連載
» 2013年01月25日 07時00分 UPDATE

松浦尚子のワイン&コミュニケーション:日本が誇る今をトキメク2つ星フレンチレストランで楽しむワインと料理

細やかな配慮と料理に対しても突き詰めて向かう姿勢が注目される理由。

[松浦尚子(サンク・センス),ITmedia]

 昨年12月、当社恒例のノエルワインパーティーを六本木で話題の「Restaurant Ryuse(リューズ)」で開催。フランス料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏の流れをくむ、飯塚隆太シェフ率いる注目のレストランです。予約時にはミシュランガイド1ツ星でしたが、ちょうど11月下旬に行われた2013年新格付けで2ツ星に昇格。お店入口横にはグルメ雑誌や富裕層向け機関誌から届いたお祝いの胡蝶蘭が目を楽しませ、OPENから2年足らずにして一気に階段を駆け上る上昇気運の勢い、華やかな雰囲気が漂っていました。

 この日アミューズ、前菜3皿、魚料理、肉料理、そしてデザートというフルコースに、5種類のフランスワインをマッチング。事前にソムリエと相談しながらほぼ一つの料理に一つのワインを選びます。ただし、その日の仕入れによって食材が変わるため正式にワインが決まったのは前日。構成はシャンパン、白2種、赤2種。赤をお客様から不動の人気を持つブルゴーニュ、ボルドーという王道にし、その分白ワインで遊び心を出すことにしました。また、順番や全体バランスから魚料理にブルゴーニュの「ピノ・ノワール」による豊かな果実味と酸味が特徴のワインを合わせるため、ソースを工夫してもらうことにしました。一皿一皿に合わせた上で全体の流れも考えたワインを楽しめるのは、こうした複数名で集うパーティーの大きなメリットの一つです。

 乾杯のシャンパンは、Deutz Brut Classic N.V.(ドゥーツ・ブリュット・クラシック)。フランスに住んでいたときに某雑誌の同行取材で訪ね、センスが際立つ豪奢な迎賓館、貴族的な品の良さを感じる老紳士に案内された思い出に残るメゾンです。ちまたで目にする機会が少ない銘柄かもしれませんが、洗練された上質な味わいは一度試す価値があるでしょう。

 そして1本目の白は、Condrieu "la Galopine" 2009 Delas Freres(コンドリュー ラ・ギャロピン ドゥラス・フレール)。コート・デュ・ローヌ地方からは赤以外飲んだことがないという方に発見してもらいたい非常に個性豊かな白。1皿目の前菜、活〆真鯛のカルパッチョ仕立てを長茄子のマリネに乗せた料理はコリアンダーの香りがアクセント。そこにヴィオニエを100%使った華やかな香り、フローラルさやエキゾチックフルーツのニュアンスが楽しめる余韻の長い特別な一本を合わせ、なかなかの相性でした。

 2皿目の前菜は、シェフのスペシャリテ「肉厚椎茸のタルト仕立て」。シェフの出身地である徳島県特産の「しいたけざむらい」を用いたシグネチャーディッシュ。運ばれてきた時には皆一瞬、これは何だろうと首をかしげたほど肉厚なしいたけ。カモ肉と見間違うほどでした(笑)。豚肉の脂肪を含む部位を塩漬けにしたラルドやその薄いベールなどを何層かに重ねた複雑なハーモニーが口の中で溶けあう絶品。ラルドとしいたけの濃厚な旨みが強烈な印象を残します。

 ワインは、変わり種でJurancon Sec 2007 Clos Lapeyre(ジュランソン・セック クロ・ラペイル)という南西地方からの辛口タイプを。アルコール発酵の後、澱とともに春まで熟成させることで酵母の旨みが溶け出し、独特の香りや味わいを持ちます。ピレネー山脈から40Km、大西洋から100Kmに位置するスペイン寄りの小さい産地。実際にわたしが産地を訪問した際には甘口タイプにフォアグラを合わせる郷土料理が続き、贅沢が続きすぎやや辟易したほどでした。料理のコクとややさっぱりした辛口ワインが好相性でした。

 最後の肉料理、「蝦夷鹿のポワレ ソース ポワヴラード(黒コショウのこと)」には、ボルドーの銘醸地メドック地区ポイヤック村から。近年その実力から人気が高まり、価格が一気に上昇しているChateau Pontet-Canet 2007(シャトー ポンテ・カネ)を。2007年ヴィンテージのポンテ・カネは、他の同村のワインと比較してもより長熟向けに造られ、しっかりした骨太の味わいでした。デャキャンタに移してもらい、空気に触れさせてよりよくハーモニーを楽しむことができました。後にシェフに聞いたたところ、肉料理に取り掛かる前にこのワインを味わい、それに合った仕上げをしてもらったとのこと。細やかな配慮と一組のテーブルの料理に対しても突き詰めて向かう姿勢が、星付きレストランに選ばれ注目される理由なのだと感じました。

 飯塚シェフとは偶然にも共通の知り合いが多いことも分かり、また近くお邪魔したいと思います。格式の高さのなかにも温かみあるサービスが心地よいリューズ。シェフの気さくな人柄が料理、サービスに如実に表れることを実感したひと時でした。星付きレストランは肩が凝ると敬遠する方には、初回はランチタイムがお得ですし、気持ち的にもリラックスできておススメです!

 最後に。5年半に渡り連載をしてきたワインコラムですが、今号をもって最終回になります。これまでご愛読くださった皆さまに心からの感謝の気持ちをお伝えします。皆さまのビジネス、プライベート上にワインがあることで、より豊かで楽しい時間になりますよう。ますますのご活躍を心より祈念しています! 長い間、有り難うございました。

著者プロフィール

松浦尚子

(有)サンク・センス 代表取締役社長

ボルドー国立大公認ワインテイスター

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神戸大学教育学部卒。教育・出版会社ベネッセコーポレーションに勤めた後、フランスに渡り、世界の権威であるボルドー大学ワイン醸造学部が主宰する、日本人では数少ないワインテイスター専門家資格を取得。広島県の第3セクターのワイナリー設立にかかわり、米国・ボストンを本拠地とする投資会社に籍を置いて、日仏間で働く。通算5年間フランスに滞在した後、2002年秋に帰国。滞在中には、難関フランス文部省認定のフランス語資格試験DALFも全て取得する。帰国後、2003年4月に有限会社サンク・センスを設立し、代表取締役に就任。「フランス、ワイン、食」をテーマに、さまざまな切り口からこれまでにない発想でワインセミナー、イベントを中心にプロデュースを行う。2005年1月に立ち上げたサンク・センスワインCLUBには、ワインを軸に旅やグルメ、趣味など幅広い分野に関心を持つメンバーが集い、これまでにない質の高いコミュニティを形成している。また、フランス大使館主催事でのプレゼンターや六本木ヒルズクラブでのワイン講師、経営者を中心としたビジネスマン向けのワイン講演も数多くこなし、実績は多数。これまでに取り上げられた新聞、雑誌、ラジオ出演は数え切れない。富裕層向け雑誌や、大手都市銀行が運営するビジネス情報サイトなどでコラム連載も手掛け、多彩に活躍している。


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