返事は24時間以内に、信頼関係は時間をかけて――コミュニケーションとスピードグローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(2/2 ページ)

» 2012年05月14日 08時00分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]
前のページへ 1|2       

 なお、コミュニケーションにおいてスピードが求められるものとして、ミスをしたときや業務上の問題が発生したときが挙げられます。何かミスをしたときにはできるだけ早く謝罪する、もしくは何かしらメッセージを発することが欠かせません。

 問題が発生してそれを誰にも伝えずにおくことでより大きな問題に発展することもあります。ミスをしたことで業務に支障をきたしたり、同僚やクライアントに迷惑をかけることが分かった場合、できるだけ速やかに報告し、謝罪することが重要です。

信頼関係は時間をかけて築く

 スピードを求められる時代だからこそ、投げられたボールはできるだけ早く返す必要がありますが、スピードが重視されるからこそ、一方で時間をかけて作っていくべきものもあります。それは信頼関係です。「時間をかけて信頼関係をつくる」ことがコミュニケーションでは欠かせません。

 どんなに役立つことを言葉にしても、相手にとって有益だと思うことを発しても、相手が聴く気がなければそれは相手には伝わりません。自分が発した言葉を聞いてもらうには、長い時間をかけて信頼を得ていることが大切なのです。

 エレベーターテストやエレベータールールという言葉を聞いたことがあるでしょうか。自分のこと(自分の考え、自分がやりたいと思っていること、自分の仕事など)について相手に30秒以内で説明するテストです。エレベーターで会った人に30秒以内で説明することから、このように呼ばれるようになりました。

 30秒で自分のことを話せることが大切ですが、ひとつ落とし穴があります。ある有名外資系企業の日本法人の社長を務めた人が「自分のことを30秒以内に話すことはとても大切。ただそこですぐに決めようと思ってはいけない。30秒話しただけですぐに何かできる、という単純なものではない。ただ、興味を持ってくれれば、また会おう、もっと話を聞かせてくれ、となる。そうなればいいのです」と言っていました。30秒ですべてを決めよう、と思ってはいけません。再度会ったときにじっくりと自分の考えや思いを伝え、相手のことも理解し、信頼関係を築くことでいろいろなことが進んでいく可能性があるのです。

 ものすごいスピードで変化している時代だからこそ、じっくりと時間をかけて信頼関係を築くことが大切です。スピードが求められるコミュニケーションとじっくり時間をかけるコミュニケーション、その双方が求められているのです。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆