グローバル時代のビジネスリーダーに「アジアで働く」経験がなぜ必要か?ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

アジアなどの新興国でのビジネスのスピード環境は目まぐるしく変わり、過去の経験則での判断が通用しなくなっている。これから求められるのは0から1を創る「イノベーション力」ではないだろうか。

» 2013年12月12日 08時00分 公開
[九門 崇,ITmedia]
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 毎日、新聞や雑誌を見ると、生産拠点や拡大するマーケットとして「アジア」の記事を目にしない日はない。実際に、アジアへの出張や駐在はもちろんのこと、日本にいてもアジアの人と仕事をする機会も多くなっている。つまり、「アジアで働く」または「アジアと働く」ことは今や日常となっているのだ。

アジアで起こる「想定外」で自分を鍛える

アジアで働く――自分を活かす・キャリアが広がる

 では、ビジネスリーダーにとって「アジアで働く」ことがなぜ求められているのか? 「アジアはビジネスチャンスが多い」「アジアでは日本人の感性が生かせる」これらはアジアが注目される理由としてよく挙げられる。実際に、10年前と比べてアジアに進出する日系企業数は6割増となっている。アジアでは日本製品のみならず、大戸屋やココイチなど日本の飲食店がおしゃれな店として、若いカップルがデートをするような場所となっている。

 しかし、それ以上に私がアジアを薦める理由は、「アジアでの経験」が今後のグローバル時代を生きるビジネスリーダーに最も必要だと考えるからだ。欧米など先進国からアジアの国のような新興国に成長市場がシフトし、ビジネスのスピードや環境が目まぐるしく変化する中では、過去の経験則に基づいた判断は通用しなくなってきている。それよりも、先が見えない中でいかにビジネスの種を発掘して、新たな発想でビジネスを創っていくかが大事なのだ。これは0から1を創る「イノベーション力」とも言える。

 アジアは、日本や欧米などある程度制度やシステムが整備された先進国と異なり、成長途上で「想定外な」出来事が多いため「イノベーション力」が鍛えられるのだ。私が実際経験しただけでも、中国で中国企業の人と約束したのに本人が現れない、インドで地方政府の人に会った時には、こちらの用件と全く異なる地元PRの話を延々されるなど数え切れない程だ。ビジネスでも新興国で生まれた製品が先進国に展開される「リバース・イノベーション」が話題になっている。

「会社の看板を外して働く」ことで信頼される

 それでは、こうしたアジアで活躍するためにはどういうマインドやスキルが必要となるのか? 実際には、いくつかのマインドやスキルが必要となるが、ここでは特に大事で実践的なものを伝えたい。

 まずは、「会社の看板を外して働く」というマインドだ。そのためには、自分がどうすればアジアの人々の人件費を超える価値を持て、自分の「売り」は何かを常に考えることだ。私がアジアで働く上で感じてきたことは「企業同士の仕事であっても、個人の信頼関係が果たす役割が非常に大きい」ということだ。これは、日本における「あの人が担当者なら安心」といった感覚をはるかに超えている。個人的な信頼関係がなければその仕事はよいものにはならないし、必要な情報すら得られないのだ。

アジアの人件費を超える価値を持てるか?

 「グローバル化で先進国の仕事がなくなる」と言われるが、日本で実際にそれを感じる機会が増えている。日本からシンガポールに移って働く知人のITコンサルタントも「日本にいるとIT関連の仕事がどんどんなくなっていくのを感じる」と語る。彼は「プログラミングなど簡単な工程は中国、少しレベルが高いものはインドで行う。日本には設計の提案やプロジェクトの管理など付加価値の高いものしか残らない」と続ける。

 最近は、グローバルに人事制度を統一しようとする企業も増えている。もしあなたの会社で、3年後グローバル人事制度が全社で導入されたら、何が変わるだろうか? 日本本社にいても外国人の上司や部下が増えるだろう。また、マネジメント層に近づけば近づくほど、海外の優秀なマネジャーとのポスト競争が待っている。

 アジア各国の中間管理職(課長級)の月額基本給を比較したジェトロの調査(2013年)によると、中国人やインド人は日本人の4分の1から5分の1、ベトナム(ホーチミン)になると実に8分の1だ。誰でもできる仕事は確実に人件費の低い国に流れていく。今のあなたの仕事を中国、ベトナム、インド人などが自国でできれば、あなたの仕事はなくなるかもしれない。日本人である自分がこうした賃金で働けるインド人、中国人、ベトナム人などと競争する立場にいるという事実を認識しておく必要がある。

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