マザー・テレサに習う経営術海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

» 2012年03月14日 08時02分 公開
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原則5:自己を律する喜びを見出す

 マザー・テレサや修道女、慈善活動のボランティアスタッフ達は、毎日朝4時40分に起床し、早朝礼拝やミサ、朝食や聖歌斉唱を時間通りに行っていました ― そのすべてが一日の仕事が始まる朝8時前に行われていました。常に活発に活動していたマザー・テレサですが、インドでの生活は特に活発で、かなりの体力と自己規律が必要であると感じていました。

 コルカタでは、マザー・テレサは地元の施設を訪問し、そこの従業員と会い、監督することを日課としていました。また、世界中の500以上のボランティア派遣団と連絡を取り、管理するために外国にも頻繁に訪れました。彼女の深い献身と独特なリーダーシップは、どこで誰といようと関係なく、はっきりとしていました。マザー・テレサは模範を示して指導し、迅速に仕事をこなし、自分の仕事の中に喜びを見出していました。

 マザー・テレサの5つ目のリーダーシップ原則は、「リーダーシップの中にも日々の生活と同じように、自己規律が重要である」と示しています。人は、最もありふれた日常業務の中にすら、喜びを見出すことができます。しかし、運任せで喜びを手にすることはできません。

 マザー・テレサは、自身の仕事をこなすことで得られる喜びを再循環させ、意識的に自分の熱意やエネルギーを満たすことができる人でした。自己規律は毎日の修練によって身に付けられます。究極を言えば、最終結果で判断することなく継続的に挑戦することのほうが、成功よりも重要なのです。努力の中に喜びを見出して下さい。なぜなら、成功するためには喜びが必要だからです。

 これが一番難しいことなのかもしれません。なぜならば、多くの経営者は利益構築することのみに誇りや喜びを見出しているからです。決してそれは間違いではないのですが、成功の過程において最も重要なのは、組織が恒常的に何事にもチャレンジできる環境を維持し、そこから価値を見出し行動に移すことにあるようです。

原則6:人が理解できる言葉で話す

 マザー・テレサは多言語を使いこなせたわけではありませんが、コミュニケーションに非常に長けた人でした。彼女は自分の考えの真ん中から、誠実に話をしました。耳、目、声、そして心を使って、伝える必要のあることを適切なタイミングで伝えました。

 また、笑顔を浮かべた時が、最も雄弁でした。マザー・テレサは、相手の抱える問題に取り組む前に、その人達が話す必要のあることを聞きたいという気持ちをとても大きく持っていました。そして、自分と話がしたいという人とは、話をする時間を取るようにしていました。

 マザー・テレサの6つ目のリーダーシップ原則は、言葉や文化、社会的身分などの制限に基づいて人を分類してはいけないというものです。自分が真実であると信じることを伝える必要性よりも、自然に生まれる信頼性や感情移入、情熱を大切にして下さい。

 マザー・テレサは自分のメッセージを押しつけようとするのではなく、まず聞き手の話し方や身ぶり手ぶり、アイコンタクトや姿勢、態度を観察します。それから、その聞き手が一番理解できるだろうと思える形で返答をしました。コミュニケーションスタイルを改善するには、話をする前に考え、自分のビジョンを思い出し、地に足を付け、自分の目的を頭に入れてから話をして下さい。

 つまり、「コミュニケーション」が取れるかどうかということです。 自らの意図したことを、周囲に理解してもらわねば何もなりません。どのようにしたら伝わるのか? それを考える必要があります。

原則7:すべての人に気を配る

 マザー・テレサが普遍的に人を引き付けた大きな理由は、彼女のすべての人に対する純粋な興味と気遣いにあります。マザー・テレサは、すべての人間は家族や友人、仕事仲間から大切にされていると感じたいという、基本的な欲求を持っているという考えを深く尊重していました。

 また、人生は一瞬で変えることができることを理解していました。彼女は、コルカタのスラム街の子どもから、ボストンのエイズ患者、そして、高層ビルで働く企業経営者まで、出会ったすべての人を同じように尊重し、同じように安全な環境を提供しました。

 マザー・テレサの7つ目のリーダーシップ原則は、自分の行動でどのように人を統率するか、その方法を示しています。円滑な人間関係を構築すべく適切な提案を行って下さい。相手の立場を考えず、見境のない態度で関わっていませんか? それとも、すべての人に対し、同じように偏見の無い誠実な態度を取っていますか? 人に気を配り、名前を覚え、その人がどのような人物であるか認め、質問をし、相手のことをよく知って下さい。そうすることで築いたきずなや信頼、協力の気持ちから、恩恵を得ることができます。

 経営とは人との関わりがあって初めて成り立つものです。人への気遣い程大切なものはないと思います。それぞれが何を考えているのか?それを認めることで心は開けます。

原則8:静かな祈りの力を使う

 マザー・テレサは、いつも行っていた黙とうとめい想の時間をとても大切にしていました。自分を再生させるためには静かな時間の中で、自分自身の内側を見つめ、内なる声、そして神の声に耳を傾けるべきだとマザー・テレサは、考えていました。心を静めることで、穏やかさを知り、考えと目的をはっきりさせることができます。マザー・テレサはこの静かな祈りの力についてよく書いていました。

 「静けさの中で、私たちは新しい活力や本当の調和を見つけ、すべての物事を新しい目で見ることができきるようになります(中略)。その静寂の中では、神は私たちの言葉をお聞きになり、私達は神の御言葉を聞くのです」。マザー・テレサは、自分を見つめるための黙とうは、1人の人間として他人と深く関わるための原点であると考えていました。

 マザー・テレサの8番目のリーダーシップ原則は、極めて重要な教えを与えています。容赦なく襲いかかる過剰な情報の波や、下さなければならない決断の多さに苦しめられているリーダーが沢山います。そのような状況に対処するには、心を落ち着けることが大切です。

 心を落ち着けることで、自分の外側の騒音が小さくなり、精神的ながらくたが減ります。さらに、自分の内なる声に耳を傾け、必要な助言を受け取ることのできる環境を作ることができます。心を静める作業を自然にできるようになるには練習が必要かもしれません。ですが、それができるようになれば人生はより豊かになります。

 祈ることだけでは経営は成り立たないのは客観的に考えれば分かることです。むしろ、心をおちつけることで自らの気持ちを落ち着かせ、行動をレビューすることで今後行うべきことを整理できるわけです。

著者紹介

ルーマ・ボーズは、1992年から1993年までマザー・テレサとともに慈善事業に取り組んでいました。健康関連グッズを販売するスプレーオロジー社の代表および共同CEOです。ルー・ファウストは、以前はソロモン・ブラザーズ社に籍を置いており、コンサルティング会社であるエッジ・キャピタル・パートナーの創始者および業務執行社員です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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