都市型データセンターの新たなカタチに挑むNTTデータ

NTTデータが都心の品川地区に新設したデータセンターは、従来とは異なる事業継続性を一段と高めた新たな運用体制が特徴となっている。

» 2014年07月31日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 NTTデータは7月1日、東京・品川地区に「品川データセンター」を開設した。近年に新設されるデータセンターの多くは地方や郊外が中心であるものの、アクセス性などのニーズから都市型データセンターのニーズは依然として高い。品川データセンターは立地の良さに加えて、事業継続性を一段と高めた新たな運用体制を特徴としている。

新たな東京の玄関口に

 2011年の東日本大震災以降に新設されたデータセンターの多くは、災害の危険性が低い郊外やバックアップのために地方に立地している。ただ、ユーザー側には万一の際にすぐに駆けつけることのできる都市部のデータセンターを利用したいというニーズが根強くある。特に基幹システムなどを運用するデータデータセンターではその意向が強い。

 品川地区は都心部でも将来性が極めて期待される立地の1つだ。東京や新宿などの主要駅や2020年の東京五輪の玄関口となる羽田空港から30分以内でアクセスでき、駅周辺では元々列車の車庫であった広大なスペースを再開発して国際的なビジネス都市に生まれ変わる計画が進められている。品川駅は2027年開業予定の「中央新幹線(リニア)」の始発駅でもある。

品川DC NTTデータ「品川データセンター」の正面受付。当初は500ラック規模でスタートした

 品川データセンターは品川駅から徒歩数分の場所にあり、周辺はNTTグループ各社のオフィスが集積する通信インフラ上の重要拠点。万一の災害時にも復旧が優先される立地である。建物はNTT仕様の大規模地震に強い耐震構造を採用する。1階入口の床面の高さは東京湾の水防対策レベル(東京湾平均海面より4.28メートルの高さ)をクリアしており、津波や高潮、内水氾濫などの問題はないという。

 電源設備はループ方式による特別高圧受電(2系統・6万6000ボルト)を採用する。停電に備えたUPS(無停止電源装置)は停電後20分間の電力保持が可能な「N+2並列冗長化方式」で、ガスタービン非常用発電機は2015年度には72時間(3日間)の連続運転を可能にする計画だ。水冷空調機も「N+1」構成となっている。

 また、データセンターの“生命線”ともいえる通信回線は、地下25メートルに敷設されたNTTの主要局舎間をつなぐ通信用地下トンネル「とう道」と直結している。一般的なデータセンターは、外部からの通信回線を電柱や鉄塔(架空)や地面から浅い部分に敷設された埋設管などから引き込むが、地震の大規模な揺れや液状化現状が発生した際に通信ケーブルが切断される危険性がわずかながらある。しかし、地下深くにある「とう道」はこれまでの地震や液状化によって被害を受けたことがほぼ無いという。

インフラの運用チームが集結

 今回の品川データセンター開設に併せて、NTTデータは「ITアウトソーシング・オペレーションセンター」という新しい運用体制を構築した。ITアウトソーシング・オペレーションセンターではITインフラの運用に不可欠なネットワークやデータセンター、クラウドサービス、ファシリティ、セキュリティに関わるオペレーターとエンジニアが1つのフロアに集結し、24時間体制で業務にあたる。

品川DC ITアウトソーシング・オペレーションセンターの外観。最大66席あり、各領域を担当するオペレーターとエンジニアが24時間常駐する

 近年は、ユーザー企業において抑制傾向にあるIT予算の多くを占める運用・保守コストの割合を下げ、戦略的投資への比重を高めたいというニーズが強い。そのため、アプリケーションやITインフラなどの運用をさまざまなベンダーに委託する「ITアウトソーシング」化の動きが加速している。

 ただ、運用をシステムごとに異なるベンダーへ委託してしまうと、ユーザー企業の管理負荷が増してしまう。また、従来のデータセンターの運用は上述した様々な領域に分かれており、例えば、ネットワークの運用は「ネットワークオペレーションセンター(NOC)」、セキュリティ対策の運用は「セキュリティオペレーションセンター(SOC)」というように、人員面でも施設面でも物理的に離れているケースが一般的だ。

こうした状況で、クラウドコンピューティングのような複雑なシステムの普及が進むと、問題発生時における責任範囲や対応などの切り分けが難しくなる。対応部門の所在や人員が物理的に離れていると、解決に要する時間は長期化してしまい、運用品質の向上にも限界を伴う。

 NTTデータによれば、ITアウトソーシング・オペレーションセンターはこうしたアウトソーシングやデータセンターの運用に伴う課題の解決を目指したものだという。各領域の担当者が現場でフェース・トゥー・フェースによるコミュニケーションを通じて連携しながら業務に取り組める環境にすることで、オペレーターだけでは対応が難しいような技術的な課題にも、その場でエンジニアを交えた対応ができる。特にセキュリティ対策ではグループ企業のNTTデータ先端技術のセキュリティ専任チームが常駐し、ユーザー企業の重要なシステムを狙う不正アクセスといったサイバー攻撃などのリスクに、リアルタイムに対応する。

品川DC ITアウトソーシング・オペレーションセンター内では各領域の担当者がそれぞれのモニターを確認しながら共同で問題解決などに対応する

 同社ではITアウトソーシング・オペレーションセンターをデータセンターサービスの運用集約拠点に位置付け、まず国内主要データセンターの運用を品川センターで一元的に行えるようにしている。将来は海外拠点の運用も集約していく予定だという。

 現在、品川データセンターは同社のクラウドサービスの中核施設として、主にプライベートクラウドやホスティング、コロケーション、ハウジングなどのサービスを提供する。今後はITインフラの運用管理に課題を抱える大手企業を中心に、プライベートクラウドITアウトソーシングのサービス拡大を図っていくとしている。

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