あなたの属するチームは真に機能しているか――実質的な死に体チームが多過ぎる生き残れない経営(2/2 ページ)

» 2012年03月05日 08時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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帰りたくなる場所に

 チームは、帰りたくなる場所でなければならない。だからといって「家庭」とは違う。ゲマインシャフト(共同社会)ではない、憩いの場でもない。そこはあえて一言で表現すると、エネルギーを補給できる場所でなければならない。そこでは、メンバーたちが励まし合い、助け合い、そして愚痴もこぼせ、いわゆる息づく場所であり、一方で競争し合い、成長のため刺激し合い、活力をもらえる場所でなければならない。そう変化させるのは、他ならぬリーダーの役目そのものである。

 aチームの場合は、メンバーに強烈な個性を殺し、チームの連帯意識を持つことを教える。もともと個性が強すぎる連中の集まりだから、個性を殺そうとしても多様性は失われないだろう。ただ、筆者もそのようなチームを統率した経験があるが、非常に難しい。個性を殺して連帯意識を待たせようとすると、激しい抵抗に会う。ますます収拾がつかなくなる。しかし、チームには全体に影響力を持つキーマンが必ずいる。彼をつかむのだ。そこが重要なコツだ。それでもついて来ない2、3人は、切るしかない。

 bチームの場合は、親会社、あるいはB社人事部門に対して天下りを断固拒否することだ。それが不可能な場合は天下り人材にB社の社風に徹底して馴染むように求め、それも不可能な場合は天下り人材を外して旗本退屈男にし、プロパー人材を登用することだ。

 cチームの場合は、メンバーが不満の塊だと思われるので、1人1人から不満を聴取し、その解消の努力をする。時には頑固者に対して酒を酌み交わして語り合う個別撃破も必要だ。メンバーが互いに心を割って話せる雰囲気を作ると、情報も開示されていくだろう。

 以上は1つの解決策を示したものだが、かくしていずれのメンバーたちも「帰りたくなる場所」を得ることができるだろう。身近に存在する問題チームには、基本的に類似点があるはずである。a、b、cチームを参考にして、応用問題として解いて欲しい。その後で、タックマンの4段階に取り組むべきだ。b、cチームについても過去の経緯は捨てて、今チームが形成さればかりだという観点から取り組むべきである。

 さて、チームは設置しただけで機能し始めはしない。次の段階を踏んで成長していく。

第1段階(Forming 形成期)

 メンバーは、出会ったばかりでお互いを知らない。また共通目的なども分からず、いわば成り行き任せの状態である。個々に、チーム形成の理由や目的を考えてはいる。

第2段階(Storming 混乱期)

 さらに具体的に進めていく段階になり、メンバー間の違いが表面化し、衝突が起こる。共同作業に抵抗者が出る、チーム内に争いが起こる。そして、メンバーの不安が高まる段階である。チームとしての体裁はあるものの、まだ機能していない。この段階を経ないと、次の段階へ行けない。行っても、チームは成長の過程を踏んでいないので機能しない。

第3段階(Norming 標準期)

 この段階になると、メンバーの心が開かれてチームの一体感が生まれ、新しい約束や新しい基準、ルールなどができ、メンバーの役割も明確になる。物事を生産的に進められるようになり、メンバーの不安も取り除かれる。

第4段階(Transforming 成就期)

 メンバーたちに一体感、団結力が生まれ、互いに助け合い、チームの力で課題を解決し、成果を出す動きができるようになる。

 ところで、第4段階はリーダーとメンバーが第2、3の厳しい段階を乗り越えてこそ成就できる。

 リーダーは、まずメンバーたちが「帰りたくなる場所」を創る。その大前提の上に第1段階から着実に、しかも経過が早ければ早いほど効果が上がるのだが、第4段階へ向けて迷うことなく信念を持ってチームを導くべきである。リーダーの役目は、殊更重要である。

 しかし、メンバーの協力なくして達成できない。メンバー各人も各段階におけるメンバーシップとしての任務を理解して、チーム機能を発揮し、成果を達成できるよう協力しなければならない。

 いずれにしろ以上から分かることは、チームが成長し、チームとして有効に機能するには、まずリーダー自身が学ばなければならないということ、そして決断、実行しなければならないということである。            

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。

その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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