メンバーが前向きに行動する職場 vs そうでない職場 その分かれ目は社員が自律的に成長し続ける組織の創り方(2/2 ページ)

» 2014年02月05日 08時00分 公開
[上林周平(シェイク),ITmedia]
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忙しい時こそ、2つの目的を明らかにする

 以前、厳しい罰則の例として、地面にひたすら穴を掘るという話を聞いたことがある。指示をされ、意味もわからず穴を掘り続ける。途中で指示が変わり、今度はひたすら穴を埋める。そして、また穴を掘る。それを繰り返していくと、自分は何のためにこれを行っているのかが分からなくなり、精神的に辛い状態になっていくという話だ。

 前向きに働く上で、目的は大事である。そして、目的も2種類ある。ひとつは、その仕事自体の目的であり、何のための仕事なのかということである。もうひとつは、成長の目的であり、自分がなぜこの仕事をやる必要があるのかということである。

 プレイヤー業務ができるマネジャーは、仕事の目的は明確にする。だからメンバーにきちんと伝えたり、すり合わせたりする。一方で、頑張るのは当然だ、自らの成長は当然だという前提を持っていることが多く、そのため成長の目的に関してあえて触れることが少ない人が多い。

 そのような中で、仕事の難易度があがり忙しくなると、メンバーにはなぜ成長しなければならないのか、なぜ頑張らなければならないのか、といった点が違和感として現れてくる。2つ目の成長の目的に対する答えが共有されやすい職場かどうか。これも、若手や中堅社員の気持ちのひとつである「これ以上は無理」を防ぐ、ひとつつの要素なのである。

メンバーは自分から支援を求めてくるか?

 こちらも先ほどと同様に「職場での育成」に関する32の支援の実施状況と「自分は周りに支援を求める行動をしている」という質問群への回答に関連性があるかどうかを見ると、以下のような結果になる。

1位:事実に基づいて褒める(キヅキ支援)

2位:評価している能力を伝える(ストレッチ支援)

3位:失敗を恐れさせない(ストレッチ支援)

4位:コンディションを気にかける(ハゲマシ支援)

5位:行動を気にかける(ハゲマシ支援)

 ただかかわるというよりも、事実に基づいて褒める。仕事を依頼するだけでなく、評価している能力も伝える。挑戦の機会を与えるだけでなく、失敗を恐れさせない。待ちの姿勢ではなく、コンディションや行動を自ら気にかける。そういったより深いコミュニケーションの職場の方が、メンバーは自ら周りに支援を求めたり、働きかけたりしているという結果なのだ。

求めるならば、自らも率先して行動する

 主体的な行動をメンバーに対してただ求めるのではなく、マネジャー自身も自ら踏み込んだ深いコミュニケーションをしているかどうかを改めて考えてほしい。支援を求めるなどの主体的な行動はメンバーからみるとハードルが高いものであり、だからこそマネジャー自らが率先して行動するということが大事だ。

 心理学には、人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くという「返報性の原理」という言葉がある。マネジャー自ら踏み込んだ深いコミュニケーションをすることで、メンバーも同レベルの行動を行いたいと思う可能性が高まるのだ。一方で、「顧客満足度向上のコンサルタントの顧客満足が低かった」という笑い話を聞いたことがあるが、出来ていない人、行動していない人に求められても、メンバーとしては何ともいえない気分になるだけなのだ。

メンバーが前向きに行動する職場とそうでない職場の違い

 仕事をしていると、特にメンバーにはいろいろ求めたくなるものである。特に、もっとこうあって欲しいという気持ちは、持ち続けることが多い。ただ、それは一方的にこうあってほしいと望んでいるだけになっていないだろうか。

メンバーに前向きに、主体的に行動することを望むならば、マネジャー自身も自ら主体的により深いコミュニケーションをする必要がある。それは、日々ストロークをすることも、成長の期待を伝えることも、深いコミュニケ―ションをすることも、自分次第でいかようにでもなる。そういったマネジャーの率先した行動が、メンバーが前向きに行動する職場に繋がっていく。改めて、自分の職場はどうなのか振り返って欲しい。

 今回は、忙しさに対して前向きになり、自ら周りに求める行動をするためには、どのような支援が必要なのかという点について記した。次回は最終回として、社員が自律的に成長し続ける組織の創り方をまとめていきたい。

著者プロフィール

上林 周平

株式会社シェイク 取締役

大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。


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