連載
» 2014年09月22日 08時00分 UPDATE

飛躍:中国医薬品市場の鍵を握るマーケットアクセス (1/3)

中国の医薬品市場は、規模だけではなく収益性の面でも優れている。この市場での勝ち残りは、グローバルで戦う製薬メーカーにとっては必須命題だ。そのためにはなにをすべきか。

[諏訪 雄栄、閭 琳(ローランド・ベルガー),ITmedia]

1、世界第二位の医薬品市場へ

 近年、中国の医療品市場は年率20%以上のペースで急成長している。市場規模は、2002年には700 億米ドル(世界8位)だったが、2012年に4, 530 億米ドル(世界3位)に達した。仮に、中国の医薬品市場がGDP成長率と同程度の成長を続けたとしても、2020年には日本を抜いて世界第二位の医薬品市場となることは確実だ。実際には、一人当たりGDPが増えると一人当たり医療費支出も増えるので、GDP成長率以上のペースで拡大し、日本をはるかに上回る巨大市場になるだろう。(図A:参照)従来、製薬会社は米国、日本、欧州を注力市場とし、日米欧の患者や医療環境に適した製品開発、販売を行ってきたが、世界市場で生き残るには中国はもはや無視できない市場になっている。

asyuyoukoku.jpg 主要国の医療品市場規模推移[十億米ドル]

 中国の医薬品市場が急成長している大きな要因は、「所得向上による健康に対する意識の高まり」と「国民健康保険制度の普及」の二つである。

 1978年の改革開放政策以来、国民の生活水準は急速に向上し、それに伴う形で国民の健康意識も高まってきた。一人当たり可処分所得の成長率で見ると、都市部(2013年26,955元)と農村部(2013年8,896元) との地域格差こそ大きいものの、2003年からの10年間でそれぞれ約3 倍に成長している。(図B:参照)特に富裕層は、高品質な医療を求めて健康診断や治療を目的に海外にまで出かけているほどである。

btoshibu.jpg 都市部・農村部一人当たり可処分所得推移[元]

 医療インフラの整備も進んでいる。例えば、健診センターは、2005年の2.7万社から2012年には4万社へと増加している。また、2000年から政府が本腰を入れて普及政策を実施してきた国民健康保険は、2011年には全人口の95%が加入するに至っている。さらなる所得向上と医療インフラの整備が見込めることが、今後も中国医薬品市場の成長の原動力だ。

 中国の医薬品市場は、規模だけではなく収益性の面でも優れている。例えば、中国における抗がん剤市場の粗利率は45%に達しており、日本の16%、欧州平均の25%、米国の30%と、他国に比べても「儲かる」市場である。この背景の一には、抗がん剤の多くが外資系メーカーの開発によるものであり、中国国内展開にあたり薬価交渉を有利に進められたことが挙げられる。抗がん剤のように、中国国内では生産することのできない医薬品であればその傾向は特に顕著だ。

 市場規模・成長性・収益性のいずれも世界有数の魅力を誇る中国に対し、外資系製薬メーカーは積極的に投資を拡大してきた。過去5年間(2007〜2012年)において、例えばRocheは年率28%、Pfizer は年率23%、AstraZeneca は年率13%で中国への投資を拡大しており、いまや最重点市場の1 つとして位置づけられている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆