ビッグデータ分析がビジネスの勝敗を分ける──カギはデータサイエンティストの育成ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

アナリティクスとは多様化するデータをいかに取り扱うか。従来型の構造化された企業データはもちろん、ソーシャルメディアの情報や各種センサー情報、位置や地図の情報、画像、動画など急増する非構造化データを、いかに有効活用するかが重要だ。

» 2013年12月18日 13時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 「洞察でニッポンをもっと元気に ──「個」客の理解で差をつけろ」をテーマに、11月8日に開催された「第25回 ITmedia エグゼクティブフォーラム」。基調講演には、アクセンチュア 経営コンサルティング本部 アクセンチュアアナリティクス 日本統括マネジング・ディレクターの工藤卓哉氏が登場し、「本当は理解されていない意思決定のための科学」と題して講演した。

多様化するデータをいかに取り扱うか

 アクセンチュアのアナリティクスグループは、米国直轄のグローバル部門というユニークな位置づけにある。世界各国に展開されている23カ所のイノベーションセンターを拠点に、相互排他的にサービスを構築することで、世界のリソースを重複なく最適化し、効率的な経営体制を実現している。その中の東京イノベーションセンターを統括するのが工藤氏であり、研究開発テーマのひとつがアナリティクスである。

アクセンチュア 経営コンサルティング本部 アクセンチュアアナリティクス 日本統括マネジング・ディレクターの工藤卓哉氏

 アナリティクスを一言でいえば、多様化するデータをいかに取り扱うかということである。従来型の構造化された企業データはもちろん、ソーシャルメディアの情報や各種センサー情報、位置や地図の情報、画像、動画など急増する非構造化データを、いかに有効活用するかがこれからのビジネスの勝敗を分けるといっても過言ではない。そこで注目されているのが「ビッグデータ分析」である。

 現在、ビッグデータは、3V(Volume:量、Variety:種類、Velocity:頻度)をはじめ、さまざまな定義がなされている。その背景のひとつとして、ストレージが非常に低価格になっていることが挙げられる。また以前は、大量のデータを即時処理する仕組みを実現することが難しかったが、デバイスの高速化によりリアルタイムのデータ処置を容易に実現することが可能になっている。

 「ビッグデータの処理においては、並列分散処理が有効になるが、これは人工知能の研究から生まれた仕組みである。人間の脳は、約1200億のニューロンが並列処理をしており、情報の伝達速度は時速350〜400キロといわれている。1つのニューロンが死んでしまっても、処理が停止しない頑強性も備えている。こうした仕組みに基づいて、並列分散処理やMPP、Hadoopなどが開発されている」(工藤氏)

 一方、ビッグデータを取り扱うときの注意点について工藤氏は、次のように語る。「データ活用の話をするときに、個人情報保護について聞かれることが多くなってきた。1年前にはなかったトレンドだが、大量の位置情報データなどを利用する場合、個人情報保護が問題になりつつある。ビッグデータの活用において、個人情報保護法の問題をクリアしておくことが必要になる」

 個人情報を構造化すると、取得、保管管理、第三者提供という3つのプロセスになる。この3つのプロセスに関する個人情報保護法を慎重に検討しなければならない。工藤氏は、「特に問題となるのは、データを取得する場合に利用範囲の確認をとっていないことである。第三者に提供した後に、"その使い方は想定していないのでやめてほしい"と言われたときに、そのデータを除外する仕組みが必要になる」と話している。

データサイエンティストの育成が重要

 世界トップ3のデータサイエンティストの1人といわれているJeffrey Hammerbacher氏は、"インフラに投資する場合、まず必要なのはデータであり、次が問い合わせ。まず蓄積して、次に構造化である"と語っている。工藤氏は、「時と場合にもよるが、データの利用方法は刻々と変化するので、構造化を考えすぎて機会を逃すのは本末転倒。データを蓄積しておいて構造化や問い合わせを考えることに関して異論はない」と言う。

 「日本では、大学におけるデータサイエンスの教育が遅れている。そこで慶應大学と実験的にアナリティクスの授業に取り組んでいる。授業では、探索的データ解析、多変量解析、機械学習の大きく3つの解析領域を取り上げている。この領域では、統計学だけでなく、並列分散処理やストリーミング処理など、バックエンドを支えるICT基盤やストレージなどのコンピューティング環境も含まれている」(工藤氏)。

 こうした取り組みの一環として、現在アクセンチュアが取り組んでいるのがアナリティクス分野における活用事例の充実である。その中から「Google Glassによる臨床医療(教師なし機械学習)」「導線分析(教師なし機械学習)」「薬剤の相互作用(教師つき機械学習)」という、3つの活用事例が紹介された。

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