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» 2012年03月19日 08時00分 UPDATE

生き残れない経営:“成功のための手法の後付け理屈”はズルイ、誰でも言える (1/2)

効果の期待できる「成功のための手法の前付け理屈」はないものなのか探ってみる。

[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 以前から疑問に思い続けていることがある。世の学者や識者が企業の成功例でなぜ成功したかを語る時、成功に到ったもっともらしい理屈や理論付けをして、その手法を実践することを勧めるのが常であるが、それは後付けではないか。後付けの理屈をもって方法論をわが物顔に語るのは、ズルイのではないか。

 大体、例えば新製品開発などについて理詰めの何とか手法を使って発売まで持ち込んでも、予測どおり成功したためしはない。それもそのはず、新製品にしても新規事業にしても、事前に緻密なマーケティングや企画を試みたとして、時の政治、経済、社会事情、競合相手などなど予想外の影響を受けて、結果が変化する可能性が大だからである。

 以前、高名な経済学者N氏の講演で、言い訳がましい滑稽な発言を聞いて、思わず密かに苦笑したことがある。「以前の講演で、参加者から“先生がそれほど将来事業としてあるべき姿を説くなら、具体的にどんな事業に取り組んだら成功するか教えてくれ”と問われて、その時は“今すぐは思いつかない”と答えたが、その後考えてみると、“それを知っていたら、私はこんなところで講演をしないで、事業を起こしている”と答えればよかったと思っている」と、面白くもおかしくもない、むしろ学者として恥ずかしい話をしていた。

 それにしてももう少しマシな答えようがあるだろうが、それはそれとして、新製品や新規事業についての取り組み方は、そんなものなのである。但し、後付け理屈とて参考やヒントの1つにはできるという意味で、全く否定するものではないことを断っておく。

 では、効果の期待できる「成功のための手法の前付け理屈」はないものなのか。今回はその点について考えてみて、議論を喚起したい。

 最新の例を挙げよう。3/5(月)付け日本経済新聞に掲載されていた、“成熟産業でも「高品質」「特化」に活路”という記事である。いくつかの成功例が取り上げられているが、そのうちの特に興味深い「男前豆腐店」と「澤の屋旅館」について引用する。

 「男前豆腐店」は、国内豆腐市場が1世帯当たり年間購買額平均4,697円と直近ピークの06年比644円(12%)も減少しているのに、2012年3月期売上高は約60億円と、直近5年間でほぼ倍増した。その成長力の原動力は品質。大豆は北海道産か北陸産、大豆を煮る工程は小型釜で味ムラを防ぐ。製造に他メーカーの3、4倍の時間をかける。さらに単身世帯向けに、1個60gと通常の6分の1サイズを6個セットにする工夫もする。他社平均価格の約2倍の価格を設定して、価格競争と一線を画す。

 「澤の屋旅館」は、顧客層を外国人旅行客に切り替えて成功した。夕食なし、12室のうちバス/トイレ付は2室のみ。1人部屋で1泊5040円の低料金や、周辺の下町情緒などが受け、2010年までの3年間は外国人客比率が90%超、部屋の稼働率も90%を確保した。

 成熟市場の生き残り策として、博報堂生活総合研究所嶋本所長は「開拓する市場を切り替えること」、別の紹介例について「長い歴史を持つ商品やービスでは、昔を懐かしむ消費者の性向を活用する方法も有効だ」とコメントしている。これらは確かにそのとおりだが、結果からみた、後付け理屈である。

 両成功例について、著書やインターネットサイトからもう少し詳しい情報を調べてみる。

 「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」(男前豆腐店代表取締役社長 伊藤信吾著、講談社)には、画期的商品である豆腐ジョニーが「どうやって完成したのか」、「どのように進化しているのか」、「男前豆腐店の目指す方向性」などについて、面白おかしく紹介されている。

 まず興味深いことは、製品「豆腐ジョニー」の誕生はマーケットインからではなく、プロダクトインからだということだ。伊藤氏の発想は、ほとんどが「よい製品を作れば売れる」である。彼は製品の中身そのものを変えるために、工場に入りびたりになる。

 「バイヤーが一目見てぎょっとするようなパッケージ」の「新商品を作りたい」、「うまい豆腐ならいっぱい食うはず」、「よそと同じようなものを出しても仕方がない。どう違いを出すか」、「メーカー主導で納得のいく豆腐を作る」、「これまで誰も作ったことのないような豆腐を作ってみたかった」など、ドラッカーの「顧客からスタートする」に反する姿勢ばかりである。

 しかし、イノベーションへの取り組みは驚異的だ。新製品追求はもちろん、奇抜な「ふんどし祭り」の開催による販売イベント、斬新なホームページの開設、ユニークなキャラクターやキャッチコピー、まさに見事なまでに総合的なイノベーションに取り組んでいる。

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