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» 2012年02月27日 08時03分 UPDATE

Gartner Column:ビジネスプロセスを改善する――コストは結果的にしか削減されない (1/2)

ビジネスプロセス改善に取組むことはいいのが、「無駄を発見する」とか「コストを削減する」などが主目的になっていないだろうか。完全な間違いではないものの、勘違いをしているように思えてならない。

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

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 最近、わたしのところに「ビジネスプロセス改善プロジェクト」を始めたのだが、どのように「無駄」を発見したらよいのかを教えて欲しいと数社から立て続けに質問がきた。ビジネスプロセス改善に真面目に取組むことは、いいことである。しかし、ここで気になるのは、数社とも「無駄を発見する」とか「コストを削減する」などがプロジェクトの主目的になっていることだ。完全な間違いではないものの、やはり勘違いをしているように思えてならない。

戦略とビジネスプロセス

 そもそも、ビジネスプロセスを改善することとは無駄を暴き出して、これらを排除することだと考えていることが多いのだが、これは間違いだ。結果的に無駄は暴き出せるかもしれないが、それは、ビジネスプロセスを精緻に調査、整理、分析することによって発見できるものではない。

 「重複した業務を発見して、一つに統合できれば大きくコスト削減に貢献できる」とは、とある製造業のCIOがわたしに語ったのだが、半年後にもう一度進捗を訪ねたら、「何が無駄で何が無駄でないのか判断がつかない」と言っていた。これは、どういう意味だろうか。正直、日本の政府の無駄取りと似ていないだろうか。

 なぜ、無駄取りができないのかを理解するために、ここで、ビジネスプロセスの存在目的に考えを巡らせよう。ある程度の規模の組織になれば、実際の業務は、各部署や各人に専門分化されて全体として価値を創出するように調整される。そう、専門分化された組織が集まって全体で価値を創造するのが組織なのである。

 ビジネスプロセスとは、専門分化されたサイロ構造の組織を順々に業務が流れる工程である。つまり、ビジネスプロセスは、組織全体で価値を創造することを目的にしていると言い換えることができる。組織全体で生み出す価値とは何だろうか。これは、組織全体の戦略そのものである。つまり、ビジネスプロセスは、戦略目標を達成するために日々流れているのである。これを明示的に説明するならば、ビジネスプロセスは、戦略目標を達成するために存在していると言えよう。

 唐突に戦略の話になって驚いた読者のために、少しだけガートナー エグゼクティブ プログラムが定義している戦略について説明しておきたい。戦略とは、何をするのか、どちらの方向に行くのか、などという方向性が決まっていなければならない。

 方向性が決まるということは、何に注力をするのかを決めるということである。戦略を語るうえで、これを抜きにしてはならない。余談だが、日本企業ではビジネス戦略の方向性に、売上げ向上とか利益率向上などという企業があるが、これは方向性としては非常にマズイ。自社の強みは何で、それをマーケットにどのように訴求するのか、もしくは、競合他社に比して当社の訴求ポイントは何かというようなものが方向性となる。

 そして、この方向性に基づいて戦略目標が設定される。例えば、「顧客満足度向上」という戦略の方向性に対して「製品を受注後24時間以内に完納する」などというような具体的な目標である。ここでも残念な日本企業では、「売上げは、3年で2倍」「利益率は、5年で20%増」のような具体的な目標を掲げてしまう。何をして、売上げを上げたいのか、何をして利益率を上げたいのか、全く分からない。営利企業であれば、売上げや利益は向上させたいものだが、「何をする」の部分が無ければ、戦略目標ではなくスローガンと化してしまう。

 最後に、経営資源配分を決めるというのも戦略の中に入れ込むようにアドバイスする。つまり、戦略目標を達成するためのヒト、モノ、カネ、情報という4大経営資源は、現場では勝手に調整できない。従って、これもマネジメントサイドから、全社レベルでの変更を新たな戦略を打ち出す際に必要なのである。

 さて、話をビジネスプロセスと戦略に戻すが、上述したように戦略とビジネスプロセスは密接に関係している。従って、ビジネスプロセスを改善するというイニシアティブは、新たな戦略が設定された場合か、もしくは、戦略通りにビジネスが遂行できない場合に、実行されるのである。戦略と実業務の乖離を埋めるための施策がビジネスプロセスの改善というわけである。

ビジネスプロセス改善の目的

 それでは、禅問答に聞こえるかもしれないが、ビジネスプロセス改善の目的とは何だろうか。「戦略との乖離を埋めることなのではないですか?」と聞こえてきそうだが、あえてここでは「No」と答えたい。それは、乖離を埋めることを更にブレークダウンして説明して欲しいからだ。ビジネスプロセスを改善することの目的は、サイロ構造に陥ってしまい、プロセス内に参加する全ての組織が一つの目的、目標(ビジネス戦略のこと)に向かえなくなってしまっているのを改善するということである。

 エンドツーエンドのビジネスプロセスの改善を例に考えると分かりやすい。全組織が一丸となって戦略目標を達成する(=価値を創出する)のがビジネスプロセスであることは前述したが、価値は、誰のためにあるのかを考えたい。自社(もしくは自部門)のビジネスプロセスの外側にある顧客に対して価値を創出するのである。

 自社内の個々の組織は、サイロ構造になっている。しかるに個々の組織には組織の壁が存在する。この組織の壁を取り払い、全社レベルの目標、目的に向かって全社レベルで取組む施策が「ビジネスプロセスを改善する」ということなのである。ややこしい言い回しかもしれないが、内部の組織の壁を突き崩し、どうしても内部プロセスとして取り込めない顧客と自社の間に発生している組織の壁を低くすることで価値を創出する取組みだということなのである。

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