人事考課ハンドブック海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

» 2012年06月13日 08時00分 公開
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管理職が犯すエラー

 しっかりと訓練を受け準備を整えても、管理職は人事考課に関する判断を誤ったり、報告書に書くことの判断を間違ったりすることがあります。次のようなエラーは避けてください。

人事考課に於いて特に危惧するエラーとは?

 ・ハロー効果:対象者の顕著な特徴に引きずられて、全体的な評価が歪められること

 ・ホーン効果:対象者の好ましくない特徴によって、意見が歪められること

 ・ヒマワリ効果:平均的あるいは否定的な評価を与えると悪い印象を持たれるので、良い評価を与えること

 ・寛大化あるいは辛らつ化傾向:過剰に寛大な評価をしたり、過剰に厳しく評価したりすること

 ・中心化傾向:公平にするために、全員に中間の評価を付けること

 ・シュガーコート傾向:一対一の面談で指摘した問題点をありのまま報告書に書かないこと

 ・近時点効果:対象者の一年を通した全体の成績ではなく、最近の成果や失敗だけを考慮すること

 ・重大事象効果:1つの出来事だけを考慮し、それがいつ行われたかに関係なく、対象者の良し悪しを評価すること

 ・対比効果:他の従業員の成績に基づいて評価を決めること

 ・先入観エラー:自分と似た対象者に良い評価を与えること

 ・低モチベーション・エラー:例えば、対象者のボーナスが人事考課によって決まる時などに、誠実に評価を行わないこと

 ・パスト・アンカリング・エラー:評価対象期間の振舞いではなく、過去の評価結果に基づいて評価すること

 ・サンプリング・エラー:対象者の総合成績ではなく、その一部しか評価しないこと

 ・可変的評価基準エラー:評価に一貫性がなく、ばらばらの基準で評価すること

 ・責任転嫁エラー:知らされていない要件を満たせなかったことについて、対象者を責めること

 ・帰属要因エラー ― 対象者の良い成績は外因のおかげだとみなし、悪い結果は本人のせいだとみなすこと

 エラーを少なくするには、管理職は必ず人事考課用のトレーニングを受け、企業は公正な苦情処理システムを備えてください。もし人事考課がうまくいかなかったら、対象者に本音を話す機会を与え、その言葉にしっかり耳を傾けることが重要です。その時、延々と一方的に話をしてはいけません。特に、対象者が怒っていたり、あるいは反対に黙りこくったりしてしまった場合、対話をすることが重要です。在職期間が長く仕事に慣れている従業員に対しては、自由回答式の質問を投げかけ、正直な意見を引き出してください。

 もし人事考課によって法的争いが起こってしまったら、人事考課の正当性を証明できなければなりません。つまり、念入りに記録し文書化しておかなければならないということです。そうすることで、自身の一貫性を客観的に証明することができます。

 また、米国では、従業員を「人種、肌の色、年齢、性別、宗教、国籍、妊娠の有無、障害の有無」で差別することは違法とされています。地元の州の雇用法について常に最新情報を得るようにしてください。過剰に良い評価を与えることも止めましょう。なぜなら、過剰に良い評価を与えると、将来人員整理が必要になった時に、やりにくくなる可能性があるからです。

 米国では、差別を受けたことで法的措置を取る場合には、次のことを証明する必要があります。(1)公民権法における保護対象となっていること、(2)上司が「不利な雇用行動」を強いて来たこと、(3)保護対象者以外の従業員に対する上司の態度と自分への態度が異なること。好ましくない評価は必ずしも不利な行動とは言えませんが、従業員が、好ましくない評価結果によって雇用状態が著しく変化した(例えば、左遷や解雇など)と証明できた場合、裁判所は、それを告訴する理由と見なす場合があります。

 人事考課について管理職が犯すエラーが危険である事を認識すべきです。ここではそのエラーについて、具体的な明記がありますので、是非参考にしてください。いわゆるパワーハラスメントとして問題にされる可能性もあるのではないでしょうか?

著者紹介

シャロン・アームストロングは、「Stress-Free Performance Appraisals」の共著者です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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