闘いに勝つにはまず勢い――雰囲気作りグローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(2/2 ページ)

» 2012年05月01日 08時00分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]
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実行力はチームスキル

 多くの起業家を輩出しているある企業の経営層が言っています。

 「最近は実行力が何より大事だといわれます。実行力は個人次第だといわれることもありますが、確かにそういう面もあるかもしれません。ただ一方で“実行力はチームスキル”という部分が非常に大きいと感じます。チームとして実行力をどう発揮するかはチームリーダー次第だと思います」

 その人は、ある新規のプロジェクトを「○○作戦」と名付け、部員たちを激励。従来ならば考えられないような組織の幹部、理事長に電話してみようということで作戦開始。偉い人に電話を取ってもらえるかと最初は全員が半信半疑でしたが、実行してみると3件のうち2件くらいがつながり、そうすると「いけるんですね」と思えるようになり、飛躍的に成績が伸びるとともに、成果が上がったことで部員全員が仕事が楽しいと感じるようになり、充実感を味わいました。

 「これこそ実行力はチームスキルだということを証明しています。リーダーがすべきことは、何に取り組むかを決めて、環境をつくり、段取り・プロセスをメンバーに提供することです」

 この経営者は、イベントも大事にしていて、新人歓迎会や花火大会、忘年会などを開催しています。自分も積極的に企画を提案しますが、社員にも場所取りから企画・進行いろいろなことをやらせながら、参加意識を高めています。

 雰囲気を良くするためにはどうするのか。やはり日々のコミュニケーションの積み重ねが欠かせません。日々挨拶をし、何でも話し合う。世界的なコンサルティングファームのマッキンゼーでは、コミュニケーション不足より、コミュニケーション過多のほうが組織を運営するうえではいいと考えるそうです。

 また、以下のようなことを心掛けることをお勧めします。

適度にストレッチした責任・役割を与える

 人は少し高い目標を与えるとそれを乗り越えようと頑張ります。あまりにも高すぎると、最初からやろうという気にもならないので、適度にストレッチした目標が大事になります。

認める、褒める、関心を示す

 何かを成し遂げたならば認めてあげ、成果を残したならば褒めてあげることです。

仲間意識を育む

 みんなで頑張っていることを感じ取ってもらうために、みんなで楽しむ仕組みを導入するといいでしょう。

元気な人をリーダーにする

 雰囲気は伝染するので、元気な人をムードメーカーにして、彼が先頭に立って進めていくプロジェクトなどを作ってみてもいいでしょう。

 私事で恐縮ですが、わたしは走ることが好きで、たまにレースなどに出ています。3月にパリハーフマラソンに出場してきました。多くの人が「Allez, Allez」「Bravo」と声をかけてくれるとともに、いたるところでさまざまなバンドやオーケストラが盛り上げる音楽を演奏したり、歌を歌ったり、MCの人が「あともう少し。頑張れ」といったような声を掛けてくれました。正直なところ、ただそのときは膝の具合があまり良くなく、11キロを過ぎたところで痛くなってしまい、大丈夫かなと思っていました。声援や音楽に後押しされて自分を奮い立たせ、走り切ることができました。モチベーションを上げる、そのための雰囲気を作ることがやはりとても大切だと感じました。

 ある米系企業に訪れた際に多くのゲームが並び、取り放題のお菓子がいろいろ置いてあることに驚いたことがあります。その企業では仕事が行きづまったり、気乗りしなかったら、遊んだり、お菓子を食べてリフレッシュしていいそうです。一見不謹慎に見えますが、楽しいと思えたときに人はいいアイディアが思い浮かび、モチベーションが上がる、ということを分かっているのです。

 人は感情のある生き物で、気分や雰囲気に左右されるもの。話しやすく、働きやすく、やる気が起きる雰囲気をつくる。これもビジネス活性化のためにはとても大事ではないでしょうか。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


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