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» 2013年06月20日 08時00分 UPDATE

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:「会社の老化は止められない」――組織の宿命をどう乗り越えるか? (1/2)

人間が成長期に必要だった栄養がある年齢を超えると、余計な体脂肪となって蓄積されていく。会社も成長期を超えるとそれまで資産だったものが負債になっていく。成功体験を捨てることができずに、組織の老化は着々と進んでいくのだ。

[細谷功,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 会社は年月を経るにつれて、肥大化するとともに会議やルールが増え、業務の非効率な側面が大きくなっていきます。こうしたいわば「会社の老化」はなぜ起きるのか? どうすればそれに対策ができるのかを組織のメカニズムを解明することで説明していきます。

「会社の老化」の症状

130620book.jpg 会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論

 皆さんの会社では以下のようなことが起こっていないでしょうか?

  • 報告と連絡のみの定例会議が多く、創造的な業務時間が浸食されている
  • 組織の階層や部門の数が増殖し、膨大なコミュニケーションコストがかかっている
  • 承認プロセスが複雑化し、わずかな経費の承認にすら「スタンプラリー」が必要である
  • 業務の外注化が進み、社員の仕事が外注先の管理が中心になって「業務の空洞化」が進んでいる
  • 規則やルールが増殖し、ほとんど使われないものもなくなることはない
  • 意思決定に多数の関係者が介在し、初めは尖っていたアイデアが凡庸なものになる
  • ブランドが確立されていく一方で、それに頼って仕事をする「依存型社員」が増える
  • 「顧客第一」をうたっていながら、社内政治や内部調整などの「内向き」な業務に多大なエネルギーが費やされている
  • 「イノベーション」を標榜していながら、新しいアイデアは「実績や前例がない」とつぶされ、「できない理由」を挙げるのが得意な社内評論家が繁殖している

 これらの症状は、業界によらずある程度の歴史と規模を持った会社であればほぼ例外なく当てはまる事象です。これらの事象によって組織は非付加価値業務に労力を割き、新しい価値を生み出していく活力がそがれていきます。しかもこうした現象は一度起こり始めたら、基本的に自然に進行して行くことはあっても、よほどの覚悟を持って取り組まない限り、時計の向きを逆にして後戻りさせることは容易なことではありません。

なぜ会社は「老化」するのか?

 こうした現象はある意味であらゆる組織が持っている「宿命」とも言えます。それは、人間が営む組織が本質的に持っている「不可逆性」、つまり一方通行で後戻りができないという性質によります。

 世の中にはこうした「不可逆性」がさまざまなところで見られます。

  • 急行や特急の停車駅は増えることはあっても減ることはほとんどない
  • 車のサイズはモデルチェンジのたびに基本的に大きくなっていく
  • 部屋は自然に散らかっていくが、自然に片付いていくことはない
  • 川底の石は年月とともに丸くなっていく
  • 異なる液体をまぜると、自然に均一に広がるが、再び分離されていくことはない

 これらの共通点は、一方向には自然に起きるが、逆方向はそれなりの覚悟と外からの力を使わない限り自然には起こりません。

 組織にもこうした不可逆性がさまざまなところで潜んでいるために、全体としても不可逆なものになるのです。組織の不可逆性には大きく物理的な不可逆性と心理的な不可逆性があります。

 物理的不可逆性というのは、人間以外のすべての物理的現象が持っている不可逆性のことで、先述の例でいえば、「石は丸くなる」とか「混ざったものは分離できない」といったことです。部屋が自然には片付かないというのも広い意味で言えばこの物理的な不可逆性ということになるでしょう。この他にもものごとは複雑化し、平均化するというのがこの物理的な不可逆性によるもので、組織が複雑になり、平均的な人材が多くなっていくというのが会社での具体的な現象としてあてはまります。

 もう一つの重要な側面は人間が本質的に持っている心理的な不可逆性です。それは「一度得たものは手放せない」とか「増やすのは簡単でも減らすのは難しい」、あるいは「楽な方向に流れる」といったことです。例えば先述の会議やルールはほぼ一方通行に増えていくというのはこうした心理的不可逆性に従って起こります。

 これらに加えて老化現象を加速するのが「資産の負債化」という組織が持つ構造的な問題です。ルールが増えるというのは必ずしも悪いことばかりではありません。ベンチャー企業が成長して「ちゃんとした」会社になるためには「組織立った」運営が必要になります。組織立ったとは必要なルールが整備されていることであり、それは会社の成長期には必須のものです。

 ところがそれはあるポイントを超えると、組織が硬直的になるとか非効率になるといった負の要素の方が大きくなっていきます。これが資産の負債化です。人間でも成長期に必要だった栄養の摂取がある年齢を超えると、余計な体脂肪となって蓄積されていくように、会社でも成長期を超えるとそれまで資産だったものが負債になっていくことがさまざまな側面で現れるにも関わらず、それに気づく人はあまりいません。

 それはそれまで築いてきた成功体験を捨てることが難しいからです。こうして組織の老化は着々と水面下で進行していくことになります。

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