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» 2013年11月20日 13時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:グローバル革命が製造業を革新――高度な経営のかじ取りが求められる今後の製造業 (1/2)

今日のグローバル化は新興国革命、金融革命、デジタル革命の3つが複合的に関与する強大なうねりとなっている。日本企業が生き残るためにはなにをすべきか。

[山下竜大,ITmedia]

 「グローバリゼーション3.0、これからが製造変革の正念場」をテーマに、10月18日に開催された「第28回 ITmedia エグゼクティブセミナー」。基調講演には、早稲田大学ビジネススクール教授、元マッキンゼー・アンド・カンパニー ディレクター・日本支社長、元カーライル日本共同代表である平野正雄氏が登壇し、「製造業の未来…グローバル革命が製造業を革新する」と題した講演を行った。

1990年代から加速した経済のグローバル化

 世界経済の変貌およびグローバル化は、1989年、1990年ごろまでさかのぼる。1989年の東西冷戦構造の崩壊も1つの要因である。平野氏は、「経済のグローバル化を数字で紹介すると、例えば世界の国内総生産(GDP)に占める貿易額の割合が、1990年代には約40%だったが、現在は約60%に拡大している。実体経済のグローバル化、連結化が一気に拡大していることを示している」と語る。

hirano3.jpg 早稲田大学ビジネススクールの平野正雄教授

 よりインパクトが大きかったのは、金融経済の拡大および肥大化で、GDPにおける資本流通額を見ると、1990年代まで約6%の取引量だったが、現在では15%に拡大している。平野氏は、「現在のグローバル化の特長の一つは、金融経済の肥大化と、その実体経済に対する強大な影響力がある。グローバル化とは、単に新興国が台頭し、経済圏が拡大したことに止まらない」と話す。

 1990年代前後に、今日のグローバル化を呼び起こす大きな変革があった。この変革には、「政治的」「制度的」「技術的」の3つの要因がある。政治的要因としては、1978年のトウ小平による中国の改革や1989年の東西冷戦終結などにより、世界経済の実質的な連結が深まったことが挙げられる。また制度的要因としては、1971年のブレトンウッズ体制の終了により、自由な金融取引ができるようになったことなどがある。

 平野氏は、「1990年のユーロの誕生、1995年のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)からWTO(世界貿易機関)への移行など、金融市場や貿易の仕組みにおいて、世界共通のプラットフォームが構成されたのもこの時期である」と話す。さらに技術的要因においては、1985年前後のデジタル革命のスタートや1995年ごろのインターネットの一般への普及などを忘れてはならない。

3つの革命が複合的に関与する「グローバル革命」

 今日の世界経済を語る上で大きなポイントとなるのは、1987年以降の金融工学の発展である。中でも「証券化」が重要な技術といえる。これまで貸出債券は、貸出した金融機関に止まっていた。しかし証券化という技術の登場により、企業のバランスシート上にあった債券を金融商品として市場に流通できるようになった。同時にこれは、個別企業や金融機関に閉じていたリスクがグローバルに拡散することになったということでもある。

 平野氏は、「今日のグローバル化とは、新興国の台頭による経済圏の拡大(新興国革命)に加えて、資本取引の極大化(金融革命)と情報処理コストの極小化(デジタル革命)が合わさった、非常に大きな経済、社会構造の変革と捉えるべきであり、そのインパクトの大きさから言って "グローバル革命"とさえ言えるものだ」と話す。

 「重要なのは、グローバル革命がいかに企業経営の変革を促しているしかを認識することである。そして問題は、日本企業の多くはこの革新に乗り遅れていることだ。例えば日本企業は、個人所得の水準は高くはないが、顧客数、市場規模は圧倒的に大きい新興国市場の性格を読み間違えていた節がある。つまり、新興国を先進国のキャッチアップマーケットと捉えて、市場特性にあった商品開発に出遅れたのである。」(平野氏)

 新興国とビジネスをしていくためには、日本や先進国向きの商品をそのまま新興国に持って行くのではなく、機能性やコストなどを現地顧客の目線で開発、生産した商品を提供することが重要。また新興国での競争は、欧米との競争だけでなく、現地企業にも対抗する必要があり、ますます複雑化している。さらにグローバル化に対応して急速に拡大する戦線に対応する組織、人材、物流の整備も不可欠となる。

 金融革命のインパクトには、M&Aを活用した事業構造変革の推進が含まれる。そのための能力、体制整備は大きな課題である。また、株主価値経営の導入や、不安定な資本、為替市場の動向に対応できるコスト構造や財政基盤の確立も求められる。デジタル革命では、ネットやデジタル技術を活用したビジネスモデルの革新、ニュービジネスの創造が重要となっている。一部技術のコモディティ化や劇的なローコスト化にいかに取り組んでいくのか、飛躍的に情報力が高まった消費者の行動へいかに対応するのか、も重要な課題である。

1995年以降、日本企業のプレゼンスは後退

 「グローバル市場における日本企業のプレゼンスは、残念ながら1995年以降、大きく後退している。日本企業の後退を示す指標はさまざまある。例えば世界のトップ500企業に占める日本企業の割合は、1995年までは35%を占めていたが、2009年には13%に減っている」(平野氏)

 また2000年〜2010年で、世界のトップ700社が、どのような要因により売上を伸ばしているかという調査は興味深い。この間、トップ700社は年平均10%の高成長を実現してきたが、その内訳はシェアの拡大による成長の寄与分0.4%、新興国市場の開拓や新市場の創造の寄与分が最大の6.6%、M&Aによる成長寄与分が3.1%となっており、新興市場の開拓やイノベーション、そしてM&Aにより成長してきたことが分かる。一方、既存市場でのシェア拡大はほとんど成長に寄与していないことが明らかとなった。

 この傾向を各国のハイテク企業に当てはめてみると、企業ごとにさまざまな成長モデルが存在するが、海外企業が新興市場の開拓、イノベーションによる新市場創造、あるいはM&Aにより高い成長を遂げているのに対し、日本企業は流れに取り残されている観がある。

 「日本企業がグローバル革命への対応に出遅れた理由は、認識のギャップ、戦略の誤り、構造問題の大きく3つが挙げられる。日本企業は新興国が日本の発展モデルを後追いすると考えていたが、新興国は独自のビジネスモデルで成長したことが認識のギャップである」(平野氏)

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