1カ月でブランドを確立する方法海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

» 2012年02月29日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

なぜブランドは大切なのか?

 消費者は、商品の機能やメリットとデメリットを分析することで、すべての購入決定を下しているわけではありません。多くの場合、消費者はブランドをどう思うか、感情的繋がりをもとに決定を下しています。それが車であろうが、1杯のコーヒーであろうが、ブランドから連想される意味が消費者の購入決定を後押しし、リピーターを生み出します。ブランドがなければ製品はただの売買品です。人は、あなたのブランドが何らかの形で自分のニーズやフィーリングと合致するため、あなたのブランドをひいきにするのです。

 ブランディングのコンセプトをより深遠な意味と結び付けてください。それにはまず、自分の好きなブランドを2つ挙げ、それについて考えることから始めましょう。その2つのブランドの意味を重要だと思う理由を5つ書き出してください。次に、自分の会社のブランドの意味を書き出してください。

 強力なブランドはある特定の特徴を共通して持っています。例えば、「魅力的、信頼が置ける、時代遅れでない」などが挙げられます。ある特定の地域であれ、全国であれ、自社のターゲット市場の消費者は、強力なブランドを知っていますし、そこから同じような意味を連想します。そのブランドの名前、ロゴ、スローガンを覚えます。よって、ブランド力の強い企業は、継続的に自分について説明する必要がありません。

 ブランドのイメージを決めるのは、ブランドの強みだけではありません。例え自社のブランドが一般に広く認識され理解されていても、否定的なイメージを持たれる可能性があります。北朝鮮と韓国を例に考えてみましょう。この両国を同じくらい知っていたとしても、韓国に対するイメージの方が好意的になる傾向があります。

 人は、ブランドに対し否定的なイメージを持つことがあり、そうなるとそのブランドのリピーターは少なくなり、宣伝はうそっぽく聞こえてしまいます。しかし、もし好意的なイメージを持ってもらえたら、消費者は惜しみなくそのブランドを口コミで広め、知り合いに薦め、リピーターになり、好意的なコメントを寄せてくれるようになります。

 「ブランド」の重要性について言及しています。顧客がなぜ商品を買うのか? それは、商品の機能のみが決定権をくだしているのではないということです。そのブランドが顧客にとってどれだけ価値があるのか? 顧客の感情を左右することが商品購入の決定の要因であるわけであり、ブランドがもたらす効果がそこに反映されているのです。

目的と戦略

 企業の立ち上げにはお金がモチベーションになることがあるかもしれませんが、お金が発揮する力は目的ほど大きくはありません。自分のビジネスのエネルギー源となっている隠れた意味を特定し、それをブランディングの基盤にしてください。人は、人間性に訴えかけるブランドに反応を示します。感情と結び付け、自分の目標を理解することは、ブランドを確立する上で役に立ちます。ブランディングとは感情に訴えるプロセスです。

 しかし、ビジネスの経営は感情が全てではありません。そこで、戦略もまた、大切な役割を果たします。きちんと作られた戦略は、物事が前進している時や、障害物にぶつかった時に、方位磁石としての役割を果たします。つまり、戦略は企業の最終目標を指示してくれるのです。ここで戦略と戦術を混同しないよう気を付けてください。戦術とは欲しい結果を手にするために使う手法のことです。

 戦略には、自分が今持っているスキル、あるいは、これから身につけられるスキル、それから、外部委託する必要のある業務などを織り込む必要があります。例えば、帳簿記録は得意だけれども、人目を引くウィンドウ・ディスプレーをセットするデザインスキルが無い、という人がいるとします。その場合、その人は簿記係としての役割を担い、その代わりに創造力のある人材を雇えばよいのです。

 「ブランディング」で重要なことは人の感情に反応する訴求力の強い戦略的なメカニズムをもつことです。そのためには、自社の商品やサービスが顧客の心に届く様なステップを構築する必要があります。

形態学的分析

 形態学的分析(MA)はブランド戦略の基盤を作り、ブランドにすることのでき来るビジネスの性質を理解する上で役に立ちます。まず、縦に4列、横に8列の表を作ってください。ここでは、コーヒーショップを開きたいとします。縦の列の上には、コーヒーショップを開くために考慮すべき要素を書いてください。

 例えば、「立地、スタイル、客層、ビジネスの重点」と書きます。そして、その下の8つのマスの中に、それぞれの要素に対する考えられるオプションを書き込んでください。例えば、立地の列には「ショッピングモール、街の周辺、ビジネス街、裏通り、移動式、大学の敷地内、農村部、海辺」などが考えられます。

 表をすべて埋めたら、すべての組み合わせを考慮してください。その組み合わせの中で、自分の最初のアイディアと共鳴するもの、新しい可能性を与えてくれるもの、あるいは、自分の感情に訴えかけてくるものはどれですか? どの組み合わせを今後取り上げるか、決めてください。

 経営者の価値がビジネスに人間味を与えます。しかし、自分自身を誠実な人間、あるいは信頼できる人間だと示すことにあまり意味はありません。なぜなら、そのような価値はあい昧で、どの企業も同じことを主張しているからです。自社ブランドに見合った意味のある価値を特定するには、新しいMA表を作ってください。

 今回は列の数は問いません。その表に自分にとって意味のある価値を書き込んでください。そして、そのそれぞれの価値が自社ブランドに適用できるか分析し、その価値が、消費者にとって信頼できる、内面的に魅力のある意味を持っているか、自社ビジネスに独特のものか、そして、広めやすいものかどうか考えてください。そして、その価値を守るためなら戦えるか、自分自身に問いかけてください。

 何を始めるにしても準備は必要ですが、ここではブランドを構築するためのマーケティングの方法でしょう。色々な方法があると思いますが、必要なことは企業の価値というよりも経営者の価値観をどれだけ打ち出していくかということになると思います。

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