IT投資の効果を実感するには首尾一貫した取り組みが重要NTT DATA Innovation Conference 2013リポート(2/2 ページ)

» 2013年03月06日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 もう1つの要因として、米国に比べてIT部門の体制の弱さを指摘する声もある。米国企業では、IT戦略やシステム企画などの上流工程において、ユーザー側が主導権を握っていることが多い。一方、日本企業では、上流工程にITベンダーが関わっていることが多く、この部分の体制の弱さが首尾一貫した取り組みを困難にしている。

 萩野氏は、「首尾一貫した取り組みは、社内にとどまらず、国内展開やパートナー展開においても同様。グローバル企業は、グローバル展開においても推進しなければならない」と話す。

 グローバルにビジネスを展開しているある製造業のサプライチェーン管理では、業務ルールやコード体系が拠点ごとに不一致のため、販売機会の損失や不適正な在庫、硬直的な生産計画などの課題を抱えていた。

 そこで、システム統合はもちろん、業務ルールやコード体系を統一し、首尾一貫した取り組みを推進することで、グローバルでの迅速な需給調整を実現し、機会損失を低減し、数十億円の在庫削減を実現している。

世界の知恵から学ぶ

 企業に求められる取り組みの横軸に、標準業務プロセスの策定や標準システムの実装などの「首尾一貫した取り組み」の進展度合い、縦軸に、国レベルやリージョンレベル、グローバルレベルなどの「地域的な展開の進展度合い」を定義した場合、先進的なグローバル企業は、例外なく標準ビジネスプロセスの実践とグローバルレベルが交わる右上を目指す、あるいは右上に達している。

 先進的企業が右上を目指すのは、グローバルレベルでの一貫した迅速な意志決定が必要であり、グローバルでIT統制を徹底する必要があるためだ。またグローバルレベルでのスケールメリットの享受や環境激変時の迅速な方針変更なども要因のひとつだ。

 具体的な取り組みとして、まずグローバルIT統括組織を中核に、ITマネージメント標準ルールを策定し、それを拠点に展開、順守する、そしてまた標準ルールを策定するというPDC(Plan、Do、Check)ライフサイクルを実現する必要がある。

 「このPDCライフサイクルを運用するには強力なリーダーシップと粘り強く運用を継続していくことが重要になる。IT投資効果の実感が薄い負のスパイラルから、IT投資の効果が実感される正のスパイラルに移行するためには、システムやプロセス、人、組織などに対する首尾一貫した取り組みを実現し、企業の成長につながる新規IT投資を拡大しなければならない」(萩野氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆