イジメと虐待から子どもを守るために――企業経営の視点に立て生き残れない経営(1/2 ページ)

企業で重大な事故が発生した場合「知らなかった」とか「連絡が漏れた」ということが許されるだろうか。社会的制裁を受け、やがて淘汰されることは間違いない。当事者には、企業経営のような厳しさを求めたくなる。

» 2012年10月22日 08時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 子どものイジメや児童虐待が頻発し、それをニュースで知るたびに心をひどく痛める。将来ある子どもたちが苦しんでいる。私たち大人は、単なる評論家を決め込むのではなく、事態に真剣に立ち向かい、敢然として解決に当らなければならない。

 それにしては、当事者たちの姿勢は甘すぎる。企業経営では考えられないことである。イジメや虐待に対する関係機関の今迄の対応では、もしそれが企業であるなら社会の批判を浴び、株価下落、ブランド価値失墜、不買運動などの社会的制裁を受け、企業はやがて淘汰されることは間違いない。当事者には、企業経営のような厳しさを求めたくなる。イジメや虐待の実態をどう捉え、どう対応すべきか検討する。

 世の中一般的にはイジメがあると、まずイジメた側を批判する。児童虐待があると、まずは親に批判の矛先を向ける。それでは、何の解決にもならない。なぜなら、集団には人間同士の摩擦は避けられず、子ども同士のイジメも、刑事事件的イジメは別にして、遊びやコミュニケーションの行き違いをきっかけにして必ず起こるものである。起こした当人たちを責めても、何も得られない。児童虐待も、それを起こす親はほとんどの場合正常の精神状態ではなく、精神を病んでいる。そこに親を責めても、やはり得るところはない。

 一方で、昨今一般的にとられている対策も、やらないよりはやった方がよいという程度のものである。まず、文科新大臣の記者会見時のイジメについての質問への回答である、「人間は金太郎飴ではダメだ。多様性を重んじなければならない」(TV放映)。これは、ある瞬間の回答だが、それにしても十分予想される質問だから事前に相当考えている筈である。それにしては、何を言いたいのか、何を考えているのか皆目分からない。そもそもこの発言内容は、イジメと何の関係があるのか。むしろ、イジメはダメと一律に教育せず、多様性を重んじて野放図にしろとでも言いたいのだろうか。新大臣当てにならず、である。

 さらにイジメ対策の例として、都品川区教育委員会がイジメ加害者を出席停止にする制度を本格運用する例、「24時間イジメ相談ダイヤル」を設置し、子どもたちからの電話相談を休日も含めて24時間対応する体制を全都道府県と指定都市教育委員会が敷き、小中学校、特別支援学校の全児童生徒に電話相談窓口紹介カードを作成配布する例などが見られる。

 次に、児童虐待について一般的にとられている対策である。例えば、日本子ども虐待防止協会の小林登会長は「孤立無援の母親だけの育児は、虐待を生む大きな原因。母親を責めるのではなく、子どもとのきずなが十分にできるよう、優しく勇気づける周りの環境が大切だ」と強調する(神戸新聞 WEB NEWS)。言っていることは正しいが、それを必ず実行する手段を講じないで明日から何が変わるのだろうか。

 さらに例えば、川崎市では児童相談所に通告があった場合、市が48時間以内に被害児童を目視確認することを基本とし、虐待を受けた児童が市外に転出する場合は転出先自治体に情報提供を行うとしており、これは優れた取り決めだが、残念ながら罰則規定がない。

 あるいはマスコミは、例えば「親から虐待を受けた児童を家庭に帰すのは親子関係を再構築する第一歩だが、それで問題が解決するわけではない。再発リスクは高いといわれており、児童相談所だけでなく市町村や学校、地域など社会全体で支えていく必要がある」と主張する(毎日新聞2012.10.7.)が、それは誰でも知っていることでどう実行するかだ。

 以上の一般対策例は、いずれもやらないよりはやった方がよいという程度であって、部分的対策であり、イジメを隠したがる子どもたちが果たして自発的に電話をかけてくるか、閉鎖空間で虐待を続ける親が外と接触するかなどと考えると、いずれも根本対策になるとは思えない。しかし、否定はしない。一般的対策も必要である。

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