期間は短くなりました。45歳以上の管理者の半分以上が、今の会社に在籍して10年が経っておらず、より若い世代(35歳から44歳)でのその割合は約4分の3です。年代のギャップは大きいです。1つの企業に15年以上勤め続けた従業員の割合は、高齢労働者の場合はほぼ3分の1ですが、若い従業員ではわずか10%に過ぎません。そして、10年間在職した高齢管理者の数は、1980年代後半は約40%でしたが、2006年には約30%に減少しました。若い管理者についてはもっと少なくなりました。また、女性が中間管理職に就くことが多くなりました。しかし、女性の割合はまだ半分にも及びません。

 中間管理者の多くはチームリーダーでもあります。現代の企業はチームを使って必要に応じて柔軟に専門家を招集し、プロジェクトの一部を遂行させることがよくあるからです。チームが永続的なものであれ一時的なものであれ、チームが抱えるプロジェクトの必要性に応じてメンバーそれぞれの役割や業務は変わります。

 ほとんどの人がトップ管理職の職務を抱える事のストレスを理解しています。しかし、そういった人達は中間管理職のストレスを甘く見ており、適切に評価しない傾向にあります。中間管理職は、一般的に上司が多いことは言うまでもありませんが、会議や業務もあまりにも多く、勤務時間もまた、あまりにも長いのです。また、ディレイアリングが行われると、多くの場合、かつてはもっと上のレベルの管理職が担っていた利益目標や業績目標の責任を中間管理者が負わされるようになります。

 よって、今日、中間管理者は、いまだかつて無い程多くのビジネストレーニングを受ける必要があり、さらに、その多くは業界に関する学歴だけでなく、大学または大学院でビジネス学位を取得しています。

 特に数年前までは存在しなかった分野で仕事をしている場合、キャリアの途中で新しい専門知識を身につけるために学校に通う人もいます。自分の会社の中間管理者をサポートし彼らにさらなる責任を負う覚悟をさせる事のできる企業は、物事が裏目に出た時に中間管理者を身代りにするような企業よりも良い結果を得る事ができます。

 中間管理職といえば、会社経営の実務を担い、会社の立場で利益構築を考える一方で一般社員をうまく管理監督する任務があります。20世紀始めから中期にかけて、大量生産大量消費が色濃い時代、会社へのロイヤリティを持って右へ倣への業務形態ではひとつの業務への管理一辺倒で済んでいました。

しかし、年功序列、終身雇用制が崩壊した20世紀後半になると、管理職の専門のスキルを持った人材が企業を渡り歩くようになり、特定のプロジェクトに関わるようになって行きました。これも時代の流れの中での一つの形態として興味深い事象でしょう。

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