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» 2013年10月02日 08時00分 UPDATE

Gartner Column:デジタル・ワールドを勝ち残るための方程式――Gartner Symposium/ITxpo 2013のテーマに寄せて (1/2)

これらのデジタル・テクノロジは、「顧客経験価値」を高めるため利活用されるべきだ。世界中のCIOが顧客経験価値を向上させて「競争優位」を確立するためにデジタル・テクノロジを活用したいと考えている。

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

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 このコラムでも、デジタル・テクノロジについて述べてきました。2010年代には、既存の情報システムではなく、新たなるデジタル・テクノロジの時代がやってくると述べてきました。これらのデジタル・テクノロジは、一義的には「顧客経験価値(Customer Experience = CX)」を高めるため利活用されるべきだと考えられています。直接的に顧客に接するテクノロジかもしれないし、CXを高めるビジネス・プロセスを実装するために利活用されるかもしれない。いずれにしろ、ガートナーが実施しているCIO Agenda Surveyの結果からも、世界中のCIOがCXを向上させて「競争優位」を確立するためにデジタル・テクノロジを活用したいと考えていることは確かです。

顧客経験価値とは何だろうか?

 従来、顧客経験価値を向上させるための施策において、「機械化」「自動化」は逆行することが多いのではないかと言われてきました。実際、コールセンターにIVR(自動音声応答装置)を導入すると、放棄呼(オペレータにつながる前に電話を切断されてしまうコール)が極端に増加することが経験的に判っています。IVRを導入する企業サイドでの言い分はこうです。「オペレータにつなぐ前に、IVRで御用の向きを伺っていれば、その領域の専門的知識を有する者を自動的に選択して、お客さまに気持ち良く応対するために導入しているのです。」しかし、本音はこうです。「オペレータの育成ができず(間に合わず)、単一業務だけ間に合わせで教育し、とにかくオペレータデビューさせているから仕方なくIVRを入れているのだ」と。

131003gartner.jpg CIOは、顧客経験価値は最高のITイノベーション機会と考えている

 確かに、全ての業務に精通しているオペレータを教育するのは難しい。企業サイドの論理は理に適っていると思います。しかし、顧客経験価値を向上させることに関しては逆行していると言わざるを得ません。「そもそも、企業はコールセンターをコストセンターと位置付けているところが多い」とは、某アウトソーサーの役員の言葉です。「企業は、顧客経験価値の品質担保のためのコストを如何に位置付けているのか?」という調査をした時に、「そんなことを考えている企業は極わずかですよ。それよりも、とにかく安ければ安いほど有り難いというリクエストばかりがわれわれのところに寄せられます」という言葉に続いた言葉でした。肌感覚的に理解できる気がするのは、読者の方々も同じではないでしょうか。

デジタル・テクノロジはコンシューマライゼーションから始まった

 デジタル・テクノロジを語る上で、ITのコンシューマライゼーションを説明しないわけにはいきません。そもそも、デスクトップ型のパソコンも、ノート型のパソコンも、もっと前ならば日本語ワードプロセッサでさえも、元々は企業や官庁で使うことを想定されて開発された機器でした。これらの機器は開発当初、個人で購入するには清水の舞台から飛び降りる程の金額を出さなければなりませんでした。もちろん、携帯電話も同じです。企業が最初に投資して、量産効果が出てから一般消費者(コンシューマー)に拡がっていったのはご承知の通りです。

 しかし、スマホやタブレット、電子ブック機器などは、残念なことに企業が相手先ではありません。一般消費者向けに開発され販売されそして企業に導入される前に、先に個人が手にしたデジタル機器でした。「順番が違うだけで、そんなに大騒ぎですか?」と言われそうですが、実は、これは大騒ぎをしないといけないほどの大きな変化なのです。双方向通信可能なデジタル機器を一般消費者が肌身離さず持ち歩くトレンドに、企業が追随して自社ビジネスをトレンドに乗っけようとしなければならない時代になった訳です。既に結果が出ているので、こんなことを書いても誰も驚いたりしないでしょうが、企業サイドがコンシューマー機器に対してサービスを提供しなければならないということは、多くの意思決定者である中高年には全く理解できないということなのです。

 「あれは、一部のヲタク達が騒いでいるだけで、当社のビジネスに関係ありません」と言い切ったり、以前のコラムにも書いたが、新しいモノや自身の知らないモノには「危険だぁ」と言って、とにかく頭ごなしに反対したりする輩もいます。以前は、企業向けに開発された機器が消費者に拡がったのですが、今般のデジタル・トレンドは、一般消費者が先にきています。企業のIT部門の耳にデジタル機器の流行の声が届く頃は、世の中が既に変化してしまっているのです。

消費者のデジタル機器を自社ビジネスに使う

 顧客が保有しているデジタル機器を、自社のビジネスに有利なように使う。これは、企業エゴを助長しているような言葉のように聞こえるが、実はそうではありません。もちろん企業の勝手なプロモーションや、極端な宣伝活動に使われるようなアプリが氾濫すれば消費者離れも起きるでしょうが、SNSなどで消費者が自由に発言し企業・サービスを評価する時代には、そのようなことはタブーであることが、読者の皆さんも理解できると思います。

 では、何をするのか? 「この会社(サービス)は、気が利いているなぁ」「そうそう、今、この時に、この連絡が欲しかったのだよ」「心地よいサービスだなぁ」などと、評価してもらえるようにデジタル機器を使うのです。もちろん人海戦術ではなく、自動化・機械化したから可能になったサービスとして使うのです。

 顧客が保有しているスマホやタブレットは、実に多くの魅力的なリソースが配備されています。高解像度のデジタルカメラをはじめ、GPS、加速度センサー、カラー液晶ディスプレイや高速通信アダプタは、標準装備されています。非接触型のICカードを搭載している機器もあるでしょう。そして、企業が好むと好まないに関わらず、これらの機器には、無料で利用可能なメッセンジャーやソーシャルネットワークに参加するためのアプリが既に導入されていたりもします。しかも、最大のメリットは、これらのデジタル機器を、常に携帯しているという環境だ。

 これらのリソースと環境を存分に活用して、「この企業(サービス)は、心地良いなぁ」と感じてもらえるサービスを提供するだけなのです。一足飛びに収益の柱になるようなサービスを提供できるとは限らないし、実際のところは、通信キャリアとの折衝の方が難しい場面もあると思いますが、時代は確実に動いているのです。図1をご覧いただきたいのですが、世界中のCIOが顧客経験価値にテクノロジの使い途を求めていることが分かります。日本では、新たな製品・サービスを提供することが競争優位を確立することだと考えられていますが、グローバルでは、圧倒的に顧客経験価値を高めることが、自社の競争優位を確立すると確信していると考えられているのです。

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