『田舎の紳士服店のモデルの妻』著者 宮下奈都さん話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”(2/3 ページ)

» 2012年02月17日 08時00分 公開
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ツイッターで応援団「“こうなったらいいな”とさえ思いもしないことだった」

 ――本作からは「安定」のイメージがある結婚に、実際は常に細かな揺らぎがあるものだということが読みとれます。宮下さんは、人が結婚した状態でい続けることの良さや意味についてどうお考えですか?

 宮下:「揺れていながらも結婚している状態を維持していくっていうのが醍醐味なんじゃないかと思うんですよね。波があって、時々離れる時があっても、また時々は近づいたり。パッと一つのことで分かり合えたり喜び合えたりした時は圧倒的な絆感があります。一体感とまではいかないですが、“一番身近に共感し合える人がいる”っていう喜びは大きいと思いますね」

 ――書店員の方々を中心にツイッターで宮下さんの応援団ができたということですが、そのことについてどのようなご感想をお持ちになりましたか?

 宮下:「“こうなったらいいな”とさえ思いもしないことだったので、もう本当に嬉しかったです。自分が思っていたよりももっとずっといいことが起きたという感じでしたね。“願えば叶うって言うけど、願わなくてもこんなにいいことがあるんだな”って思ったくらい、本当に嬉しくてありがたかったです。

 ツイッター上で、書店員さんの方々でおもしろいことをやってみよう、一冊の本を仕掛けようと言っているところからちょうど私も見ていたんですよ。“宮下奈都の『スコーレNo.4』がいいと思う”ってつぶやいてくださった方がいて、うれしい!でもまさか通らないだろうと思ったんですけど、たくさんの方々が賛同して下さったようです。

 先日また『スコーレNO.4』(光文社/刊)が増刷されたんです。絶対応援団のお陰だと思いますね」

 ――宮下さんが小説を書き始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

 宮下:「それが分からないんですよ。本はずっと好きでよく読んでいたんですけど、自分に書けるものではないと思っていたので。結婚して男の子が2人生まれて、3人目がお腹に来た時に、この子もきっと男の子だろうと思ったんです。男の子が3人ってもの凄く大変で、生まれちゃったら私はもう何もできなくなると思ったんですよね。だから生まれる前に何かしたかったんです。それがなぜ小説だったのかというと、よく分からないんですけど、でも“何かしたい”っていうのが小説を書きたいということだったんだな、と今は思いますね。それで書いて出した小説が文學界新人賞で佳作になったというのが幸運でした」

 ――書き始めた当初はなぜ小説だったのか分かっていなかったんですね。

 宮下:「夫は仕事が忙しかったし、子供は3歳と1歳ということで自分の時間が全くなかったんです。だから自分だけのための何かをしたかったんだと思います。小説は自分だけの言葉で書けて、自分の中で完結できるじゃないですか。だからそこで映画を撮りたいとか思わなくてよかったですよね(笑)

 それで、小説を書いてみたら、それがすっごい楽しかったんですよ。まだ真ん中の子も夜泣きをする時期だったので眠かったんですけど、それでも睡眠時間を削って書くのもつらくないほど楽しかったです。でもそんなに書くスピードがないから、書いては直しを繰り返して、何カ月もかけてやっと(文學界新人賞の規定の)100枚を書けたっていう感じです。最初の作品だということで、誰が読むかも考えずに書いた、自分のための小説だったと思うんです。そういう意味では幸せな小説でしたね」

 ――自分だけの言葉で書きたいという気持ちは日記やブログには向かわなかったんですか。

 宮下:「日記は日記で書いていたんですけど、でも私にとっては日記は絶対に人には読ませないものなんです。だからちょっと違いましたね。人を喜ばせたいという気持ちはないにしろ、書いたら新人賞に出そうとは思っていたので、一応人が読んで分かる内容にしようとは思っていました」

 ――ちなみに、さきほどおっしゃっていた3人目のお子さんは、やはり男の子だったのでしょうか。

 宮下:「それが生まれたら女の子だったんですよ。たいそう可愛い女の子でした(笑)」

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