「飲めば都」著者 北村薫さん話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”(2/3 ページ)

» 2011年12月16日 08時00分 公開
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「いただいたネタをどう小説にするかということを考えていくのはとても面白かった」

 ――拝読していて、物語の最初の方ではまだ頼りなかった主人公の都が、徐々に社会人として一人前になっていくのを見守る楽しさがありましたし、読み終えた後にすごく優しい気持ちになることができました。この物語を執筆した際に心がけていたことはありますか?

 北村:「最終的には都が結婚して、というところまでを書こうと思っていましたから、それまでの過程、大学を出てすぐに編集者になって、社会人としての時の流れの中でいろいろなことを体験して、次第に社会の風に慣れて、ということはしっかりと書こうと思っていましたね」

 ――女性の一番華やかな10年間、ということで仕事も私生活も変化に富んでいて面白かったです。

 北村:「今はそう言うとセクハラになってしまいますよ。どの時代も華やかだと言わなくちゃ(笑)でも、大学を出たあたりで、色々なことが起こりそうな時期ではありますよね」

 ――内容もさることながら、表紙のイラストも特徴的です。このイラストに描かれているネコは、登場人物の小此木さんの絵にちなんだものですか?

 北村:「わたしの本によく挿絵をつけてくださる方の一人に大野隆司さんという方がいます。大野さんは眉毛のある特徴的な猫を描かれるんですけど、今回の本の挿絵も大野さんにお願いしようと思っていました。また、先ほど言ったように、都が最後は結婚して、ということを考えていたんですけど、どういう人と結婚して、というのは決まっていなかったんです。でも、書いているうちに“あ、大野さんだ”と思い当たって、猫の絵を描いている人と結婚することにしました。それがすごくしっくりきたんです。何かものができた時、植物の種を蒔いて、それがどんどん育っていって形が整ってから、“それでこうしていたのか!”と最初の方の試みについて後から納得することがあります。

そういう風にして大野さんの絵の世界と小説の世界がくっついていったんです」

 ――すごく書いていて楽しい小説だったのではないかと思ったのですが、その点はいかがでしたか?

 北村:「そうですね。いろいろな方からたくさんのネタをいただき、そのネタをどう小説にするかということを考えていくのはとても面白かったです。いただいたネタからどう想像を膨らませて話を考えていくのか、その話が全体の大きなストーリーにどう影響していくのか。こういうことを考えるのは物語づくりの醍醐味だと思いますね」

 ――反対に、苦労した点はありますか?

 北村:「苦労した点は特になかったですね。楽しく書けました」

 ――特に思い入れのある登場人物はいますか?

 北村:「『指輪物語』での文ネエは印象に残っていますね。好きになった男性が2歳年下で、その男性が8つ年下、自分より10歳年下の女性と結婚する。それもあって(好きだということが)言えないっていうね」

 ――今おっしゃった『指輪物語』だけでなく、それぞれのエピソードに個性的な登場人物たちよる印象深いシーンがあります。文ネエのお話もありましたけども、こうした登場人物たちに実在するモデルはいらっしゃるのでしょうか。

 北村:「ある程度はいます。100%そのままということではないですけど」

 ――書いた後に、モデルとなった方々に何か言われたりしませんでしたか?

 北村:「いや100%じゃないからね(笑)あちこち変えていますから、小説に出てくるのは別の人です。ただ面白いのは、読んでくれた出版社の方が、“あれウチの○○でしょ?”みたいに違う人の名前を出してくるんですよ。酔った時のエピソードを持っている人ってたくさんいるんだなと思いましたね」

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