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» 2014年01月29日 08時00分 UPDATE

国際CIO学会研究大会講演会「日本産業の未来」:CIOの役割は10年前より進化──世界最先端IT立国の実現に向け責任はますます重くなる (1/2)

日本再興戦略の要となる世界最高水準の電子政府の実現に向け必要な戦略とはなにか。また電子政府推進するためには、どのような取り組みが必要なのか。産官学の有識者が徹底議論した。

[山下竜大,ITmedia]

 2013年12月11日、国際CIO学会と早稲田大学電子政府・自治体研究所は、早稲田大学国際会議場(井深ホール)において、『国際CIO学会研究大会講演会「日本産業の未来」』を開催。パネルディスカッションの第2部では、総務省情報通信国際戦略局長 阪本泰男氏、情報サービス産業協会会長 浜口友一氏(元NTTデータ社長、国際CIO学会副会長)、東京大学大学院情報学環・学際情報学府長・教授、総務省情報通信審議会部会長(元CIO学会会長)須藤修氏と、モデレータである早稲田大学教授(国際CIO学会世界会長、早稲田大学電子政府・自治体研究所所長)の小尾敏夫氏とで「世界最先端IT立国と電子政府推進の戦略」について議論が行われた。

国家IT戦略で2020年に世界最高水準のIT社会を実現

 2013年6月に、安部政権が発表した国家IT戦略「最先端国家の実現」の条項と具体的な進捗について総務省情報通信国際戦略局長の阪本泰男氏は、次のように語る。「2001年の"e-Japan戦略"をはじめ、これまでにもさまざまなIT戦略を作ってきた。一方、これまで本当に実行されてきたのかという問題意識もある」

cio2.jpg 写真右から須藤氏、浜口氏、阪本氏、小尾氏

 これまでのIT戦略は、全閣僚が出席して決めていたが、今回の国家IT戦略に関しては、閣議決定をした初めての戦略となる。これに伴い、同じく6月に内閣情報通信政策監(政府CIO)職が新設され、リコー副社長を務めた遠藤紘一氏が就任。安倍政権の「3本の矢」の3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」とも連携する。

 日本再興戦略の中でも、世界最高水準のIT社会の実現という項目があるが、さまざまな場面でICTを活用するということが明記されている。具体的には、大きく次の3つの柱がある。

(1)革新的な新産業・新サービスの創出及び全産業の成長を促進する社会

(2)健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災害に強い社会

(3)公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会

 「国家IT戦略では、この3本柱にもとづき、2020年には世界最高水準のIT社会を実現することを目指している。これまでとの違いは、政府CIO職を設けたことで、政府CIOを中心に、政策のPDCAサイクルをしっかりと回していかなければならないという意識が高まっている」(阪本氏)

 浜口氏は、国際競争力の視点から、日本のITサービス産業の実力と課題について、次のように語った。「IT産業を売上ベースで見た場合、北米が45%程度、EUが30%弱、日本は8%程度をキープしていたが、中国や東南アジアが成長してきたので、少しポイントを落としている。業種で見ると、日本は金融と製造が大きな割合を占めている。金融と製造が大きな割合を占めているのは、日本の特長でもある」

 テクノロジの面における日本の特長は、スクラッチ開発が多いことだ。また日本では、ほとんどがウォーターフォール型の請負開発である。さらに日本では、パッケージや既存ソフトの流通率が10〜20%程度であるが、米国では数十年前からパッケージの流通率は50%を超えている。

マイナンバー制の導入が「2015年問題」に?

 電子政府と電子自治体の連携はどこまで進んでいるのか。また、役所間に加えて中央省庁および地方自治体の間のワンストップサービスは積極的に推進されているのか。この疑問に対して須藤氏は、次のように語る。「2013年5月にマイナンバー制度の関連法案が可決された。これにより、2015年1月からマイナンバー制の利用が開始され、データ連携が可能な体制が確立される。現在の進捗状況は、ものすごい勢いで調達が進んでいるところ。この仕組みに関しては、今後10年間、相当量の仕事がある」

 須藤氏はまた、「懸念事項としては、電子政府と電子自治体の連携をワンストップサービスとして提供することが難しいかもしれないということだ。個人保護法の問題上、戸籍の扱いがワンストップサービスにできない可能性がある。そこで総務省に対して、クラウドサービスを採用するなどの施策を要望している」と話す。

 マイナンバー制の導入について浜口氏は、「マイナンバー制の導入に関しては、JISAでもいろいろな意見がある。まずシステム開発のための人員が足りなくなるのではという問題がある。マイナンバー制の導入以外にも、さまざまなシステム対応が必要なことから"2015年問題"と呼んでいる」と話す。

 「業界として仕事があることは喜ばしいことだが、綿密なロードマップを作成しなければ、厳しいスケジュールになる。マイナンバーに関しては、社会保障、税金、防災関連などが関わってくる。例えば、源泉徴収は企業が代行しているので、税の情報にマイナンバーを付加して税務署に送らなければならない。年金基金や健康保険組合に関しても同等である。こうしたシステム対応が無数に発生するが、現状では明確な対処方法が明らかになっていない」(浜口氏)。

 また、マイナンバーは個人情報そのものであり、法律的に厳しい罰則が設けられる。そのためマイナンバーの情報が漏えいした場合には、現在のようにテレビの前で頭を下げるだけでは済まされなくなる。しかも現状では、マイナンバーの総責任者は誰なのか、ロードマップを誰が管理しているのかなど問題は山積している。

 このような懸念に対し阪本氏は、「必要な情報の多くは、国家IT戦略の中に記述されている。現在、システム数が1500程度あるが、2018年までにこれを半減させるということが明示されている。また2021年度までに、すべての政府システムをクラウド化する。これにより、コストに関して3割削減を目指している」と言う。

 マイナンバー制の導入以外では、総務省はアベノミクスの成長戦略にどう関わっているのか。また、アベノミクスにより、IT産業はどこまで浮上することができるのだろうか。阪本氏は、次のように語る。

 「総務省の基本的な考え方は、政府の成長戦略に貢献すること。例えば、ICT成長戦略会議を作成し、8つの分野の会議により具体的な取り組みを提言している。ここで提言された内容は、国家IT戦略にも盛り込まれていく。この提言をどう実行していくかが今後のカギになる」

 ICT成長戦略会議では、横のつながりを重視しており、関係する各省庁にも参加してもらっている。阪本氏は、「今回、アベノミクスにより、日本が再生するきっかけができた。今後は、IT業界以外も巻き込んで、ICTの活用を推進していくことが重要になる」と話す。

 浜口氏も同様に、「ICT産業は、ほかの産業の効率化をサポートするのが役目である。したがって、製造業や金融業などが成長することで、新しい機会がICT産業にも生まれてくる。当然、アベノミクスの恩恵は、ICT産業にも及んでいる。新しいインフラを構築し、ほかの業界にも展開することで、新しい価値を創造していきたい」と話す。

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