検討しますという日本人、すぐ決める外国人グローバル時代を生き抜くスマートリーダー術(2/2 ページ)

» 2012年08月01日 08時00分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]
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10年の変化が70年の発展を覆す

 少し前になりますが、New York TimesのコラムニストであるThomas Friedman氏は「Average is Over」(1月24日)という記事を書いていました。

 そこで彼は次のように述べていました。

新しいテクノロジーはこれまでも人の多くの仕事を奪ってきたが、これからもそうなるはずである。馬がずっと支持されていたら、車は生まれなかっただろう。ただし、2000年から2009年の間はその変化のスピードがかなり早く、過去の70年に得たものをすべて消してしまった、製造業の仕事の3分の1、600万人の雇用がアメリカで失われた。レストランではウェイターやウェイトレスを使う代わりに、iPadを使ったサービスを導入したところもある。ドレッシングを多めに、ベーコンは固めに、など細かい注文ができる。

いつの時代に変化はあるし、新しい仕事や製品、サービスが生まれる。けれど、ひとつはっきりしているのは、グローバル化とIT革命によって、「ベストな仕事」というのは、平均以上のスキルを持った人しかできず、その教育が必要である。


 10年間の発展が70年で得たものをすべて覆してしまった。恐ろしいようですが、それが現実なのです。

検討しますという日本人、すぐ決める外国人

 留学生や弊社で働いている外国人の担当者がよく言うのが、「検討します」という言葉にとまどうということ。「この企画について考えてくれますか」と言い、考えて提案書を持参するものの、「検討する」と言ったきりそれについて全然返答がないのです。

 「検討の時間」が必要だとは思いますが、一方で、上でも記したように凄まじい勢いで世の中が変化する時代。そのときに「検討します」と数週間放っておくほどの余裕はないはずです。ただ、検討するという言葉は基本的には否定的な意味を含んでいるという人もいますが、それならばその場で「検討するがおそらくむずかしいだろう」と率直に言ってほしいと、彼らが口を揃えて言います。彼らの国では、その場でやるかやらないかを決めるし、脈がないならば、その場ではっきりとそのように言うそうです。

 わたし自身は何かを依頼した際、むずかしいだろうと思うときにはその場ではっきりと伝えるようにしています。ただすぐに結論が出ないこともあるので、週に1回、2週に1回などと決めて、できるだけこまめに進捗を伝えるようにしています。どんなに小さなことでも何か進展があったら、できるだけこまめに伝えるように心掛けています。ちょっとしたことでも評価を聞けるだけで人はやる気が起こりますし、頑張りたいと思うものです。

 以前聞いた話ですが、有名企業はスピードを武器にするということを徹底しています。ある試作品を10日で作ってほしいと言われたときには、5日で仕上げてクライアントのところに持っていき、いろいろ要望を聞いたうえで修正、10日目には先方が満足のいくものが出来上がります。納期通りとはいうものの、10日目になって試作品を持ってきた企業は太刀打ちができないのです。

 カルロス・ゴーン氏が先日講演で来たのですが、彼が言っていたのは、「グローバリゼーションをしたかどうかは問題ではない。グローバリゼーションはすでに終わったプロセス。どのようにグローバリゼーションをポジティブなものにするかが問われている」と言っています。

 めまぐるしく変化する世の中に対して自分なりに課題を見つけて考え、主体的に行動し、世の中を変える――そんな気概が求められているのではないでしょうか。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を生かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月からは慶応義塾大学メディアデザイン研究科でも学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


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