デジタルを経営層に意識してもらうこと、良いバトンを次世代に渡すことがCIOの役目「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(1/2 ページ)

「エネルギー・資源・素材のみらい(X)を。」という理念に基づき、2010年に設立されたJXホールディングス。JXグループの事業を支えるIT基盤のあり方を、いかに経営層に意識させ、次世代に引き継ぐか。CIOの戦いは続く。

» 2015年01月14日 08時00分 公開
[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]

 1979年3月に早稲田大学理工学部応用化学科を卒業し、4月より当時の日本石油(現在のJX日鉱日石エネルギー)に入社。工業用機械や大型船のエンジンなどに利用される潤滑油の開発および販売の担当として、2度の米国駐在や国内自動車会社向けの販売担当などを歴任し、現場へのこだわりを追求する内田悟氏。

 2013年4月にJXホールディングスの執行役員に就任したほか、2014年4月よりJX日鉱日石アイティソリューションの代表取締役社長を兼務している内田氏に、資源・素材業界における経験やITの世界に移った背景、ビジネスにおける取り組みなどについて話を聞いた。

米国での経験がいまの原動力

JXホールディングス 執行役員 企画2部担当、JX日鉱日石アイティソリューション 代表取締役社長 内田 悟氏

――まずは、資源・素材会社でITに関わることになった背景をうかがいたい。

 入社以来、管理部門に配属されたことはなく、常に開発・販売の最先端にいた。ITに関わることになったのは、JX日鉱日石エネルギーの米国法人の社長に就任した2011年で、現地のIT環境の整備に苦しんだのが最初だった。当時は少数精鋭の組織で、ITの専任がいなかったこともあり、テレビ会議システムひとつ導入するだけでも非常に苦労した。

――2014年よりJX日鉱日石アイティソリューションの社長に就任したが、このときITがクローズアップされた背景には何があったのか。

 JXグループは、エネルギー事業、石油・天然ガス開発事業、金属事業の3つを事業の柱としている。例えばエネルギー事業は、原油を輸入して精製し、製品化して、販売する。主要な販売先はガソリンスタンドだが、製油所での石油精製から配送、販売までのガソリンスタンド向けシステムの統合が課題だった。

 ガソリンスタンドは全国でピーク時の半分程度の数になっているがJXだけでも1万カ所程度あり、システム統合により、旧会社のカードの種類に依存しない決済を可能にしなければならなかった。ITに関しては、組織の統合より実務の統合が優先だった。2013年にシステム統合が一段落したことから、2014年よりIT組織の実質的統合にテーマが移ったということ。

――若いころに自分の見本になる先輩や上司はいたのか。また海外での経験は、いまの仕事に影響しているのか。

 以前より、事件は会議室で起きているという話が大嫌いである。事件は現場で起きているわけで、現場がどれくらい困っているのかを理解できなければ、組織を統括する仕事はできないということを学んだ。社長になって半年が過ぎたが、いまでも大事にしているのは現場で何が起きているかを迅速に把握することだ。

 もの作りが好きだったので、若いころは人が作ったものを転売して儲ける総合商社の仕事に尊敬の念は抱けなかった。しかし米国に駐在して、商社マンと知り合いになり、新しいものを見つけ出し、商品にする知恵と実行力、スケールとバイタリティに大いに刺激を受けた。

サラリーマンでなく自分で道を切り開く人に

――キャリアの中で、大切にしていること、若者に伝えたいことは。

 1986年に日本で開発した商品を海外で販売するという機会を得た。会社としては初めての仕事だったので、自分たちで仕事の仕組みから作ることができたのは良い経験だった。いまで言えば、業務改革や意識改革を自ら背負い、自分自身で結果を出す仕事を経験させてもらえた。

 その経験から言えば、いまの若い人には、サラリーマンになるのではなく、自分で道を切り開いていく人になってほしい。せっかく優秀な人が多いのに、与えられた仕事をこなすだけで満足している人が多いのは残念なこと。自分が変えていく、自分が創っていく、前歴を壊す仕事をしてほしい。

――部下に対しては、あまり細かな指示を出さず、結果を待つタイプなのか。

 待つというより、「何かあれば言ってこい」と言っている。それでも言ってこないから頭にくる(笑い)。「どうなっている?」と聞くと、「言われたとおりにやっています!」と答える。言われたとおりにやるのは優秀な人がやる仕事ではない。

――言われたことだけやるのは、楽だし、失敗しても怒られない。特にシステムの人間は、まじめな傾向にある気がするが。

 明らかにそうだ。工数が増えたり、減ったりすると、コストも変化するので面倒、言われたとおりにやるのがいいと思っている。間違っていないかもしれないが、自分自身が行動することで会社を大きく変えることができるチャンスかもしれないと考えてほしい。

 きちんと仕事をする代わりに、言いたいことをいえる会社にしたい。意識改革をしたいが、なかなか難しいのが実情だ。ほかの会社の経営者と話をしても同じことを言っていたので、うちの会社だけの悩みではないのかもしれない。

――何か手は打っているのか。

 意識改革の一環として、これまでに16回、部下と会食をした。これにより、社長の思い、部下の思いをぶつけ合えればいいと思った。会社を変えていこう、雰囲気を変えていこうという思いを自ら発信できる会社にしたいが、まだ設立して半年なので、なかなか浸透していないが、言うべきことは言わなければならないと思っている。

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