連載
» 2014年01月08日 08時00分 UPDATE

社員が自律的に成長し続ける組織の創り方:自分で成長できる自律型人材を増やす方法 (1/2)

若手社員の「ストレッチ」が重要とただ挑戦させていないだろうか。挑戦する意味を伝え、自信を湧かせ「大丈夫だ」という気持ちにつなげることを忘れてはいけない。

[上林周平(シェイク),ITmedia]

 「職場での育成」に関して4種類の支援から見た調査結果をもとに、「社員が自律的に成長し続ける組織の創り方」と題した連載。今回は、4種類の支援の中の挑戦をうながす「ストレッチ支援」、内省をうながす「キヅキ支援」を中心に、自ら成長できる若手社員が育つために何が必要かという点についてまとめていく。

若手社員が反応する2つの言葉

 私が育成プログラムにおいて、次の2つの言葉を発すると、若手社員は想定以上にメモを取る。

 1つ目は「成長の踊り場」という言葉だ。企業によるが特に3年〜7年目くらいの人は、「この時期は成長が鈍化し、成長の踊り場になっている人が多い」というような話をすると、「自分もそうだ」と言わんばかりにメモを取る。入社して直ぐは覚えることが多く、日々さまざまなことができるようになっていく。一方で、その段階を過ぎると、仕事をこなすようになってくる。

 2012年に弊社シェイクで若手社員(1年目〜9年目)622名に調査した結果では、「職場で働く自分を振り返ると"これぐらいでいいかな"という慣れのような気持ちがある」という問いに対して、「そう思わない」「あまりそう思わない」と回答した人は20.1%。約8割の人は"これぐらいでいいかな"という慣れのような気持ちを持って仕事をしているのが実情だ。

 2つ目は、「学習性無力感」という言葉だ。米心理学者のセリグマンが提唱した「努力を重ねても望む結果が得られない経験や状況が続いた結果、何をしても無意味だと思うようになり、現状を脱する努力を行わなくなること」という考え方だ。以前は、職場で改善提案などをしていたがなかなか受け止めてもらえず、その結果、自分から提案をしなくなり「どうせ…」という言葉を発するようになる現象である。この話をした時も、うなずく人が多く「自分もそうだ」と反応する。この反応は、入社半年後の社員から中堅社員まで幅広く起こるものであり、どこか自分から行動することを諦めてしまっているのだ。

 上記2つの言葉の反応に見られる通り、若手社員は成長が止まっていると感じたり、慣れから仕事をこなし諦めていることを自分自身で気付いているのだ。しかし、このような状態で、成長スピードを加速させていこうとしても実際は難しい。

慣れた頃に更なる成長を促すために

 「経験学習入門」の著者の松尾睦氏は、業績をあげているマネジャーへのインタビューをもとに、経験から学ぶ力のひとつを、「ストレッチ」と定義している。ストレッチとは「問題意識を持って高い目標や新たな課題に取り組む姿勢」のことであり、自分の想定よりも高い基準の仕事への挑戦が、経験から学び成長につながるということなのだ。「成長の踊り場」という言葉も、自らの想定の範囲内でできる仕事をやっているから踊り場であり、新たな経験をする、新たな役割で仕事をする、いつもよりも高い基準で仕事をすることを通じて、ストレッチは実現される。

 また、神戸大学の金井壽宏氏は、経営者へのインタビューを通じて、個人が大きく成長を遂げた経験を「一皮むけた経験」と定義している。そこでは「はじめて部下を持った経験」「異動にともなう不慣れな仕事」「文化の違う海外に勤務した経験」というようなものを挙げている。どれも今までの自分の想定よりも高い基準の経験であり、その経験をすることが一皮むけるきっかけになり、成長につながるのである。

 このようなストレッチな経験が、慣れが出てくる時期に成長を促す上では欠かせないのだ。

ただストレッチな経験を任せれば良いという訳ではない

 経験豊富なマネジャーではなく若手の社員に対して、ただストレッチを求めても、うまくいくとは限らない。弊社では、100部署以上の職場実態を調査したが、その中で「これ以上、仕事が増えたり、仕事のレベルがあがると"今の自分では無理"と感じるか?」という質問に半数近くがYesと答えている。グローバル化を含めた変化の激しさやITによる効率化に伴い、少ない社員数で多くの業務を行う方向で進んでいる企業は多い。どこの会社にいっても「いっぱいいっぱいだ」と言っている社員が多い。そのような現状の中で、「ストレッチ」だけを要求するのは酷なのである。

 その際に何が必要なのか。先ほどの100部署において、ほぼ同じような仕事をしている部署を見たときに、一方の部署は前述の"今の自分では無理"の値が高く出ていて、一方は低いことがよくある。その差を見ると、値の低い部署はただ挑戦させているのではなく、挑戦する意味を伝え、若手社員にできる自信を湧かせたりしている。その後押しが、若手社員の「大丈夫だ」という気持ちにつながっている。この後押しこそが、若手社員の「ストレッチ」において、最も重要なのである。

 では、実際の職場ではどのくらい支援を実践しているのか。先ほどの100部署以上の職場で、挑戦的な支援を指す8つの「ストレッチ支援」がどの程度行われているかの実態を見てもらいたい。

1位:失敗から学ばせる 72.4

2位:新たな基準を与える 64.3

3位:新たな仕事と役割を与える 59.9

4位:期待ステージを伝える 58.5

5位:失敗を恐れさせない 54.1

6位:成長の魅力を伝える 53.1

7位:周囲の期待を伝える 51.8

8位:評価している能力を伝える 49.4

※スコアは質問群に対する回答(当てはまる"100 "⇔当てはまらない"0")から算出

 「失敗から学ばせる」「新たな基準を与える」「新たな仕事と役割を与える」というような任せる支援は比較的出来ているが、一方で、『あなたはこういう力があるのだから、できるよ』というような「評価している能力を伝える」「周囲の期待を伝える」「成長の魅力を伝える」というような本人の後押しをする支援に関しては、相対的に出来ていない実態があるのだ。皆さんの部署ではそのような後押しがあるのかどうか、今一度振り返ってほしい。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆