なぜ日本はルールメーカーになれないのか?ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2012年06月07日 08時00分 公開
[藤井敏彦,ITmedia]
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グローバルなルール思考

理念

 ルールは理念を実現するために作られる。自由貿易、人権、環境保護、平等、安全などさまざまある。技術規格でさえ、安全や利便性といったなんらかの社会的理念の実現のために作られる。「進んだ、優れた技術」が規格になるのではない。

全員参加

 ルールはみんなが作るものだ。政府の専有物ではない。NGOも企業もルールの作り手である。

+S、+Rの経営戦略

 経営戦略の基本は「3C」、自社(Company)、競争相手(Competitor)、顧客(Customer)にある。手段は4つの「P」、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)。4つのPを打ち手として繰り出し、競争相手と戦いながら顧客にアピールしていく。しかし、コンプガチャとお掃除ロボットの教訓は3つのCに加えて「S」、社会(society)も視点に含め、戦略ツールとして4Pに加えて「R」、ルール(Rule)も使わなければならないということだ。「3C+S」であり「4P+R」である。日本の企業はルールは与件とみなしてきた。しかし、欧米勢はRも駆使しながら戦いに臨む。

 ルール作りの基本は、国であっても会社であっても大差はない。ルール作りとは、アジェンダ設定→モデルの提示→幅広いステークホルダーとの対話を通じたモデルの売り込み→ルールへの書き上げ、のプロセスを経る。

 有効なプレーヤーであるためには、自らの理念を持つこと、相手の価値観を理解すること、未来志向が重要である。企業が経営の基本的視点に「社会」を含めるということに他ならない。国家が国際的ルールづくりを行うとき他国の利益を織り込むことが必要であるのと同じである。

 社会を経営の基本視点に取り込むということは「他利の発想」をすること言い換えができる。利益をかけてルールの競争を戦うとしても、「自社がもうかる」という理由を前面に押し立ててしまったらうまくいくだろうか。社益と公共益の関係をうまく消化して昇華できる会社がルールを使えるようになる。

新しいパラダイムを学ぼう

 ユル・ブリンナーが主演し、スティーブ・マックィーンなど超一流の俳優を配した映画「荒野の七人」は黒澤監督の「七人の侍」をメキシコに舞台を移し西部劇に仕立て直したものである。メキシコの農民たちは、収穫期になると毎年やってくる盗賊一味の搾取に苦しめられていた。村の長老は村人に、銃をとって戦おうと語る。銃を買うための資金はここにあると。ちゅうちょする村人達。

 村人「We know how to plant and grow. We don't know how to kill.」

 長老「Then learn it or die.」

 われわれは良い製品の作り方は知っている。しかし、ルールの作り方はよく知らない。既存の秩序の下で戦うことに長けているが、秩序を変えることは得意ではない。そうであれば学べばよいだけだ。

 品質と技術革新が成功を保証するというパラダイムは過去のものになりつつある。自ら秩序を変革する新しいパラダイムを学ぼう。もちろん、その気になれば難しくない。われわれは公共心に富み、明日の社会を形作る意志を有する国民だからである。

著者プロフィール:藤井敏彦

経済産業省資源エネルギー庁長官官房エネルギー交渉官

1987年、経済産業省(当時通商産業省)に入省後、G7経済サミット、APEC、及び構造改革を含め、様々な国際及び国内政策分野に従事。2000年から2004年にかけては、ブラッセルに拠点を構えたNPO法人在欧日系ビジネス協議会事務局長を担当し、環境、社会及び通商政策といった幅広い分野で、対EUロビイストとして活動。

2004年に帰国し、貿易救済措置調査当局の長を3年(2004-2007)勤めた後、通商機構部の参事官、その後総括参事官として、WTOドーハラウンド交渉及びWTO紛争解決を担当(2007-2011)。現在は、経済産業省資源エネルギー庁長官官房エネルギー交渉官として、原子力エネルギーに関する国際協力、鉱物資源の安定供給を含む資源エネルギー政策の国際的側面を担当。


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