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» 2013年04月15日 08時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:M2Mで日本が世界に先駆けるために必要な「視点」と「戦略」 (1/2)

2013年2月27日に開催された「第23回ITmediaエグゼクティブフォーラム」において、基調講演を行った独立行政法人情報通信研究機構執行役の富田二三彦氏は、「M2M/IoT:スマートコミュニケーション社会で世界に先駆けるビジネス戦略」と題し、M2Mに関連して世界各国で進められている「標準化」の取り組みの現状や、それに対して日本のメーカーやサービス事業者はどのようなスタンスでかかわっていくべきかについての提言を行った。

[柴田克己,ITmedia]

 ITシステムのクラウド化、無線ネットワークの一般への普及、多種多様なモバイルデバイスの浸透といった要因から、B2BとB2Cのいずれの分野においても「M2M(Machine to Machine)」による新規ビジネスの開拓が注目を集めるようになった。

 2013年2月27日に開催された「第23回ITmediaエグゼクティブフォーラム」は、「ビジネスを変革するM2M−日本企業は再び取り残されるのか」というテーマののもと、各国で進んでいるM2Mに対する標準化の取り組みや、国内事例などが紹介された。

国際ビジネスと不可分の「標準化」を日本はどうとらえるべきか

130415tomita.jpg 富田二三彦氏

 基調講演では、独立行政法人情報通信研究機構執行役の富田二三彦氏(当時)が「M2M/IoT:スマートコミュニケーション社会で世界に先駆けるビジネス戦略」と題し、M2Mに関連して世界各国で進められている「標準化」への取り組みの現状や、それに対して日本のメーカーやサービス事業者はどのようなスタンスでかかわっていくべきかについての提言が示された。

 富田氏は冒頭、世界規模のICT市場、家電市場が拡大する中で、日本製品のシェアが低下をたどっている現状について言及。その一方で、シェアを維持しながら推移している企業の例として「インテル」を挙げた。この両者の違いは、ブラックボックス部分や知財を確保しながら、周辺機器との規格の標準化を推し進めた「プラットフォーム」の提供者か、標準化によりオープンになった市場の中で国際的な価格競争にさらされた「周辺機器メーカー」にとどまったかにあるという。この例からも、「知財と標準化と研究開発の総合的な戦略に真剣に取り組まなければ、また日本は同様の失敗を繰り返す」と富田氏は指摘する。

 国際的な「標準化」の取り組みとしては、欧州を中心に1800年代後半から始まった、ITUやIEC、ISOといった公的な標準化機関による「デジュール標準」の流れと、それに対抗する形で主に米国発で発達してきたIEEEやIETF、OMAなどの、市場形成の速さを重視した「フォーラム標準」などがある。こうした「フォーラム」の形成は、特に1900年代後半以降、技術革新のスピードが早い情報技術、情報通信の分野で盛んに行われるようになった。

 デジュール標準とフォーラム標準には、それぞれの過程に基づく特徴がある。富田氏は「デジュール標準は、厳格な国際標準である点、レギュレーションの確かさ、公平性といった点でのメリットがある。一方で、フォーラムは標準化までのスピードの速さやビジネス面でのリターンという点でデジュール標準に勝る。それぞれの特徴をうまく利用していく戦略が重要になる」とした。

 こうした標準化の動きには、もちろん各企業がビジネス面での戦略を持って参画している。富田氏は、欧州のムードとして「伝統的なアーキテクチャ先行の標準化の文化の中で、正当な意義を主張しつつ、手堅い収益意識を持って参画」、米国のムードについて「自由な発想と"公称"オープンな環境でビジネスを展開する」と評している。その中で日本を含むアジア各国は「最初の段階から、国際ビジネスと国内ビジネスの双方を考慮した上で、国際標準化をツールとして賢く使う意識が必要だ」とした。

M2Mビジネスが発展可能な「土壌」はどこにある?

 富田氏は、日本におけるM2Mビジネスが発展する土壌として、「スマートグリッド、スマートシティ」「モビリティ(乗り物)」といった分野における、日本が先行する業種別情報通信のテーマを挙げる。

 スマートグリッドやスマートシティについては、2011年に発生した東日本大震災によって露見した、電力インフラや情報インフラが抱える課題に対して、多くの改善余地が残されている点に触れ「ICTによって、便利さ重視の社会から、持続的に豊かさと幸せを実現できる社会を創っていく」という視点が重要だとした。

 またモビリティシステム分野においては、中国で「電動バイク」が急速に普及している点に触れ、新興国における新たな市場の拡大が、新しいモビリティシステムに取り組みやすくなっている点を指摘。2030年には、中国、インド、インドネシア、アフリカといった新興ユーザーを中心に、従来よりも大幅に安価で、動力として電気も使い、ネットなどへの接続が可能な自動車、バイクが多数派になっているのではないかとの予想を示した。こうした変化は「業界再編のトリガーになる可能性があるだろう」とする。

sekainokuruma590.jpg 世界の車全体像

 このモビリティの分野では、これまでもITSやASVといった形で、社会インフラとしての視点から政府主導での整備の取り組みが行われてきたが、今後、燃料の電力化やシステムの電子化が進むに従い「動くネット端末」「公道を走るロボット」といた視点で自動車やバイクがとらえられるのではないかと富田氏は言う。この分野については、既に運転者と車載器間の情報流通インタフェースである「Drivers Distraction」で標準化の動きがあるという。

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