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» 2014年02月19日 08時00分 UPDATE

社員が自律的に成長し続ける組織の創り方:「育てる」から「育つ」へ (1/2)

成長とはなんだろうか。ミスなく仕事ができる、業務知識が増えることだろうか? 仕事から得られる最高の報酬は決して失われることのない「人間としての成長」である。

[上林周平(シェイク),ITmedia]

 ここまでの5回で、100部署以上の職場を対象に行ってきた「成長支援組織診断」の結果を見ながら「社員が自律的に成長し続ける組織の創り方」を具体的に考えてきた。最後にもう一度、社員が自律的に成長する職場について、全体を俯瞰したい。

改めて「成長」とは何だろうか?

 マネジャーや経営・人事の重要な仕事のひとつは「人材育成」だ。また、若手を中心に、働く人の多くが「成長したいか?」と問われれば、YESと答える。では「成長とは何か?」と問われれば、何と答えるだろうか?

 担当の仕事がミスなくできる。業務知識が増える。これも成長のひとつに違いない。しかし、ビジネスの現場で経験を積んだ人に聞くと、実際には、上記のような例を挙げる人は少ない。むしろ、多く挙げられるのは「あの辛くてしんどい場面を乗り越えた時に、自分が一回り成長した」「難しい顧客や厳しい上司のもとで、何とか食らいついて結果を出せた」「まるで山登りのように、何年か働いた後、ふと振り返った時に、見える景色が変わっていた」などということなのだ。

 当社の顧問でもある神戸大学大学院の金井教授は、これらの成長経験を「一皮むける経験」と呼び、多くの実例を分析している。また、日本総合研究所の設立に携わった田坂広志氏は、著書『仕事の報酬とは何か』の中で、仕事から得られる報酬には、おカネや肩書等もあるが、最高の報酬は、取り組む業務が変わったとしても決して失われることのない「人間としての成長」であると述べている。

 ビジネスパーソンとしての「成長」の本質は、そのような「人間としての成長」と言ってもよいのではないか。数々の困難を乗り越えてきた読者であれば、思い当たることが1つや2つではないはずだ。

「70:20:10」の法則に、どう向き合うのか?

 「70:20:10」の法則を知っているだろうか? ビジネスパーソンの成長を生み出す要因を、あるアメリカの調査機関が調べて出した法則だ。それによると、成長の70%=業務での経験、20%=師と思える人からの影響、そして10%=研修等のOff-JTによって生まれているという。

 確かに「人材輩出企業」と呼ばれるような企業、従来から日本で言えばリクルートやコンサルティング会社などは、若いうちから責任と権限を与え、社員の力を120%引き出す経験を与えている。先日の新聞にはあるベンチャー企業が、新卒社員を入社初日に子会社の社長に就けた、という記事が掲載されていた。

 70:20:10の法則を正面から受け止めるならば「どのような経験を与えるか?」が成長を大きく左右することになる。では現実として、自身の業務の中で、最も重要で困難な業務を、部下や後輩に渡せる人がどれくらいいるだろうか?部下や後輩に大きな失敗をさせて、その失敗の結果をすべて自分が引き受けるだけの責任や余裕がある人が、どれくらいいるだろうか?

「良い経験を与える」ことの難しさ

 今、多くの職場で「良い経験を与える」ことが、以前より難しくなっている。その裏には大きく4つの背景がある。

 1つ目の背景は、国内市場の飽和だ。1956〜73年度の間の日本の年平均成長率は9.1%であったが、1991〜2012年には0.9%となっている。努力すれば結果が出やすい状態から、努力をしても現状維持が精いっぱいの状態へと変化しつつある。挑戦させても大きな成果を残させることが難しくなった。

 2つ目の背景は、ビジネスモデルの変化だ。ITの発達が、仕事のスピードを速め、空間を地球規模に広げ、飛び交う情報量を増大させ、結果として仕事を複雑化させた。総務省の『情報通信白書』によると、流通する情報量は平均で毎年約27%も増加しており、わずか7年の間に5倍以上に増えている。育てる方も、育てられる方も忙しくなり、仕事も難しくなった。

 3つ目の背景は、若手社員の価値観の変化だ。平成生まれの大卒社員は「モーレツ社員」も「バブル」も知らない。逆に「ワーク・ライフ・バランス」という言葉にも親しみ、就職活動では「福利厚生」を軸に就職先を見極めていたりする。以前のような残業や休日出勤をしてでもがむしゃらに働く、ということへの抵抗感が強まっている。

 4つ目の背景は、パワハラやメンタルヘルスの浸透だ。厚生労働省によれば、パワハラの相談件数は2011年度の一年間で約4万6000件にも達し、直近10年間で7倍に増えている。過去3年間にパワハラを受けたことが「ある」と回答した従業員は4人に1人に上る。成長を願った厳しい指導のつもりが、さまざまなリスクをはらむ時代になり、踏み込んで困難な経験をさせづらくなってきた。

このような4つの背景が、現実には良い経験を与えることを難しくしている。では、われわれはどのように人の成長を生み出していけるのだろうか?

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