プレイングマネジャーで、変わる人と変わらない人の違い新時代のプレイングマネジャー育成法(2/2 ページ)

» 2013年10月16日 08時00分 公開
[上林周平(シェイク),ITmedia]
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変わる人と変わらない人の違い。変わらない4つのタイプ

 では、変わらない人とはどのような人か。育成プログラムで多数の人に接する中で感じる「変わらないタイプ」は以下の4つである。今までの自分自身はそのようなことがなかったか、振り返ってほしい。

(1)少しだけ変化するが、大きくは変わらないタイプ

 変わる気はあるが、行動が小さい人である。「とりあえず少しやってみる」ことだけが目的になってしまっていることもある。そのため、自分自身は頑張って行動し変化しているつもりでも、結果的には周りには気付いてもらえない。真面目で着実な人に多い傾向である。

(2)周りの後押しがあれば変化はするが、後押しがないと頑張りきれないタイプ

 出来ないと思い、なかなか一歩目を踏み出せない人である。一方で、上司や周りなどからの後押しがあれば、一時的に新たな行動を行うことはできる。だが、後押しがなくなると元に戻ってしまうことが多い。周りと比較し、自分自身に対して自信を持ち切れていない人に多い傾向である。

(3)「変わるつもりはない」と言いきってしまうタイプ

 「自分は結構やってきたのに、会社は認めないだけだ」と思い、だから「変わる必要はない」と言いきっている人である。不満があるということは裏を返せば「こうありたい」というものがあるはずだが、その思いを直視できず、新たな行動を起こそうとしない。過去に頑張ったが、良い結果にならなかった人に多い傾向である。

(4)「変わる!」と言っているが、実は変わるつもりがないタイプ

 変わった方が良いと口では言うが、「今までのやり方で良いよね」と心の奥では思っている人である。だから、優等生的な発言はするが、実際に行動し続けることはない。結果として、いつまでも同じような仕事の進め方を行っている。仕事ができ、過去に成功体験を持っていることが多い傾向がある。

 では、上記の4つのようにならずに「変わる」ためには、どのような点を意識すべきなのか。

プレイングマネジャーとして変わるためのポイント

 まず、大前提として現状を直視することが大事だ。今まで正しいと思ってきたやり方や自分自身に対して、「そのやり方や自分は間違っているのでは?」と問いかける。その行為は、先ほどのフェスティンガーの「認知的不協和」の不協和そのものであり、大変苦しい。特に社会人として何年も過ごし、数々の成果を出してきた人であればあるほど、今までのやり方や自分に自信があり、そのギャップを直視することが出来ない。「成功体験に復讐される」という言葉もあるが、過去の成功体験が新たな行動への一歩目を妨げることになるのだ。

 変容学習で知られるジャック・メジローも、「学びとは、生易しいものではない。激しい葛藤の上にものの見方が変わる」と唱え、「混乱を引き起こすジレンマがあり、恐れ、怒り、恥辱感の感情を伴う自己吟味が始まり、想定や前提(assumption)の問い直しがはじまる」と言っている。葛藤を乗り越え、一歩踏みだせるかどうかが大事なのである。

 では、一歩踏み出すために、何をすればよいか。それは2つある。

 ひとつは、自分自身がどうありたいかを具体化することだ。仕事が忙しいプレイングマネジャーは直近の業務対応に目が行き、自分自身のありたい姿がおろそかになりがちである。しかし、今まで培ってきたやり方を変えるということは、想定以上に大きなパワーがいる。だからこそ、そのエンジンを作るためにも自分自身のありたい姿を描く。しかもそれは、小さくまとまったものではなく、「こうありたい」という高い基準から設定し、心から同意することが大事だ。

 もうひとつは、周りにフォロワーを作ることだ。人間一人ではなかなか変容できない。不協和が起こった時に、それを埋めるための行動を起こすか、言い訳をする、見ないふりをするという対応をするかに分かれる。その中で、前者の行動を起こすには、周りからのサポートが不可欠である。

 以前、数十人の部下を抱えるマネジャーのBさんが、この不協和を感じた時、部下全員を集め、「今までの自分のやり方で皆に迷惑をかけていたこともあると気付いた。これからは今までとは違う○○のようなかかわり方で部署を推進したい。」と心から素直に一生懸命語った。すると聞いていたメンバーは温かい笑顔で答え、応援をし始めた。このような場を作り、周りからのサポートがあれば、行動が続いていくのは必然だ。

 不協和に対して素直に受け止め、その事実とこれからのありたい姿について本音で話す。この行動が出来ている人は全般的に大きく行動が変わり、一方でどこか取り繕う人は、思っているほどの変容が見られず、その後も追われた仕事をしている。

 自分自身や自部署の未来にとってどちらが良いか。プレイングマネジャーが小さな変化でも起こし続けると、その部署には大きな影響を及ぼすのも事実である。これからに向かって一歩踏み出してもらいたい。

 プレイングマネジャーは忙しい。多くの企業のマネジャーと会うたびに感じることである。その忙しい中でも、イキイキと働き、良いチームを作っている人がいるのも事実である。ここまで全6回にわたり、事例を中心に紹介した。今後に向けて何らかのきっかけになれば幸いである。

著者プロフィール

上林 周平

株式会社シェイク 取締役

大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。

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