「顧客接点争奪戦」で高まる情シスへの期待 ── 柔軟かつ堅ろうなITインフラが切り札

景気の低迷もあり、企業はここ数年、IT投資を抑える傾向にあった。しかし、「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」といった新しいテクノロジーの登場は、これまでのビジネス環境を一変させようとしており、それを支える柔軟かつ堅ろうなITインフラの構築がCIOにとって急務となっている。次世代ITインフラを構築するためにはどのようなアプローチを取ればいいのだろうか。

» 2013年08月07日 10時00分 公開
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 「モバイル」や「ソーシャル」は、膨大な顧客の声を日々生み出している。そうした「ビッグデータ」を上手く生かすことができれば、川上の製造業も顧客と直接つながり、より緊密な関係を構築することができる。これまで築かれたバリューチェーンがすぐになくなることはないだろうが、川上/川下を問わず、業種を超えた顧客接点の争奪戦が一斉に始まっており、CIOや情報システム部門にはさまざまな期待がプレッシャーとしてのしかかっている。また、多くのCIOはコスト削減一辺倒では期待にこたえられないと考えており、次にどの分野に投資すべきかを模索している。新しいテクノロジーを取り入れ、短期間で最適化し、柔軟かつ堅ろうなITインフラをどのように構築していけばいいのか。日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業 ITSデリバリー担当 執行役員である小池裕幸氏は次のように話す。

日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業 ITSデリバリー担当 執行役員 小池裕幸氏

 「景気の影響もあり、ここ数年間は多くの企業がIT分野も含めた投資を控える傾向にあった。例えばストレージ容量が足りなくなっても必要なものだけに最小限の投資を行い、全体のコスト削減に取り組んでいる。しかし今後の傾向として、売り上げや利益を伸ばすことに貢献できるITへの投資を増やそうという動きが出始めている」(小池氏)

 CIOに対する期待は、いやがうえにも高まってくるが、モバイルやソーシャルといった新しいアプリケーションは、ユーザー数が桁違いに多いし、デー タも膨大かつ多様で更新頻度も高い。取引を処理し、確実に記録してきた従来の情報システムとは大きく異なる仕組みが求められている。記録に重きを置いた従来の情報システム「Systems of Record」に対して、顧客との緊密な関係を構築するための新しいシステムは「Systems of Engagement」と呼ばれている。

 「Systems of Engagementは、次の投資分野であり、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド(SMAC)を融合することで、ビジネスの変革に貢献するチャンスがある。短期間にアプリケーションを作る、短期間に顧客接点を増やす、短期間に効率を向上するなどの取り組みは、ITが得意とする分野であり、これがSystems of Engagementにつながる」(小池氏)

本格的に動き出したITインフラの変革、どうアプローチ?

 一方、アプリケーションを支える基盤に目を転じると、その管理のあり方、最適化に注目が集まっている。これまでは部分最適でシステムが導入され、アプリケーションごとにITインフラが構築されてきたためサイロ化してしまい、性能の劣化、管理コストの増大につながっていた。また、現状のままでは複数のテクノロジーを管理しなければならないために、スキルトランスファーや人材育成も困難だからだ。

 「多くの企業はITインフラの現状を変革していかなければならず、そのためにはどのようなアプローチをとればいいのか、という大きな課題を抱えている。大規模システムを構築している企業では、老朽化したITインフラを再構築する場合に、グループ全体の効率化を目指したITインフラの構築が求められている。この数年間は、こうした要望はあるものの、あまり積極的に推進されてこなかった。しかし、景気の回復に伴い、そうした動きが見え始めている」(小池氏)

 米国のCIOは、コストなど目に見える成果が自身の評価ポイントになることから、ITインフラ環境とアプリケーション環境の分離・刷新は、しばしば行われている。この考え方は、大きな変革を伴うが、システムのライフサイクルを考えた場合には、非常に大きな効果をもたらすことが期待できる。

 日本のような部分最適のシステムではサイロ化によって、すべて自社で管理することは困難が伴うことが多かった。したがって先ずは、サイロ化したシステムのOS、データベース、ミドルウェア、アプリケーションを統合し、ITインフラを標準化することで、大きなコストメリットを享受できる。さらにクラウドと管理自動化のテクノロジーへと導入が進めば、より一層の効果も期待できる。

 「これまで多くのインフラに仮想化ソフトウェアが導入されてきたが、それだけではクラウドの実現には程遠かった。今年に入ってアプリケーションや運用管理まで含めた、本当の意味での大規模なプライベートクラウドを構築したいという動きが本格化している」(小池氏)

 業種でいえば、膨大なIT資産を持ちIT予算を使っている金融や公共の分野は、既に動き始めている。規模が大きいだけに、強力なガバナンスを生かしたITインフラ構築は標準化によるメリットを享受しやすい。

 「次に続くのは製造業と流通業だ。製造業はビジネスをデジタル化し、ものづくりとサービスを一体化して、新たな価値を創造することで顧客との接点を構築し、素早い商品開発を実現したいと考えている。一方、小売業は金融と連携することで、カードビジネスを強化したり、ポイントサービスを拡大したりすることで顧客接点の拡充を目指している。Systems of Engagementによる業種を越えた顧客接点の争奪戦が一斉に始まった」(小池氏)

 もちろんベンダーとしてもコストメリットだけでビジネスを拡大することは難しくなる。小池氏は、「新しいテクノロジーの吸収を、イノベーションとともに実現することが重要になる。これまでのやり方だけでなく、お客さまとともに新しいテクノロジーを活用し、新たな価値や競合との差別化を実現する。こうしたチャレンジをお客さまとともに推進したいと考えている」と話す。

 例えば保険業は、常に新しい商品を開発することで新商品を他社よりもいかに早く開発し、短期間で市場投入するかが重要である。そのためには「DevOps」のような開発と運用の連携、ビジネスの改善、ライフサイクル全体の管理、自動化、そして開発チームと運用チームとのコラボレーションなどが有効になる。

 また「IBM Worklight」は、1つのコードから、iPhone、iPad、Android、Windows Phoneなどのスマートフォンやタブレット用にアプリを生成・展開できるモバイル・アプリケーション・プラットフォームだ。このような手法であれば、デバイスごとに アプリケーションを作ることがないため、開発や運用管理を大幅に効率化することができる。

 「開発したアプリケーションを、当初はパブリッククラウド上に迅速かつ低コストで展開し、ビジネスの成長とともに自社で構築したプライベートクラウドに移行することもできる。IBMはOpenStack、 OASIS TOSCA、Cloud Foundryとともに、クラウドのオープン化を進めており、クラウド間のポータビリティを確保できるようにしている。」(小池氏)。

セキュリティインテリジェンスで堅ろうなITインフラを

 堅ろうなITインフラ構築も今後のポイントのひとつだ。

 「セキュリティと事業継続領域(BCRS)への投資も金融や製造を中心に増えている。売り上げや利益に直接貢献するソリューションではないが、企業ブランドイメージに大きく影響するからだ。IBMでもトップランクのリスクマネジメントの一環として位置付けられている」と小池氏。

 しかし、セキュリティはあれもこれもと手を打とうとすると膨大な投資が必要となるため、プライオリティをつけることが重要になる。

 「社内のシステムが持つ大量のログであるビッグデータを分析すれば、異常を検知できるし、結果としてセキュリティに関するシステム投資を最適化できる。これがセキュリティインテリジェンスである」(小池氏)

 セキュリティインテリジェンスの取り組みでは、ログや脅威、脆弱性やリスクに関連したデータを収集、蓄積し、分析するための統一アーキテクチャを提供するセキュリティインテリジェンス製品「IBM Security QRadar」が、日本語対応などが強化され2013年夏に正式リリースされるという。

 「今後ビジネスはさらにスピードが求められ、デジタル化が進み新たな市場や、販売方法も生まれるだろう。ビジネスモデルはITとは切り離せず、情報システム部門が経営に貢献する度合も増してくる。スピーディーな経営の実現には新しい技術を取り入れ、進化や変化への対応が可能なこと、短いサイクルで最適化を続けることが求められる。これからの情報システムは、経営が望んでいることを先回りして提案できるような組織に変わっていくだろう。ITを経営の武器とするために、お客さまと一緒にシステム構築を進めていきたい」と小池氏は話す。

9月10日(火)に開催する「IT Leaders' Vision 2013」では、日本アイ・ビー・エム 小池裕幸氏が登壇し「次世代を見据えたITインフラストラクチャーのアプローチ」をテーマにより詳しい話を聞くことができる。

ほかに、今年、世界最高齢でエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎氏の講演、早稲田大学電子政府・自治体研究所岩崎尚子准教授とアイティメディアの浅井英二エグゼクティブプロデューサーがユーザー企業の経営層やCIO/ITリーダーの皆さまからお話をうかがう2つのパネルディスカッション、「変化するビジネス、進化するテクノロジー、CIOのチャレンジ」をテーマに日本アイ・ビー・エム 下野雅承取締役副社長執行役員の講演を予定している。

 ※本セミナーは終了しております


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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2013年9月10日

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