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» 2012年01月24日 08時00分 UPDATE

グローバルへの道 SONY成長の軌跡:現地のことは、現地の人に任せる (1/2)

絶対的な権力を国をまたいで行使する。政治的にはかなりの困難が伴うが、ビジネスの世界では可能である。困難ではあるが可能だ。

[郡山史郎(CEAFOM),ITmedia]

 相手の懐に飛び込め。それが商売成功のコツである。盛田海軍中尉、ソニー副社長は、家族を連れてニューヨーク5番街、セントラルパーク東に住みました。この一帯はニューヨークきっての高級住宅地で、その後すぐに大統領になるニクソン弁護士や、大指揮者のストコフスキーが近所に住んでおり、ジャックリーンケネディ未亡人がやがて住む辺りです。

 Macy'sで買い物をし袋を提げて帰ったら、アパートの守衛にここに住む人はMacy'sで買い物をしてはいけないと言われた。盛田氏の述懐です。Macy'sは米国最大の百貨店で、そのショウウインドウといえば、人目につく場所の代名詞にもなっているくらいです。それでも、そこは庶民の行くところでありこの5番街の住人はMacy'sの袋を提げて出入りしてはいけないのです。

 盛田氏が学んだのは、この自由の国米国は徹底した階級社会であり、閉鎖的差別意識の塊であるということです。財力と名声、それに仲間、(Fame,Fortune,Fraternity)これが米国の権力を形成する基本要素です。同じ価値観を共有するためには、同じでなければならない。自分は日本人であり、徹底的に差別される。自分の価値観は通用しない。これが盛田氏がニューヨークに移住して学んだ原理原則です。

 金があればそばには住める。しかし仲間にはしてくれない。名声はメデイアが作る。広告代理店が連なるマディソン街が作る。広報と広告から生みだされるのである。ここには力を入れなければならない。それでも、仲間にはしてくれない。いや、仲間にしてくれる方法が1つだけある。しかしそれはすぐにはできないので、機会を待とう。(その機会は30年後に来るのですが、今後の章で話します。)この仲間意識の固まりの米国人は、米国人の言うことしか聞かない。だから、米国の会社は米国人に経営させる。これが盛田氏の米国在住での学習効果、米国攻略作戦の結論です。秋山真之クラスの智謀です。その後の盛田氏の行動はこの原則に沿っています。

 分かったら長居は無用とばかり、盛田一家は日本に引き揚げました。

 さて、実践面です。広告が大切。それには良い広告会社を見つけなければならない。盛田氏は、フォルクスワーゲンの広告で大成功したDDB社に目をつけました。ドイツメーカーを成功させられるなら、日本メーカーもできそうだ。

DDBもユニークな製品をユニークな売り方をする日本メーカーは興味がある。かくて、当時米国で最も力があるとといわれた、同社の創業者バーンバック氏自身が書いたソニーの広告コピーが現れました。盛田氏の売り込み手腕躍如です。

 広報にも力をいれエージェントを雇い、記者会見を頻繁に行い、新製品が出るたびに記者団を招いてパーティーを開催しました。満面に笑みをたたえたモリタスマイルの写真は、当時唯一の力を持っていたニュヨークタイムズ以下の日刊、ライフなどの週刊の印刷メデイアの常連になりました。世界で初めてのポータブルテレビ、ウオークマン、ホームビデオを引っさげた盛田氏は、米国家庭電子業界の異端児で現今のステーブジョブス氏のような存在になったのです。

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