職場を襲う、ジェネレーションギャップ海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/4 ページ)

» 2012年05月23日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

伝統主義世代

 1918年から1945年の間に生まれた伝統主義世代は、総勢5200万人います。その中でも年が上の人達は、「狂騒の20年代」を過ごし、年齢が下の人たちは世界大恐慌を10代で経験し、第二次世界大戦で国のために尽くしました。もう高齢であることと、退職時期を迎えた人がいることから、労働力のうち彼らが占める割合はわずか8%程です。しかし、それ以上の人達がボランティア活動に積極的に従事しています。世代の標識には、世界大恐慌、ニューディール政策、真珠湾攻撃、第二次世界大戦、フランクリン・ルーズベルトの死、朝鮮戦争、ポリオ予防用のソークワクチンなどが挙げられます。

 伝統主義世代は、文句を言うことがめったになく、運命論者的な態度をとり、対立を避ける性質を持っています。第二次世界大戦中、数多くの人が軍に入ったり、あるいは軍資金を賄うために働いたりしました。戦後、彼らは復員軍人援護法を利用して高等教育を受け、新しく家を購入し、事業を立ち上げました。多くの人が大手企業に入社し「生涯の仕事」を手にしました。復員軍人援護法は、1950年代に伝統主義世代が生み出すことになる「繁栄と高い期待」のおぜん立てをしました。今、伝統主義世代は70歳代以上になり、確かな経験、確かな裏付けのある知恵、素晴らしい社交術、学習意欲、信頼性、確かな労働倫理を持っています。

 伝統主義世代の人々が、共通の利害に関わっていると感じられていることを確認してください。彼らの知識を引き出し、新しいテクノロジーについて教え、やりがいのある業務を与えてください。現在の雇用主に紹介状を送ってもらうよう要請したり、自社の退職者を再雇用したりして、年配の従業員を雇用してください。一度雇用したら、若い従業員とペアを組ませ、メンターとして活躍してもらってください。また、一対一のトレーニングやサポートを提供してください。これは、新しいテクノロジーを導入する際は、特に重要な事です。伝統主義世代の貢献を重要視していることを示してください。

 ここでは伝統主義世代、つまり、20世紀前半に生まれた人について言及がなされています。確かに、この人たちが育った時代というのは世界中に暗い影が落ちていた時代です。「生きる」ことに非常にどん欲であった世代かもしれません。それゆえに、そうした人たちの経験や考えは見習うべきものだと思います。

ベビーブーム世代

 米国の出生率は1946年から1965年の間に急激に上昇し、米国史上最大の人口層となりました。この世代をベビーブーム世代と呼びます。彼らの世代標識は、ケネディ大統領の暗殺、公民権法、人類初の月面着陸、ウッドストック・フェスティバル、ウォーターゲート事件、オイルショック、ジョン・レノン殺害、初代マッキントッシュ・コンピューターの発売などです。

 ベビーブーム世代は、人生の意味を見出そうとし、権威者に異議を唱え、より良い世界を求めています。1950年代を通して公立学校は混雑し、彼らは学校で共有することとチームワークの重要性を学びました。また、テレビの出現によって世界観が広まり、公民権運動によって、人種差別をなくそうとする動きが活発化しました。さらに、ベトナム戦争とウォーターゲート事件が原因で、彼らの多くが政府への信頼を失いました。反体制主義のベビーブーム世代は「ヒッピー」と呼ばれていましたが、やがて「ヤッピー」へと姿を変えました。ヤッピーとは、改革主義の価値観を捨て、資本主義の恩恵を手にした人達を指します。

 ベビーブーム世代の人々は、貴重な人材です。多くの人が、従来の退職年齢に達しても仕事を続けるつもりでいます。彼らには気を配るべきですが、細かいところまで管理したり、能力を抑制したりしてはいけません。彼らにX世代やY世代を指導し、育成してもらいましょう。

 年配の人は仕事をつまらないと思うことがあるため、彼らの創造力に訴えかけることが重要です。新しいプログラムや手順に関する継続的なトレーニングを提供してください。また、ボランティア活動を共同提案することで、彼らの社会に貢献したいという欲求を満たしてあげてください。彼らより若い管理者は、彼らの持つ年功序列の意識を尊重しましょう。有意義なプロジェクトを立ち上げることで、彼らの強みと能力を引き出してください。そして、彼らの知識や知恵を手に入れることで、彼らが退職することで会社に起こる「頭脳の流出」を最小限に留めてください。

ベビーブーム世代、この時代の背景には、高度成長期に伴うテクノロジーの技術革新があり、それらを支える人との共生や協同も存在していました。ここにこそ、その時代とともに生きてきた人々のものの見方や考え方が現代に必要とされる貴重な因子が存在しているということなのでしょう。

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